第2話 また後でー

この占い師の婆さんは妙な事を言う。


私の名前、彗人けいとだから水晶が反応したと、そりゃ一体どういう意味だ?


「それはねぇ、お兄さん。」


うわ!また心を読まれた!なんなんだ一体


「簡単に言うと、異世界にある妖精大森林パラダイスの住人、ケイトと共鳴しているんだよ。」


「異世界?パラダイス?ケイト?」


やはり、興味を持ったのがいけなかったか、この婆さんと関わらない方がよかったんだ、ここは適当に話を合わせてさっさと帰‥‥


「お互い同じ名前、お互い同じ病気、お互い同じ日に死んでしまう。」


「‥‥俺は何時死ぬ?」


「正確な日はまだ先だからのう、わからないが、ざっと500日ってところかのう。」


500日‥‥か‥‥約1年半、余生を過ごすにプランを考えて死んでしまうには十分な時間がある。


消化器外科の先生と言われた余生1年半と、全く一致しているし、この占い師、やはり只者ではないのか?


「まあ、大体のことはわかったよ。38年独身、今まで生きた人生で、やりたかった事や行きたい所等を死ぬまでに色々とするさ。高卒で20年少しだけ貯めた貯金の使い方を考える事ができそうだし。」


「お兄さん、それでも癌を完治出来るから声をかけたんだべさ!」


‥‥もう意味がわからない。今までいなかった場所で占いの商売、大腸癌の予想的中、パラダイスという異世界、そして癌の完治?


これ以上話を長引かせると、また妙な事を言うのではないか?


気がつけばもう夜10時になりそうであった。明日も仕事はある。6時30には起きなければならないし、辞表の準備や上司や両親に癌の事を言わないといけない。


今日は‥‥シレッと帰るか。


と、思ったが、会話のイタチごっこが始まる。


妖精大森林パラダイスの住人達はな、不思議な力があるのじゃよ。」


「婆さん、すまないが今日は‥‥」


「おまえさんは妖精達に呼ばれておる。」


「俺は帰っていろいろしないと‥‥」


「ケイトを‥‥助けてやっておくれ‥‥」


「明日の仕事に差し支えるから‥‥」


「だまらんかい!少しは話を聞け!!」





少しシーンとした。まさかいきなり私に対して婆さんが怒るなんて思いもよらなかった。


そしてその後の事だった。婆さんはさっき強い口調で発言した後、占い師定番の水晶だろうか?おまじないの仕草を行い、最後に両手を上に。そして大きく手を広げ私に何かを念じた、気がした。


「すまないねぇ、お兄さん。私達もここで引くわけには行かないからねぇ、とりあえず応急処置はさせてもらったよ。」


どうもこの婆さんと話すと先手を取られている気がするな。


それに応急処置って、さっきの両手の仕草か?


「お兄さん帰りな、急いでいるんだろ?」


「‥‥?、そうさせてもらうよ」


「すまなかったねぇ、また後でー」


決して逃げる様にではないが、素早く私はその場を立ち去った。

やれやれ、一体何だったんだ?少し予知能力がある占い師?いや、予知能力?そんな力、迷信であろう、きっと大腸癌を知っていたのも、病院関係者と何かコンタクトがあってこそだ。非現実な事が私の目の前で起きてたまるか!


しかし、その非現実な事はこの後直ぐに起きてしまうのだった。

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