第10話 最強の護衛
「ぴぎゃあぁぁぁっ!」
「うぎゃあぁぁぁぁっ!」
「ふぎゃぁぁぁぁぁぁっ!」
あたしは襲い掛かってきた盗賊たちの攻撃を名前の長い剣で受け流し、そしてその盗賊たちの体に女王の鞭による攻撃を叩き込んだ。
その結果、あたしの足元には白目向いて泡を吹いている人たちが何人も……。
「クラースさん、これ勇者の戦い方としてどうなんですか?」
「正直俺もなんか違うと思う」
やっぱりそうだよね。
どう考えてもこれ、吟遊詩人が歌に出来るような内容の戦いじゃないよね。
「だが極力グロい感じにはならないようにしつつ、悪党に相応の苦痛を与えながら無力化するには、この武器が最適。血みどろになってもかまわないのであれば、別の武器を用意するが…」
「そ…それはいいですっ。人間相手に血みどろはきついので、今回はこのままでいきます」
「そうか」
こうしてあたしは、残りの敵ともこの二つの武器で戦うことを決めたわけなんだけど、これ以降全然敵が襲ってこない。
「向こうから来ないときはどうしたらいいんですか?クラースさん」
「なんかいい感じでかっこよく戦える魔剣は、一度受けてから反撃するための武器。自分から攻めるのには向かない。以上!」
「だめじゃないですかっ、それ!」
そしてその直後、盗賊たちの背後から女性の声が聞こえてきた。
「お前たち、まずは男のほうをやりな」
「レヴィの姐さんっ!」
もしかして、この声の人が盗賊団のボス?
「あの子娘は自分から攻める武器を持っていない様子。そして他の武器は男のほうが隠し持っている…となれば、新しい武器を出される前に男のほうを潰すのが上策だろう」
「さっすが姐さん!」
「そうとわかれば…」
「あの野郎をぶっ殺す!」
レヴィという女ボスの言葉によって、これまであたしに武器を向けていた盗賊団の人たちは、みんな一斉にクラースさんに向かって突っ込んできちゃった。
「クラースさ…」
「ばかな奴らめ。この俺に刃を向けるというのがどういうことなのか、思い知るがいい」
そう言うとクラースさんは鞄の中からボールのようなものを一つ取り出して、それを地面に投げつけた。
するとそのボールから、二メートルくらいの人型ロボットのようなものが飛び出してきて…
「やれ、ガーディアンゴーレム」
「うぎゃあぁぁっ!」
「ぐはぁぁっ!」
「ぶぐわぁぁぁっ!」
襲い掛かってきた盗賊たちを全員殴り倒しちゃった。
「クラースさん、このロボットの出てくるボール何なんですか?」
「ロボット? ロボットが何だかは知らんが、この玉は地面に魔法陣を描くだけの魔導具だ。そしてこの魔法陣は、鞄に直接出し入れできないサイズの物を、鞄から取り出すための魔法陣」
あっ、あのボールにロボットそのものが入ってるわけじゃないんだ。
なんとかボールやなんとかカプセルの類似品みたいのじゃなくてちょっとほっとした。
「それでクラースさん、このロボ…じゃなくってゴーレムはいったい何なんですか?」
「このガーディアンゴーレムは、俺に危害を加えようとする存在を容赦なく叩き潰す、最強の護衛だ」
確かに容赦ない。
倒された人、みんな顔ぐちゃぐちゃにひしゃげてるし。
というか…
「こんなに強いゴーレムがあるのなら、もはやあたし必要ないのでは? たいていの敵はクラースさんだけで倒せそう…」
「そういうわけにはいかない。なぜなら俺はただ魔導具を作りたいだけの錬金術師で、悪党を倒すのは勇者の役目だからだ」
その勇者の存在意義がかなり乏しくなってるんだけどなー、このゴーレムがあまりにも強すぎるおかげで。
まあでも、それならあたしがこのゴーレムを使って盗賊たちを倒せば、それで済む話だよね。
「じゃあクラースさん、このゴーレムあたしに貸してください」
「それは無理だ」
「何でですか?」
「このゴーレムは俺の護衛用に作られているため、他の者の命令は一切聞かない」
「だったらあたしはどう戦えば…」
「ゴーレムの代わりにこれを使うといい」
クラースさんはそう言うと、鞄の中に手を突っ込み、何かのアイテムを取り出そうとした。
けどそうなると、次のアイテムを取り出させまいと、大勢の盗賊たちが一斉に襲い掛かって来て…
「やれ」
「ぷぎゃぁっ!」
「ぐはっ!」
「ごわぁぁっ!」
「うげぇぇっ!」
みんなあっけなくガーディアンゴーレムに殴り倒されちゃいました…と。
まあでもこれで盗賊の数も減って、あと残ってるのは三人くらい。
女ボスと手下二人、これならそこそこ強い武器があればきっといける。
「クラースさん、次の武器は?」
「これだ」
そしてクラースさんがあたしに差し出してきた武器は、なんだか見覚えのある剣でした。
これ、服のみを切り裂く魔剣だ。
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