fairy feather 夢で旅する妖精大森林

織田 福之助

第1話 なあ、占いお願いして良いかな!

「非常に大事なお話をしなければなりません。」


その言葉で大体想像はついた。私の身体はやはりおかしいと。


いや、おかしいではない。絶対に命に関わる病気だって事を。


そのまま消化器外科医の先生が発言する言葉を聞き、病院を去った。





診察結果を聞いて6時間後、いつものお馴染み歩行者天国、とはいえ夜の9時を過ぎていた。この時間になると、昼間程の人混みは無いがサラリーマン達の酔っ払った怒声や、合コンだろうか?若者達の集団、明らかに未成年の男女が座り込んでいる姿等、いつも通りの日常をよく見かける。


そう、私もまた外食を行い、ジョッキビールを2杯飲み、店を出た。


いつもなら、気持ちの良い気分で帰宅するのだが、流石に今日はそんな気分になれなかった。


歩行者天国に吹く夜風で酔いを覚ましながら、ボソッと自然と言葉が出た。


「‥‥癌か‥‥」


そう、そうなんだ、私は癌だ、大腸癌と診断されたんだ。

でもなぜ?なぜ癌に?え?私が?え?え?


未だに実感が沸かない。だって身体は何ともないんだから。


余生をどう過ごすか、そんな事を考えている時だった。


「お兄さん、お兄さん」


私の方に向かって左耳から聞こえる。お兄さん?38才の私の事だろうか‥‥


「お兄さん、こっちおいで!」


テーブルを設置し、奥に座っている女性がいる。明らかに私と目が合った。

本当に自分が呼ばれたのか?人差し指で自分自身に向けてみる。


「そう、そうだよ?お兄さんを呼んだのさ!こっちおいで!」


何だろうか、この歩行者天国にはほぼ毎日通るが、こんな設置物は今まで見た事がない。似顔絵コーナーか、手相占いとか、何かのイベントなのだろうか?


「あの、私は全く興味がなくて‥‥」


「まぁ、良いから座んな、魂の迷いが見えんのさ。」


出た出た、訳のわからない発言。私はこういう類は嫌いだ。


宗教、勧誘、占い、スピリチュアル、人それぞれだが、全く興味がなかった。


「ごめんよ、婆さん、私は帰ります。」


全く相手をする必要すら無いと感じ、座れと言われた事も受け入れず、その場を立ち去ろうと思った時だった。


「‥‥ほうほう、上行結腸に‥‥癌‥‥かな?お兄さん、大腸癌だね。」


そんな言葉をかけられてしまえば去る訳にはいかない。上行結腸癌と何故そこまで知っているのだ?


「ば‥‥婆さん、なんで俺の事を‥‥」


「何年この仕事をしていると思うんだい!人の死が近づいている人の魂なんてもう見極めたさ!」


魂?見極め?全く興味ないと思っていたが、この婆さんは何者?


「何者って、お兄さん、あたしゃただの占い師だよ!」


!!


え?人の心まで読んだ?私はまだ何も発言してないのに‥‥


私はふと気付くと、この年寄りの‥‥いや、この占い師に興味が出てきたのかもしれない。占いなんてやった事はないが、占いとはどんなものなのかが知りたくなっていた。


「なあ、占いお願いしていいかな?」


「お兄さん、お名前は?」


五十嵐いがらし 彗人けいと


「‥‥ケイトね、だから水晶が反応したってわけかい。」

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