第11話 あの魔剣を試すとき
あたしはクラースさんからエッチな剣を渡されました。
「クラースさん、何でこんなもの渡してきたんですか?」
「今俺たちの前にいる存在は、どれだけ危害を加えてもかまわない悪党で、そしてそのボスは女。この魔剣を実戦で試す機会は今しかないと思う」
そりゃまあ、服切り裂いても咎められなさそうな相手なんて、この人以外そう簡単には見つからなそうだけど、だからといってこの状況でこの剣出すの?
それに…
「あたしすごいスキルはあっても剣の腕は素人だから、これ当てるの難しいと思うんだけど」
「それは問題ない。対象を切り裂く強いイメージとそれ相応の魔力があれば、その剣は刃の届く間合いよりも遠くにある対象を切り裂くことが出来る。最大で十五メートルほどだ」
ええっと、あたしの身長の十倍弱って考えると、ここからなら十分に届きそうかな。
魔剣の支配者のスキルがあれば、簡単に最大距離まで届きそうだし。
「……よし」
「ほう、やろうってのかい、小娘。それがどんなものなのかは知らないが、そんな剣を手にしたくらいでこのアタシに勝てるとは思わないことだ。アタシはこいつらとは違う。お前のような貧相な子娘ごときに…」
「えいっ!」
あっ、本当にばっさり斬れちゃった。
女ボスの着ていた服がズタボロになって吹き飛んで、大きなおっぱいがあらわに。
「っ…きゃあぁぁぁっ!」
盗賊の女ボス、高身長で鋭い目つきなわりに、意外とかわいい悲鳴。
さっきまでもっとハスキーな声でしゃべってた気がするんだけど。
「こ…小娘っ、よくもやってくれたね」
女ボスは裸を隠すためにしゃがみこんじゃったから、とりあえずこれで無力化は成功…なのかな?
「くっ、姐さんになんてことを」
「許せねえぜ、あの子娘」
「ああ、まったくだ。うんうん…」
「ほんとにほんとに……」
まだ残ってた手下の盗賊二人は、そんなことを言いながら女ボスの体を凝視してにやついている。
結果的にあの二人もほぼ無力化できたわけだから、これで勝利確定かな。
「うむ、見事な結果だ」
そしてこのエッチな武器を作ったクラースさんもご満悦な様子。
クラースさんもこんなもの作っちゃう人だから、セクシーな女ボスの裸見れてうれしいんでしょうね。
まったくもう……。
けれど、そんなクラースさんの様子に気づいたのか、小さくうずくまっていた女ボスが、自分の大事な所を隠していた手を少しだけずらしながら、クラースさんに話しかけてきた。
「なああんた、そんな子娘なんかよりも、こっちにつく気はないかい?」
あの女ボス、自分が脱がされた状況を逆に利用して、クラースさんに色仕掛けをする気だ!
まずい、こんなエッチな武器を作っちゃうクラースさんじゃ、あっさり誘惑されちゃう可能性も…
「クラースさんっ、いくらおっぱいが大きいからって、あんな誘いに乗っちゃだめですからねっ!」
「乗るわけないだろう」
あっ、クラースさん実は思ったよりまとも…
「あんな女のものよりも、もっといいものを今朝見たからな」
……え? 何で今クラースさん、あたしの胸元に視線向けてるの?
「おい、あんたまさか、このアタシの豊満な胸よりも、その小娘の貧相な胸のほうがいいとかいうんじゃないだろうね」
「当然こっちがいいに決まっているだろ。胸の良し悪しは大きさではない。重要なのは色と形だ!」
何言ってるの?この人。
「お前のは所詮ただでかいだけで、たれ気味なうえに色も黒ずんでいる」
「ぐはぁっ!」
「姐さんっ!」
「なっ…なんてことを!」
今のクラースさんの言葉で女ボスが結構なショックを受けてる。
「それに対してシズクの胸は見事としか言いようがない。小ぶりではあるが、それゆえに一切垂れておらず、非常に均整の取れた美しい形。そして淡いピンク色の…」
「きゃあぁぁっ、わぁぁぁっ! ってゆうか何で朝のあの一瞬でそこまでじっくり見てるんですかっ!」
「よきものはたとえ一瞬の目撃であったとしても、その脳裏にしっかりと焼き付くものだ」
「焼き付かせないで! 忘れてっ!」
「無理だ」
「そんなっ!」
うぅっ、何でこんなことにぃ……。
「うぅっ、うぅっ……」
いや、あたし心の中では嘆いていても、実際に声には出してなかったと思うんだけど、この声はどこから……
「うぅっ、あんな子娘ごときの、貧相な胸に負けるだなんてぇ…。うぅっ……ぐふっ!」
「姐さーんっ!」
「うわぁぁぁんっ!」
こうして盗賊の女ボスは、クラースさんの言葉による精神攻撃で多大なダメージを受け、意識を失って倒れてしまいました…とさ。
あたしもあたしで別の意味での精神的ダメージを受けてるんだけどね。
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