変わっちゃった

鐸木

第1話

友人が口紅を塗っていた。

公園で花を見に行こうと私が誘って、友人は快くお誘いを承諾してくれた。学校の向かい側の丘の上にある公園では、今桜が満開で校舎の窓からも見えるくらい見事だった。いつもと同じ様に、何気なく、飾りっ気のない約束。迎えた当日、私は驚いた。主張の少ないキャラクターが飾られた白いTシャツに、質素なジーパンをいつも着ていた友人が、花柄のワンピースを来ていた。ぶっきらぼうな視線でスマホを眺め、待ち合わせ場所で立っている。ゆっくりと友人の方へ歩いていく。すぐに友人は私に気づいた様で、小さく手を振った。私は小走りで友人の元へ行った。すると、上から下まで吟味する様に私の服を見て、鼻を鳴らした。友人の顔をちら、と覗くと薄い口紅を塗っている事がわかった。

「……」

何故か分からないけれど、ただ寂寥感が心に残った。錆びた遊具をくぐり抜け、満開の桜を見ても何も感じられなかった。空っぽの感傷を抱えて、風まかせに散っていく花弁をただ眺めていた。

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変わっちゃった 鐸木 @mimizukukawaii

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