35

もんもんとして時間をやり過ごし、ようやくのこと出発時間になった。

こんなことになるなんて。

結局昼も食べてない。


緊張をなるべく押し殺しレッスンに向かった。

レッスンルームはちょっと広めのスタジオのようなところだ。

時間まで外の狭いロビーのようなところで待つ。

ぽつんぽつんと椅子が4つ程ある。

既に三人座っている。今日のメンバーだ。

4つ目の椅子に座った。


そのあと最後のひとりとなったおばさんが来てもうひとりのおばさんの隣に立った。

おばさんふたりは仲良しらしくしゃべり始めた。


おじさんとおじいさんも時々会話をする。


俺だけ話す相手がいない。


開始時間間際になって先生が来た。

みんな挨拶する。

俺は緊張して声が震えないよう気を付けなければならなかった。


髪型を見る。

アクセサリーをつけているか見る。

靴を見た。

服装も見た。

短時間で一気に確認する。

そして顔を見る。

心臓が高鳴った。


あんまり凝視しないようにしなければならないと思ったが、顔を見たら引き付けられてしまった。

先生が首をかしげる。そしてにこっと笑った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る