砂煙を啄む
山田
#1
人間は元来、土塊でしかなかった。
神からすれば一握の砂にも満たないちっぽけな存在の生き物は、図々しくも天を蝕み、地を削って支配者を気取る。
──だからきっと、これは強欲な僕らへの罰なんだ。
真夏の東京は灼熱で、酷い時は風呂の設定温度すら易々と超えてくる。僕の知っている街並みは人の手で弄くり回された大地をアスファルトで覆い、見上げるだけで目眩がしそうな無機物がバベルの塔みたく立ち並ぶ虚な景色──の筈だった。
「砂化、か……」
見慣れた世界は一夜にして色を変え、無駄に多い人混みがあったであろうその街は、無機物だけを残して砂と化す。水に一切も侵されていないその砂は、手にとって仕舞えば忽ちに指の隙間を掻い潜って風に舞うと、まるで非力な人間を嘲笑うかように逃げ去る。
学生を隠れ蓑にしてこの街に寄生していた僕は、それをただ呆然と眺めることしか出来なかった。
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