台本『ブラックベイビー』~この台本が恥じある者への試練となる~
ちゃんちゃらめ
ベイビー誕生
先輩
「カケルく~ん、私あがるからこれやっといてくれる?」
SE:重めの紙束がドスン
主人公
「はい、やっておきます」
先輩
「じゃ、よろしくね」
SE:椅子を引く音
同期
「ミサキ先輩! 先週もそうやってカケルさん押し付けてましたよね!」
先輩
「あら、そうだった?」
同期
「そうです。カケルさんはこの2週間ずっと残業してます! なのに先輩は一度も残業してません!」
先輩
「じゃ~、私が残業すべきかどうかゲンジさんに聞いてみましょか?」
同期
「なっ、部長に聞くのは卑きょ……」
先輩
「ゲンジさ~ん、私は帰りたいと思うんですけど残業しないとダメですか?」
部長
「あー、みさき君か……そうだね、別に残らなくていいと思うよ」
同期
「そんなの……」
SE:ドアの音
後輩
「おつかれっす〜、もうシュレッターする紙は残って……みんなどうかしたっすか?」
先輩
「なんでもないわよ。ハナちゃんもシュレッター係、おつかれさま〜。また明日ね〜」
後輩
「お疲れ様っす〜」
同期
「あ、ちょっと待って……(SEドアの音)……ください(トーンダウンしていく)……」
後輩
「カケル先輩が忙しいんすか? なら自分が手伝うっすよ?」
主人公
「ハナちゃんに手伝えることは無いかな?……うん、先に帰って大丈夫だよ」
後輩
「そうっすか。じゃー、自分も先に上がるっす。あっ、自分が帰っても勝手にシュレッターを動かしちゃダメっすよ。それから、お掃除ロボットのお世話も自分の仕事っす、だから、もし動けなくなってたら自分に声掛けて欲しいっす。それじゃおつかれっす〜」
SE:走る音
部長
「あ〜、私も今日は妻と娘のご機嫌取りに外食するんだ。すまないが儂も先に上がらせてもらうよ」
同期
「部長まで……」
部長
「ま〜、カケル君は大丈夫だ。心配だと言うならマキ君も同期のよしみで一緒に頑張ってくれ」
同期
「そのつもりです!」
部長
「あっ、二人ともタイムカードを切るんだよ」
主人公・同期
「わかってます!!!」
部長
「そうか、じゃあ残業を頼んだよ」
SE:ドア音
【間】
SE:キーボードを叩く音
SE:デカ目のEnterキー叩く音
主人公
「ふぅーー、マキさん、そろそろ終電だし残りは俺がやっとくから先、帰りなよ」
同期
「良いんですか?まだ結構ありますよ」
主人公
「大丈夫。俺、車だし。それより、同期って理由でいっつもサビ残、手伝わせちゃって悪いな」
同期
「そう思うなら、断ってください」
主人公
「なかなか言い出せない環境だしな~」
同期
「そうやっていいように扱われるとだんだん精神がすり減っておかしくなりますよ。ミサキ先輩は、コネ入社だ!とか前は風俗で働いてた!って噂もあるし、……今日だって部長をいいように使って、絶対弱みを握られてますよ!!」
主人公
「まあまあ、先輩も繁忙期は一緒に残業してくれたしさ」
同期
「それはうちみたいなブラック企業じゃ当然です。何のフォローにもなってないんです」
SE:台パン
同期
「それじゃ、私は帰ります」
主人公
「うん、お疲れ様」
同期
「カケルさんも無理しないでちゃんと帰って寝てくださいね」
SE:ドアの閉まる音
SE:パソコンの音
主人公
「さて、後はこの資料を保存して……」
SE:キーボード叩く音
SE:エンターキー1回『ターーン』
主人公
「また、仕事引き受けて、ハナちゃんにも心配してもらって、マキさんには終電ギリギリまで助けて貰って……」
SE:心にひびが入る音
「いつかはハナちゃんにもパソコンを教えてみんなと同じ仕事をできるようになってもらいたいな〜」
SE:心にひびが入る音
「ミサキ先輩には何かご褒美をもらいたい」
SE:心にひびが入る音
「いつも手伝ってくれるマキさんには何かお礼をしたいな〜……なんて」
SE:心にひびが入る音
「でもやっぱり、ただそこにいるだけで喜ばれて、褒められて、守ってくれたり、優しく包み込んでくれたり……」
SE:ガラスにひびが入る音
「愛されるような、そんな存在に……」
主人公
「うう、ぐすん、すん、あばぅあ〜」
SE:完全に心が壊れた。高いところからグラスを落としたようなそんな音
主人公
「ああううぅ、あきゃきゃ。あぁああ、ううううぅぅ!
あぶあぶ、うぱぁぁぁ!!」
ダムが決壊したように泣きわめく。赤ちゃんモード全開!
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