ごく普通の転生ドラゴンライダーの一生

どくいも

訳アリ騎士団運営・前


レイニッヒ・ドラグスタインは竜皇国始まって以来の悪漢であった。

人の前に立てばわめき倒し、欲しいものがあれば力ずくで奪う。

それなのに、まるで自分が正しいかのようにふるまい、いやなことがあればすぐに暴れる。

弱きを襲い、強きを嫉む。

人面獣心とは彼の事をさし、獣よりも獣らしいと称されるほどであった。


そんな国一番の暴れん坊のレイニッヒであったが、彼の一番厄介な所は、彼がこの国の第二王子であったということだ。

それゆえに彼がどんな無茶を言っても、周りは彼を肯定せざる負えない。

本来止めるべき役割を持つ王と王妃も、生来の親ばか気質から、彼の行動を邪魔することはできない。

それこそ、隣国の姫に不敬を働き国際問題になりかけた際も、王は彼を叱らなかったほどだ。


そんな生まれついての暴君であるレイニッヒだが、それでも彼の蛮行に反抗する者がいた。

それがバーシバル・ドラグスタイン、竜皇国の皇太子にして、レイニッヒの兄、つまりは次期王である。

悪道に屈せず、臣下からの信頼も厚く、頭もいいと、まさに非の打ちどころのない人物で、それゆえに、レイニッヒは自分が上手くいかないことはすべてバーシバルのせいだと考えていた。


それゆえに、最近のレイニッヒはいかに彼を次期の王の座から引きずり落とすかばかり考えていた。

暗殺に糾弾、様々な方法を考え、最終的に思いついたのが、自身の武名をあげることだった。

戦場で功績をあげ、周囲に武名を響かせれば、王も自分を次期後継者として認めざる得ないだろうと考えたのだ。

それゆえ、彼は自分だけの騎士団を作ることにした。

大臣を脅し、王に頼み込み、周りの反対を押し切って、ようやく成し遂げたのだ。

もちろん騎士団長は自分であり、兵科はこの国でもっとも高貴な職であり貴族の憧れの的である竜騎士。

かくして、希望は叶い、ようやく自分による自分のための王権設立の第一歩を踏み出し……。




『〈チュートリアル・クエスト〉完了しました!

 報酬を付与します』


「いや、タイミング悪すぎない?」


……そんな最悪なタイミングで前世の記憶を取り戻したのであった。



というわけで、改めて自己紹介すると私はレイニッヒ・ドラグスタイン。

前世平民今世皇族の見た目勝ち組転生者である。

しかし、勝ち組なのは肩書だけであり、前レイニッヒ君の記憶によると、友達なし、信頼できる部下もなし、好感度は全方面でマイナス。

なのに昨日付で皇族兼新生騎士団の団長(コネ就職)とかいう、考えうる限り最悪に近い環境下にいるのが今の私の立場というわけだ。


「どうしたらいいもんかね~……」


まぁ、地位やら名声に飢えていた前レイニッヒ君なら今の立場は悪くないものかもしれないが、こちとら元現代日本男児。

地位や名声にあまり興味はなく、金は少々、できれば暇な時間が欲しい系男子。

出来ることなら、騎士団長を早々にやめ、王族の地位も捨て、莫大な退職金だけもらって平穏無事に異世界を旅したいところだ。


「……でも、無理なんだよなぁ~」


が、目の前にある無数の借用書がそれを許してくれるわけがない。

そう、この前レイニッヒ君はオリジナル騎士団を創設する際に、大商家や中堅貴族などに騎士団創設費として、莫大な金を借りたのだ。

まぁ、それでもこんな借用書は自分が王族であり、且つ騎士団長なら踏み倒すことができるのだが、逆に言えば、一般人ならば打ち首もの。

さらにいえば、前レイニッヒ君は嫌われ者故、困ったときに助けてくれるものなどほとんどいない。

今はぎりぎり父と母という王の後ろ盾があるからいいが、これがなくなった場合おそらくひどいことになるのは目に見えている。

つまりは、自分が平穏無事を願うのなら、騎士団長を続けなければならないわけだ。

目標は、真面目に騎士団の経営を続けることで、いい感じに悪評を取り除き、フラットな評価に戻ったところで引退。

余生は、退職金でゆったりスローライフを営むといった所だろうだ。


「できるかな?

 いや、俺ならできる!

 為せば成る!!」


もっとも、今の騎士団は入団希望者も竜もいない状態だから、頑張る何もないけどな!

前ニッヒ君は、この騎士団には自分でスカウトした人材しか入れないと言っていたが、それは単に人望がなさすぎて人が集まらなかったにすぎなかっただけだけどな!


「……せめて、気分がよくなるようなことをするか」


このまま将来について考えても気が重くなるばかりなので、せめてもの気分転換のために、自分の乗る予定の騎竜を見に行くことにしたのであった。




〈グルオオオォォォォ!!!!!〉


「す、すいません!レイニッヒ様!まだ、ドラゴンの準備ができておりません!

 い、今落ち着けて、あ……うわぁああああああ!!!」


――なお、当初の乗る予定は竜は、ダメになった模様。

――そんなことある?


どうやらこの体の嫌われぶりは人間のみならず、竜にも共通する様で、自分が近づいた瞬間竜が暴れて、騎乗どころではなくなってしまった。

一応、前レイニッヒ君の記憶の記憶のおかげで普通の騎竜なら乗ることはできるが、流石に暴れる戦闘用騎竜に乗るのは無理だ。


「……え、えっと、一応は最終手段として、竜支配の秘術を使う手もありますが……」


それ、絶対途中で支配の呪文が解けて死ぬフラグだろ、騙されんぞ?

というわけで、当初の予定は予定はおじゃんになり、代わりに自分の眼で竜を探すことにした。

しかしながら、いざ代わりを探すとなると、どの竜も暴れてなかなか都合のいい竜が見つからない。

前レイニッヒ君の記憶によると、竜は強いだけではなく賢い生き物らしい。

なので、おそらく国に響くほどの悪評持ちの自分では、竜の間でも評判は悪く、まともな竜ならば自分を背に乗せたいとは思わないのが原因であろうと考えられる。

なにこれ、ツミかな?


「ん?あそこにいる竜はなんだ?」

「え、えっと、それは……」


そんな風に竜舎を見回っていると、鎖でまかれた一匹の弱り切った幼竜を見つけた。

聞くところによると、この竜は雷竜という雷属性の竜であり、移動用にも戦闘用にも向かず、いわゆる社会不適合竜という奴らしい。

そんな人間社会にとって不要な竜だが、だからと言って自然に返せば人を襲う可能性があり、かといって雑に殺処分すると他の竜から反感を買う。

それゆえにこのように拘束したうえで、ゆっくりと見殺しにしていくそうな。

う~ん、諸行無常。


(……まてよ?ここで、この竜を引き取れば……イメージアップにつながるんじゃないか?)


そんな竜を見ていると、私は一つの考えがひらめいた。

今私は竜にも人にも嫌われており、まともな入団希望者も騎竜を選べない立場にいる。

しかし、ここでこの可哀そうな竜を引き取り、無事に育成することができれば、世間には自分のやさしさがアピールできるのではなかろうか?

竜の間でも、自分たちの仲間を救ってくれたとして、評判を改めてくれるに違いない。


「え?こ、こいつでいいんですか?

 え、えっと、おそらく引き取ってもすぐに死んでしまうでしょうし、仮に生き残っても騎竜としてまともな運用ができるとは思えませんが……」

「いや、違うな。

 俺にはわかる、こいつでいいではなく、こいつだからいいんだ」


かくして、私はイメージアップのために、その鎖でつながれ弱っている雷竜を引き取ることに決めたのでした。




――なお、半年後。


「で、入団希望者は?」

「0人ですね!」


――ですよね~~。


雷竜を引き取り後しばらくたち、その噂も十分に広まったのにもかかわらず、相変わらず入団希望者はいなかった。

まぁ、長年の前ニッヒ君の悪評を考えれば、この程度の宣伝効果では焼け石に水なのだろう。

かなしいね、バナージ。


「……まぁいい、雷竜の様子は?」

「そちらに関しては、ばっちりです!

 後遺症もなく、鱗の艶もばっちり!

 なんなら、今すぐにでも空を飛べるはずです!」


だが、代わりと言っては何だが、引き取った雷竜は無事に治療を終えることができた。

そのためだけに、わざわざ専門家よび、高い薬を使い、専用の部屋も準備。

さらには魔力の同調をすれば直りが早いとの話を聞いたため、難関と言われる雷属性魔法を覚えたのだ。

その甲斐あって、雷竜の調子は絶好調であり、成長期なのも相まって、今では見た目だけなら一端の騎竜といって相違ないだろう。


〈グルるるぅぅ♪〉

「これ、懐かれてるでいいんだよな?

 めちゃ放電してきて、ちくちく痛いんだが」

「はい!もちろんです♪

 雷竜ちゃんは、感情が高ぶると体に電気が流れますので!

 ここまでの放電は初めてですけどね!」


もっとも、少々懐きすぎたせいで竜としての威厳はなく、竜よりも大型犬みたいな態度であり、雷竜の放電体質も相まって、大変な事になっている。

だが、これでも愛情表現の一種であり、嫌われるよりましだと思い、ぐっと我慢する。

それに、雷竜がこれほど懐いているところを見れば、ほかの竜も自分に対する誤解が解けるだろうし、何なら雷竜自体が仲間の竜に自分はいい人だと伝えてくれるかもしれない。

そうすれば、我が騎士団にも大量の良血の竜が集まり、いい竜がいれば入団希望者も増えるはず!!

かくして、今度こそという期待を込めて、雷竜と共に竜舎へとスカウトのリベンジを果たすのであった。


〈グオオオオオォォォ!!!!!〉

〈ギャグギャギャギャギャギャ!!??〉


――なお、第2回も失敗した模様。


原因は、治療した雷竜による全力の咆哮。

どうやら、雷竜は自分が他の竜に目移りしているのを嫌がり、全力でほかの竜を威嚇しているようだ。

かくして、残念ながら今回も竜の獲得を成し遂げることはできなかったが、代わりに雷竜の治療を共にしてくれた雷竜の専門家が自分に同情し、副官になってくれたのであった。

さもあらん。




――なお、一年後。


〈グルオオオォォォ!!〉

「グッボーイ、グッボーイ!

 よぉし!後は訓練場を三週だ!」


なんとそこには、すごくムキムキでウロコも肉厚になった雷竜の姿が!

さて、この1年間といえば、相変わらず騎士団の仕事は無きに等しく、入団希望者も相変わらず0人だった。

なので、その空いた時間を有効活用しようと、その分雷竜を訓練することで時間をつぶしていたのだ。

本来なら騎士団を運営できるほどの潤沢な予算に使い、副官になった専門家と相談し、豊富な餌を与え、効率的なトレーニングを施した。

その結果、以前はやせ細っていた体には筋肉が付き、鱗はまるで厚手の鉄板のよう。

ブレスは雷を思わせ、何よりも翼竜の殴り合いというジャンルならば、おそらく竜皇国一になったであろう自負がある。


「騎士団長、騎士団長!

 この子はもうすでに立派な騎竜です!

 もうすぐ竜評会がありますし、そこにこの子も参加させたらどうでしょうか?

 この子のすばらしさを、他騎士団に見せつけましょう!!」

〈グルル!〉


だからこそ、副官がこんなこと言ってきたわけだ。

なお、竜評会とは読んで字のごとく、竜皇国で数年に一度行われる竜の性能を見る大会であり、竜版のオリンピックみたいなものだ。

国外からも応募があり、国際評価も高く、それなりに栄誉ある大会といえるだろう。

当初世間の不評や雷竜の調教具合が未完なこともあり竜評会参加にやや否定的な考えを持っていた私であったが、副官の押しが強い上に、本竜もやる気も万全なことを確認。

それゆえに、やや不本意ながらも、竜評会に参加することになったのであった


「あ、出場するなら、ちゃんとその子の名前と、騎士団名を決めてくださいね!」

「じゃぁ、雷竜騎士団に、サンダーボルトで」

「……いや、まぁいいですけど」



――そして、結果は中の上だった。


いやまぁ、わかっていたけどね?

さて、件の竜評会に参加し、出られる種目にすべてに出た私とサンダーボルトであったが、どの種目も上位までには行けるものの、表彰台まで行くことはなかった。

唯一、総合成績だけは三位ではあるが、それだって、基本出れる種目には大体出ていたからだ。


「いえいえ、色々と不利な条件下でよく頑張ったと思いますよ?」


副官はそう言って慰めてくれる。

しかしまぁ、順位は残念だったもの、今回の大会のおかげで、今の自分とサンボーボルトの竜騎士としての実力が分かったのは収穫であった。

つまりは、自分とサンボル君は、こんなに努力したにもかかわらず、本業の竜騎士には戦闘では勝てないということだ。

というのも自分とサンボル君は放電や放電対策に重きを置いており、その分対竜戦闘能力に欠いており、風竜の竜騎士と争えば素早さで負け、火竜相手にはブレスの範囲で負けてしまう。

岩竜はそもそも飛べないしブレスも吐けないため、実戦では脅威ではないが、その巨体と怪力は翼竜系では比較にならない。

つまり、ひどいことをいえば雷竜は基本観賞用の存在であり、なぜ竜舎で雷竜というだけで殺されるかは身をもって理解できた。


〈がううぅぅううう!〉

「あ、こら!人の体をこずくな!

 危ないだろ!」


なお、自分の思考がばれたのか、観賞用扱いされたサンダーボルトが抗議のために、こちらの体をぐいぐい押してきた。

でも仕方ないだろ、事実なんだし。

なんて考えをしたら、さらに押しが強くなった、つ、つぶれる!


「ほっほっほ、レイニッヒよくやったのじゃ!

 雷竜に乗って竜人両道を体現するとは、儂も王としても親としても鼻が高いぞ!」


もっとも、親でありスポンサーでもある王様や王妃は、自分の血筋であり息子である自分が入賞したこと喜んでくれた。

まぁ、ようやく親孝行ができたと思うと少し気は休まるが、それだって、親の贔屓目という点が強いのであろう。

現に長男である王子の視線は依然厳しいままであるし、近衛騎士団長もこちらの方を睨んでいた。

他の兄弟姉妹や騎士関係者は、生暖かい目でこちら見つめてきたため、そこまで無様を晒してないと思うが……断言できないのがつらいところだ。


「おお!そうじゃ!

 せっかくだから、閉幕のパレードの花はお主に努めてもらうとしよう!

 人竜共に優れた王族……これはきっと話題になるぞ!!」

「団長!この提案は是非引き受けるべきです!

 サンボルちゃんのすばらしさをみんなにも伝えるべきです!

 それに雷竜騎士団の宣伝にもなりますし、やらない理由がありません!!」


やめてくださいお願いします(真顔)。

とりあえず、暴走死気味の父王と副官を止め、なんとかパレードの花を務めるのは回避。

しかしながら、それでも入賞したことや、ネームバリューなどからパレードには参加は決定。

なんとか、恥にならない程度のパフォーマンス披露することで、竜評会を無事に終わらせることができたのでした。




――そして、一年半後。


「くくく!天才の俺様ならすぐに乗りこなして……。

 ぐあああぁあああああああ!!!」

「み、ミアバー!!」

「アシクビクジキマシター!」


なんとそこには無数の雷竜と、それに乗り損ねて放り出される見習い騎士の姿が!

さて、あの竜評会の後、ようやく前ニッヒ君の悪評がなくなったのか、自分の騎士団にもそれなりに入団希望者が来るようになった。

まぁ、入団希望者のほとんどが、中小貴族の出であったり、竜騎士の家の次男坊三男坊といった見ていて不安になる面子だが、入団希望者には変わりない。

さらには、竜評会をみたいくつかの竜舎からは殺処分待ちであった雷竜を格安で引き取ることに成功した。

そのため、人数や竜頭数だけならば、最低限騎士団の面子を保てるようになったといえるだろう。


「しび、しび、しびびびびびびび」

「お~い、生きてるか~~?」

「ふん!魔力が切れようと、俺様ならそんな電撃筋肉で防いで……ぬああああああ!!!」


……もっとも、あくまで人数だけならだが。


というのも、この雷竜という生き物は前にも合った通り、攻撃の時に放電、警戒の時も放電、懐いた時にも放電するのだ。

調教次第では、その放電を多少抑えるようにすることはできるが、その調教をするためにも、まずは放電を耐えねばならない。

一応、前世の曖昧科学知識と魔術を合わせて、雷竜騎乗用放電無効化魔術を開発し、新前竜騎士たちに教えたが、あんまりうまくいってない様だ。


「ぐ、ぐぐぐ!

 だが俺はへこたれん!

 これを超えれば、俺も火竜騎士や風竜騎士をこえる竜騎士に……!!」

「なれないぞ」

「え」


さらに言えば、そのような雷竜の放電に耐え、雷竜騎士に成れたところで、おそらく普通の竜騎士たちと比べて一歩劣る竜騎士にしかなれないであろう。

なぜなら、前述したとおり、雷竜は竜としての能力が他種の竜に比べて劣っており、飛行能力なら風竜が、ブレスの距離なら火竜の方が優れているからだ。

竜評会では、王族マネーとがっつり特訓でなんとかごまかしていたが、あのクオリティを他の雷竜騎士に求めるのはコクというもの。

ついでにいえば、他竜騎士は歴史と伝統の騎竜術をもっているが、こちらはそんなものはなく、単なる雷竜専門家と転生者のあやふや知識でおぎなっているのだ。

スタート前から勝負がついているといってもいいだろう。


「代わりと言っては何だが、先の竜評会のおかげで、この雷竜騎士団は色々注目されているからな。

 雷竜を制御できれば、それなりに食っていけるぞ。

 よかったな」


もっとも、最近はこの雷竜騎士団にも多少の仕事は入るようになり、ちょっとした警護や運搬などを頼まれる事が多い。

まぁ、これは自分や雷竜の実力というよりも、自分の血や雷竜の騎士という物珍しさによるものだろう。


「うぐぐぐ、最強の竜騎士予定の俺様が、警備に配達とは……!!

 お、俺様の夢が……。

 最強の竜騎士に成り、ちやほやされるという夢が……!!」


まぁ、新前騎士君の言いたいこともわかるが、これも竜騎士として大事な仕事である。

なお、他竜騎士は同盟国の戦争の援軍やら、領内に出た大型魔物の討伐も請け負っているようだが、雷竜騎士団にはそういう仕事は回ってこない。

これはまだ新米竜騎士のほとんどが雷竜に乗りこなせていないことや、他騎士団との連携が取れていないこと。

何より自分は腐っても王族なため、前線などもってのほかであり、意図的に危険な任務を外されているからだろう。


「だからまぁ、安全に強くなりたいのなら、この騎士団が最適なんじゃないか?

 地位もあり名誉もある、なのに安全は保障されている!

 いいことずくめじゃないか!」

「……騎士がしていい発言とは思えんな」

「まぁまぁ、最強の竜騎士を目指すなら、今度の竜評会があるから。

 そこでいい成績を納めれば、他の竜騎士団にスカウトされるかもしれないから!」

「……!!お、おう!そうだな!

 ふふふふふ!まってろよぉ!竜評会!

 俺様が優勝してやるからな!」


さて、ここまで雷竜騎士団の様子や部下の様子を見てもらえばわかると思うが、自分の前の悪評は、ここ最近すっかり鳴りを潜めている。

一応、昔話をする上で時々過去の黒歴史を折り起こされたり、家族兄妹にそのことでからかわれたりするが、所詮はその程度。

すくなくとも、話す前にさけられるという事態はなくなったわけだ。

さらにいえば、騎士団創設時での借りまだ残ってはいるものの、別段すぐに返せとは言われず、むしろもっと貸そうとしてくるくらいだ。

おおむね、騎士団創設に関しては成功した、といっても構わないだろう。


(あとはいかにあと腐れなくやめるか、だな)


後は当初の予定通り、騎士団の評判を良好な状態までもっていき、中年になる少し前に引退するべきだ。

できれば、引退後は異世界スローライフとか異世界旅行を楽しみたいところだが、正直王族であることを考えれ少し厳しい。

しかし、為せば成るし、諦めるのには早い!

なにせ、竜皇国はここ数十年平和なのだ。

ワンチャン自分が引退するときには、王族でも自由にやめることができるように法律を変えることができるかもしれない!

なのでここはじっくりと育て、雷竜の騎竜術をきちんとマニュアル化。

最低限権力を握り、引退に関しても自由に法がいじれるようにしよう。


「しびびびびびびび!」

「ぎゃー!!」


……もっとも、感電している新前騎士をみるに、それも厳しそうだが。

とりあえず、残りの任期はゆっくり雷竜騎士団のハートフルライフを過ごせるように、とりあえず新人竜騎士達が使い物になる様、務めるのであった。




――なお、二年後。



「速報速報!

 魔界の門が開かれ、魔王が出現!

 各国は、魔王の軍勢及び魔物に注意されたし!」

「各竜騎士団は戦時待機!

 また、各騎士団長は御前の間に集合されたし!」

「え?竜評会?

 それは当然禁止ですよ、当り前ですよ」



もっとも、魔王の出現により竜皇国の数十年に及ぶ平和は崩壊。

かくして、雷竜騎士団による平和なスローライフ計画は、おじゃんになってしまったとさ。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る