第9話 奇跡

崖の上にあり花畑からは街の全体を見渡すことが出来た。

あの日から20年たった。

私はこの地を王様から褒美として受け取った。


そして、ミロと共にこの地に街を築いた。


今は子供たちと一緒に楽しく領地を発展させている。


「ミア!」


私が呼ぶと、ミアが手を振り返してくれた。

私達はあの日、ミアの願いを聞き入れなかった。

そして、ミアの魂が刻まれたマナ結晶から空のマナ結晶に移し替えた。

ミアの魂を修復するまでに長女と長男が生まれるほど時間が必要だった。


それでも、私達はやり遂げ、私たちの娘としてミアを産んだ。


ミアは何も覚えていない。

それでいいと私達は笑いあった。


ミアにもミミにもミリアンにも幸せになって欲しいから、精一杯愛してあげればそれでいいって思ってる。


「お母さん、どうしたの?お父さんは?」


「仕事押し付けてきちゃった!今日はミアとミミとショッピングしたい気分なの!」


「本当!嬉しい!ミミ姉さん呼ぶね!」


ミアが小さく呪文を唱える。

すぐにミミと連絡が取れたようで昼頃に喫茶店で会えることになった。


花畑で街を見下ろしているミアがあの時のミアと重なる。


「ミア!今幸せ?」


何故それを聞いたのかは分からない。しかし、口をついて出た質問。


「うん!とっても!」


満面の笑みでミアが振り返る。


「ありがとう、せいじょサマ!なんちゃって!」


その言葉に驚きと同時に私は涙を流した。


「あなたが幸せで、私も幸せよ!」


風に服が舞いあがる。

ネックレス加工したミアの形見の指輪が私の首元で鈍く光を反射する。


今日もとても楽しくて幸せな一日になる気がした。

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