クロニクル・オブ・ソード ~ゲームに閉じ込められた少年が英雄になるまで~
きい坊
第一章 ローデンブルグ
第1話 プロローグ
「あなたは怖くないの?」
「英雄になる男だからな」
ニXXX年。フルダイブ技術の発展により、俺の人生は大きく変化した。
仕事、学校、娯楽。フルダイブ技術は世の中のあらゆる点において
しかし、俺個人の感想としては、ゲーム体験の圧倒的なクオリティの向上こそがフルダイブ技術の
世界初のフルダイブ機器、〈バーチャルリンク〉が発売されて早五年。
「今日で十八歳か~」
それは誕生日でも変わらない。中学生の頃にフルダイブゲームの虜になってからというもの、交友関係と呼べるものはすべて消滅した。ゲーム内での対人関係でさえも
「彼女の一人や二人、欲しいよなぁ」
めぼしいゲームをやりつくし、懐かしのRPGの草原で寝ころびながら独り言をつぶやく。
その時、視界の上部に一件の通知を受け取る。
「ゲーム庁からの緊急通知? 珍しいな」
今や国内に限れば99%以上が使用していると言われる〈バーチャルリンク〉。国からの重要な情報などは〈バーチャルリンク〉に送信され、緊急通知として使用者の視界に優先表示されるようになっている。
「どうせまた興味のない情報だろう」
軽い気持ちで通知内容の詳細を確認する。
『日本屈指のゲームクリエイターと最高峰の性能を持つスーパーコンピュータにより五年間開発を続けていた、とあるゲームがようやく完成!?クリア者には国からの豪華報酬あり!詳しい情報は今から五時間後の二十一時、バーチャルリンク内のゲーム庁チャンネルをご覧ください!!』
「なんだこれ? ゲームをクリアするだけで国から報酬が出る? 国がゲームを作成中というのは風の噂で聞いたことあるけど、事実だったのか?」
突拍子のない通知内容に、混乱しつつも一つの結論を出す。
「全く意味は分からないけど、このゲームは俺の理想を、願望を叶えてくれる気がする」
そう結論付けると、右手の人差し指を上から下に振り下ろし、メニュー画面を表示させる。
「あと五時間もあるし、ちょっと仮眠でもしておこう」
ログアウトボタンを軽くタップすると和人の目の前は真っ暗になった。
「ふわぁぁぁ~」
眠い目をこすりながら枕元の時計を確認する。二十時五十分。完璧だ。俺はことゲームにおいて十分前行動を欠かしたことはない。
机の上に置いていた〈バーチャルリンク〉を頭に装着すると、頭をすっぽりと覆われる。何も知らない人が見たら完璧に不審者だよなといつも思う。
「バーチャルリンク・オン」
〈バーチャルリンク〉を起動させると見慣れたスタート画面が表示された。スタート画面には様々なアプリケーションが乱雑に配置されている。
「ゲーム庁チャンネルって書いてたよな」
目当てのアイコンをタップすると、既に始まりそうな雰囲気が
「危ない危ない、ギリギリだったな」
少し待っていると、高級そうなスーツを着た30歳ぐらいの男が画面に映し出された。
「はじめまして、ゲーム庁長官の
斎藤は余計な前置きもせずに話し始めた。
五年という長い年月をかけ、今までにない最高級のクオリティとボリュームのフルダイブゲームを作成したこと。ある一定の基準を上回りクリアした者にはゲーム庁に所属してもらうこと。その代わり、国として叶えられることであれば何でも望みを聞くこと。
一区切りついたのか、斎藤は映像を見ている者達に向け話しかけた。
「何か質問はありますか? 答えられる範囲であれば何でも答えます」
俺もいくつか疑問は浮かんだが、質問するまでもなく他の人達が質問をしてくれた。
「なぜゲームをクリアするだけで、国が願いを叶えてくれる? 俺たちゲーマーにメリットが大きすぎる気がするが、国にとってのメリットは何かあるのか?」
「国としてはこれからの時代、フルダイブゲーム市場が発展すると考え、早急にフルダイブゲームに精通した人材を欲しています。そのため、一定の基準を上回りゲームをクリアした者にはゲーム庁の開発部に所属してもらいます。その前提を崩さない願いを考えておいてください」
「ゲーム庁に所属するといってもどんな仕事内容なんだ? 現在の仕事はどうなる?」
「現在所属中の組織にはこちらから話を通しておきます。また、仕事内容は主に開発中のゲームのテスターとなる予定です」
「一定の基準とは?」
「基準についてお話しすることはできません。ただ一つアドバイスをするのであれば、全力で世界と向き合い楽しんでゲームを攻略して頂けることを期待しています」
その後、細々とした質問が続いたが、少しすると質問が止んだ。
「他に無ければ質問は締め切ります。最後に、今この映像を見ていただいている約八万人の皆様には優先的にゲームプレイできる機会を与えます。映像終了後、皆様宛てにURLをお送り致しますので、興味のある方は
プツーーー。そこで映像が途切れた。
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