第11話 どうせなら人間の姿で・・・なんでもない


 秘書が「送金手続きをします」って俺を追い出したので自分の部屋に戻った。


 あっちの物価とか知らないけど、子供用の養育費すら食い潰しそうだ。

 月々送金にするにしても銀行がある場所に出てくるのも大変なんだろうな。

 双子が飢えなければいいや。

 多分一生会えない弟妹だけど、知ってしまったら一応幸せに生きてて欲しいよ。

 でも親父は多分数年したら、ポケットにコイン詰め込んで消えるんだろうな。


 親父は予想よりだいぶダメなおっさんだったなぁ。


 母方の親戚ともほとんど付き合いがなかったから叔父とかの記憶もほとんどないけど、理想の父親像からはかなり掛け離れてた。


 母さんがそれなりに稼いでたからって、養育費もいらないって言われてたからそうしてたとかウンコだろ。

 俺に対して申し訳ないとかなく、暮らしは大丈夫かとか聞きながら何かする気はなく、姉さんの金出して、だもんなぁ。


 はぁ、母さんの男の趣味よ。

 他に男の影は無かったけど、再婚とか考えなかったのかな。ダメンズの自覚があったとか。


 訴えたら親父に養育費請求できるんだろうけど、無いものは無いから無理かな。

 定職なしじゃ差押も出来ん。無敵じゃね。


 姉さんは親父に甘いって言ってたけど、多分めんどくさかっただけだろう。

 姉さんにとってのはした金で静かになるならってさ。

 貸してくれじゃなくて、くれって当たりがビチクソ。

 姉さんの母親はどんな人だろう。あんな親父と付き合うくらいだからぶっ飛んでたのかな。


 ところで親父ってパスポートとビザどうしてるんだろ。俺は海外に行ったことがないからわからんぞ。

 

 初めて話した会話が「金」って言うのが情をぶった斬るのに良かったぞ。

 

 まぁ、いないものと思ってた親父がクソでもどうでもいいか。だって元々いないからな。


 

 大学のレポートをやりながら、ぼんやりした一日になった。



 翌朝、やっぱり猫と蛇が同衾してる。

 猫はまぁ可愛いけど、大蛇は慣れないなぁ。

 せめて人型・・・。

 セクシーダイナマイトなミズメさんじゃムラムラしちゃうし、ロリない猫又は俺が違法ロリになっちゃうからダメだな。


 もし他の子が来たとしたら、雪音さんが同衾したら俺はアイスマンになるし、お稲荷さんは恐れ多い。

 あずきちゃんは、やっぱりロリなのでお触り厳禁だ。

 ん!無理。

 秘書は論外だし。


 猫も蛇も同衾禁止にしたい。


「なぁ。布団に入るのやめてくれよ」

「えー、蘭さまいないからな寂しいにゃん」

「人の温もりがいいですにゃん」

 あざとい猫目にうるうるされちゃうと強く言えない。


「ふふ、ならば妾の褥にこよ」

 ミズメさんの褥に?

 どこになろうと同衾拒否なんだけど。


「肝の小さい男はモテぬぞ」


 んーーーーーーー!人外にモテなくてもいいかな。


「俺は同年代の明るいそこらにいそうな子がいい」

 少女漫画みたいな恋とか言わないよ。バイト先で出会ってとかそー言うのがいい。


「昨今の女子は、パパ活とかでお金になる付き合いがしたいんだろう?普通の男はモテぬとか」

 ふっと笑われたけど、ミズメちゃん、女子像の偏りが酷くない?

 パパ活は普通じゃないからね?

「○ックスというSNSでいっぱい流れてくるぞ」

「それは一個見たら同じようなの流れてくるから」


 全く、よく目に入る情報が正しいとは限らないんだぞ。


「おお!舜さまは今はお金持ちだからモテるかも知れぬぞ」

「いや、金払って付き合うのはもう恋愛じゃないから」

 デートで奢るとかは頑張れるけど、お金を払ってあってもらうとかは、俺的には無しだ。


「だいたいお金払って会う子って他にも男と会ってるじゃん。恋出来ねぇよ」

 

 キャバとか行くより二人っきりかもだけど、おれそもそもキャバ行かないし。

 ダチが飲み行ってバイト代全部飛んだとか言ってたの恐ろしかったわ。

 母さんの金はあるけど、食費とか生活費はなるべくバイト代使ってたから詰むじゃん。


「恋とは相手がどんなものでもストンと落ちるものだ。なにも目に入らないとか言うのであろ」

 んー、まぁ母さんみたいに親父に落ちる女の子もいるわけだし、わからなくはないよ。


「女子の方も恋に落ちれば考え方も変わろうて」

 両思いになれればね!


「まぁ、俺は自分の財布の限界を知ってるからお金のかかる付き合いは最初からしないんだよ」

「堅実だな」


 姉さんの消息が掴めても掴めなくても姉さんのお金を当てにするのは違うだろ。


 車やバイクは使わせてもらってるし、今は衣食住の世話になってるけど。


 逆に期待して使いまくって姉さんが戻って来たら俺ってばバカじゃん。


 そもそも姉さんが生きて戻って来て欲しいから、金は無いものとしていないとな。


「舜さまはお利口ですにゃん」

「あのおっさんの子とは思えないにゃん」


 猫のままの双子が俺にすりすりして褒めてくれる。もふもふスベスベ嬉しい。


「蘭さまは崖から落ちても死なないにゃん」

「蘭さまは溺れても帰ってくるですにゃん」


 ちょっと。それは姉さんはすでに人ならざるものじゃ無いかな。


 もしかして人魚の肉食ったか、吸血鬼の眷属になったとかあり得るの?


 あ、思考がどんどん毒されてるな。


 やめやめ。


 とにかく生きて帰ってくる。


 ほんと。早く帰って来て。


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