おばさん聖女、隣国で継母となる〜偽の聖女と追放された、私の方が本物だと今更気づいて土下座されても遅い。可愛い義理の息子と、イケメン皇帝から溺愛されてるので〜

茨木野

第1話 国外追放

「セイコ・犀川さいかわ! おまえを国外追放とする!」


 ……はぁ? 国外追放、だと……?


 私の名前は犀川さいかわ 聖子せいこ

 3ぴー歳。


 ひょんなことから、異世界へと、聖女として召喚された。

 んで、異世界召喚から数年後。


 聖女として働いていた私に突きつけられたのは、【国外追放】。


「は? 何言ってるんすか……【バカデンス】殿下?」


 私に国外追放を言い渡した男……バカデンス殿下に向かって、にらみつけながら言う。


「いったいこの私が何をしたと?」

「本物の聖女である、【ブリコ・聖高原ひじりこうげん】に、嫌がらせをしていたのだろ!?」


 聖高原ひじりこうげん ブリコ。

 私と一緒に、聖女召喚された女だ。


 たしか10代だったと思う。

 ぶりっこ……もとい、ブリコはこのバカデンス王子の婚約者でもあった。


 つまり……。


「婚約者であり聖女でもある、ブリコを、私がいじめていた。だから、私を追い出すと? バカデンス王子?」

「そのとおりだ! ブリコは貴様と違って、本物の聖女! 祈るだけで結界を張り、怪我人をなおし、病魔を祓う……! 我が国にとって最重要人物だ! その彼女をいじめた罪は重い!」


 はぁ。

 何言ってんだこの節穴は……?


 ブリコがいつ、結界を張った?

 怪我人を治した?

 病魔を祓った?


 ……そもそも、いつ私がブリコをいじめたんだ?

 あ? ったく……。


「バカデンス王子、現場を実際に見たのかい? ブリコが聖女らしいことしてるとこ。そんで、私がブリコをいじめてるとこ」

「いや、見てない! 全てブリコから聞いた。セイコが自分をいじめるのだと!」


 はぁ、でしょうな。

 ほんっとバカな男。


「セイコ。貴様は聖女召喚に巻き込まれただけの一般人。聖なる力を持たぬ貴様を、この国に数年置いておいた恩義も忘れて、聖女をいじめた罪は重い! よって国外追放とする!」


 ……はぁ。

 なんだこいつ。


 一方的に私を異世界から呼び出しておいて、今度は追放?

 ふざけるなよ。


「悪いが拒否権はない。今日中に出て行かねば、貴様を罪人として扱う!」


 どうやら、お気に入りのぶりこをいじめたことで、私に対して、そうとうキレてるようだ。

 が、まあ……。


 キレてるのは、こっちもだ。

 勝手に呼び出して置いて? そのうえ『本物の聖女じゃない』からと放置し、最終的に出て行け、だぁ?


「何か言い残すことはあるか?」

「…………」


 あ゛ー……キレそう。

 だが、このバカにキレたところで、どうにもならないことは、この数年で良~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~く、知っている。


 こっちがどんだけ提案しても、その提案全て却下してきた。

 この国ヤバいよって言っても、聞く耳持たなかった。


 あげく、追放だ。

 ……もー、知らん!


「わかりましたよ、出て行くわ」


 私はきびすを返し、バカデンス王子の前から立ち去ろうとする。


「あ、そうそう、バカデンス殿下」


 くるっ、と私は振り返り、王子に言ってやる。


「私を追放するのって、【ユーノ】大臣には相談した?」

「? するわけないだろ。これはこのバカデンスが独断と偏見で決めたことだ」


 あーはいはい。

 そうですか、そうでしょうね。

 

 ユーノが知ったら、全力で止めてただろうし。

 うん。


「あともう一個。あのぶりっこ聖女のおつとめ、全部、私がやっていったって言ったんだけど。私がいなくなったら、おつとめできる人いなくなっちゃうけど、大丈夫かい?」


 聖女のおつとめ。

 聖女に課せられた仕事のことだ。


 結界。

 治癒。

 そして……浄化。これらを行えるのは、聖女の力を持つものだけ。


「はぁ? 何言ってるのだ、セイコ。おつとめはブリコがやっていたのだろう?」


 あー、だめだこりゃ。

 うん。


「わかった。んじゃ、忠告したからね。ばーい」


 私はバカデンス王子の元を去る。

 この国……終わったな……。

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