第2話「上空での戦い」


「この世でもっとも無駄なものは飛行機だと思います」

「そりゃあキミにとってはね。でも僕達は飛べないからさ」

「脆弱ですね」


 私達は今、空を飛ぶ飛行機の中にいました。

 軍事用ではなく一般用のありふれたもの。当然一般客も大量に乗っています。

 クラスはエコノミー。向かう先は――オベイロン。


 私の席は窓が見える右端で、中尉はその隣……といった感じ。

 今は軍服ではなくオーバーオールスカート。中尉は白いスーツを着ています。

 軍人だと周囲に示して怖がらせないようにするためです。


「ははは、でも従軍時に乗ったことぐらいあるだろう?」

「ええ、魔力節約のために」

「だったらおとなしく乗っているんだね。あ、そうだ。昼食は何にする?」

「何があるんですか?」


 やってきたキャビンアテンダントさんからメニューをもらい、中尉がそれを読み始めます。

 しかしすぐにそれを閉じ、自慢げにこう答えました。


「ビーフか、チキンだね」

「では中尉と同じものを」

「お、嬉しいね。どうして?」

「別のものを食べるより、毒が入ってる確率が少ないでしょう?」

「……………………ははは。ゲームでもするかい?」


 先日、私の日用品を中尉とともに購入しました。

 ろくに関わったこなかった娯楽用品などもです。軍の規定ではなるべく与えないようになっているのですが。

 妙な思想に目覚められたら困りますからね。


 とはいえ、私は与えられる側。貰えるならばやるだけの話。

 頂いたのは戦略的な要素の大きいストラテジーゲームでした。


 ゲームハードは長方形の携帯機。テレビに繋げたり、折り畳めたりできるのが便利です。

 ふふ……。自分の軍を成長させ、敵軍を蹂躙していくのはたぎりますね。


「楽しいかい?」

「ええ、なかなか興味深いです。他のジャンルもやってみたいですね。もちろんこのソフトをやり込んでからですが……。中尉は何をなさっておられるんですか?」

「魔法少女はニュースを見ないのかい?」


 中尉はどうやらカードのような携帯端末で、世間のニュースを確認しているようです。


「あまり見せられたことはありませんね」

「だろうね。世間事情に詳しい魔法少女というのは扱いにくいものだから」


 だから社会のことなど教えないのが操縦者ドライバーの定石――と中尉は言います。


「そういう感性が、彼女達をダメにしていくんだ」

 と言って、携帯端末を渡されました。私はゲームがしたいのですが。

 正直世間などに興味はありません。

 誰がどうなろうと私には関係ない――おっと、ふむふむ。


「中尉、魔女宗マレフィキウムとはなんなのでしょう?」

「二十歳になり力を失った魔法少女達。軍から追放された彼女らが作り上げた――魔法少女テロリズム。その代表的な組織の名前さ」


 魔法少女はなぜか二十歳になると力を失います。

 そもそもなぜ魔法少女が生まれてくるかわかっていません。

 完全に先天的なもので、神の贈り物だの何だのと言われているぐらいです。


「元・魔法少女の集まりってことですか」

「ああ、彼女らの恐ろしいところは――次世代の魔法少女を手に入れて、テロに使用していることだ。それに政府や軍、さまざまな団体とつながりがあると言われている」

「魔法少女の力を……、テロに……」

「僕の思想からは外れている。魔法少女の本質は光だ」

「と言いますと?」


「魔法少女は人々を恐れさせ、傷つけるための力じゃない」

 顔をしかめてそう言う中尉。なにか嫌な思い出があるようです。

「中尉は理想家なのですね。ゆえに手段を選ぶ。それも相当トンチキな手段を」

「魔法少女をアイドルにするのがそんなに間違っているかな?」

「なにも私でやらなくても」


 はぁ。憂鬱になってきました。ゲームに専念しましょう。

 そう思って携帯端末を中尉に返し、再びゲーム画面に目を向けます。

 今やっているストラテジーゲーム『戦国シルヴァ』は攻撃時に戦闘アニメがあるのですが、この和刀というのは格好いいですね。


 特に『居合』という剣術がめちゃくちゃにかっこいいです。

 ちょっと真似したくなりますね、ふふふ……。

 などと遊んでいるとどこか懐かしい気配を後方から感じました。

 戦場で何度も体験したあの気配と同じです。

 すぐさま中尉の裾を引っ張り、話しかけました。


「中尉、中尉、魔法の気配です」

「え? わかるのかい?」

「私達は魔力をレーダー代わりにもしています。人一倍魔法の発動には敏感なのです」

「それは知ってるが……、誰かが魔力弾を撃ったわけでもないんだろう?」


 魔力弾とは魔法少女の基本的な魔法の一つです。

 魔力を扱うものであれば、誰かが一発撃てばすぐさまわかると思います。

 もちろん今の反応はそんな大きなものではありません。


「たしかに微弱な反応でしたが、私ならわかります」

「すさまじいな……」

「確認しにいってもよろしいでしょうか?」

「誰かが機内で魔法を使ったということだね。わかった、ついていこう。案内してくれ

 そう言うと、中尉が席から立ち上がりました。私も合わせて立ち上がります。

「中尉は後をついてきてください。攻撃されても私はシールドを展開できますので」


 シールド。これも魔法少女の基本的な魔法の一つです。

 シールドが使えなければ魔法少女でないとすら言われているほどです。


 個体によって、発動出来る強度や範囲の差が存在しますが……。

 シールドが突破された時が魔法少女の死ぬときとすら言われています。


「女の子を盾にするのは業腹なんだがね」

「中尉では盾にもならんということです」

「…………僕も魔力がほしいね」


 さて、魔法の気配は……。

 ここから後方で魔法を使ってもばれないとなると、トイレですかね。

 悲鳴が上がってないということは、攻撃性のあるものではないでしょう。


 仲間を武装させるための構築魔法だと思われます。

 文字通り実在する物品を構築する魔法です。


 もちろん形作った魔力が尽きれば、その物品も消滅してしまいますが。

 それでもかなり便利な魔法であることには違いありません。


「中尉」


 私は魔法を掌に集中させ、脳内のイメージをそこに構築しました。

 見た目はただのバナナ。しかしちゃんと引き金がついています。これが構築魔法です。


「既に敵が武装している可能性があります。戦闘はすぐにでも起きるでしょう」

 バナナを中尉に手渡しました。

「装備しておいてください」

 中尉が小首をかしげます。


「……バナナをかね?」

「引き金を引けば、非殺傷性の魔力弾が撃てます。跳弾や誤射を気にせず済むでしょう」

「それはわかるけど、なんでバナナなんだい?」

「実銃っぽくすると乗客に怖がられますから」

「いやはや……。本当に僕も魔法少女になろうかなぁ」

「きっと可愛い魔法少女になれますよ、中尉なら」


 欠片も思っていないことを言いながら、機内の通路を進んでいると――。

 廊下からガスマスクをつけた連中が五名ほど現れました。


 内、二人はその中でも異様な格好です。

 一人はドクロの覆面をした黒コートの男……。いや性別も微妙なところですね。

 一人は眼帯をしたゴシック風ドレスの少女。


 右腕と右足がなんかメタリックだし、緑と黒の髪色が混ざったツインテールが本当に異様です。

 魔法少女は魔力の影響か、髪色のバリエーションが多いと聞きますが……。

 まぁ、染めただけかもしれませんけど。


「動くな、おまえたち!」


 ドクロがアサルトライフルを上空に掲げたかと思うと、勢いよく連射しました。

 危ないな、と思いつつ天井を見てみると穴は空いていません。

 アサルトライフルの貫通力ならば穴ぐらい空きそうなものですが。

 やはり魔法で構築したものでしょうか。

 それなら中尉に渡したバナナとさほど変わらないはずです。


「このジェット機は我々魔女宗マレフィキウムが制圧した!」

「中尉、どうします?」

「犠牲なしに制圧できるかい? 無理なら何もしなくてもいい」

「と言われましてもねぇ……」

「そこの娘! 何をしている!」


 ほら、廊下のど真ん中に立ってるから気づかれちゃいました。

 こんなことなら見に来なきゃよかった。まぁいいでしょう。どうせ、コイツらの目的は……。


「何をしているもなにも……。わざわざ来てあげたんですよ。探すの面倒だろうから」

「なにっ!?」

「だって目的は私でしょ?」


 それ以外にこんな飛行機をハイジャックする価値があるとは思えませんからね。


「なにを言っている!?」

「んあ? 把握してないんですか? 私を」

 思わず中尉の方を向き直りました。


「中尉……、もしかしてこの飛行機、私以外になにか積んでますか」

「質問の意図がわからない。目の前の敵に集中したほうが良いと思うよ」

「…………とんだ食わせ物ですね、あなたも」

「何をグズグズ喋っている! いいからおまえら廊下に跪け!」


 面倒くさいと思いましたが、被害を出すわけにはいきません。

 …………やるなら速攻。

 私は地面を勢いよく蹴り、ごく僅かな距離を飛びました。

 もちろん魔力の推進力による飛翔です。

 そのまま対人魔法四式を、前方にいたガスマスクに浴びせました。

 俗称「ライトブレード」。

 手刀から発せられる光刃は神経を酩酊させ、たとえ低威力でも一撃で気絶させることができます。

 もちろん胸部や頭部、首などの急所を狙う必要がありますが。


「が、あぁああああああ!?」

 前方に崩れ落ちるガスマスクを踏み台にして、ライトブレードを延長。

 後方にいる四人にも斬りかかります。

「――――ふんっ」


 ですが、ドクロが展開したシールドによって防がれてしまいました。

 赤く発光する魔法陣。あれがシールドです。

 それを発動したように見えるドクロが、ガスマスク達の装備を作り出した魔法少女なのでしょうか。


「魔法少女……、だと?」

 訝しげに首を傾げるドクロ。

 しかし周りのガスマスク達の様子が少しおかしいです。


「撃て! 撃てぇ!!」

 そう言って発砲してきました。周りには乗客もいるのに正気でしょうか。

 いえ、魔法少女が敵だとわかり興奮しているのでしょう。

 このままだと私のせいで被害が出てしまいますね。困った……。


「ふんっ」


 青く発光する魔法陣が銃撃を弾きます。

 私もシールドを展開して、発砲を防ぐことができたということです。

 やはり大した威力のない魔力弾のようですね。

 これなら乗客すべてを守ることが出来そうです。さて、次は簡単なシールドでは防げませんよ……。


「エーラ、飛べ。飛行機ごと落としてしまえ」

「でも……」

「後で回収すれば済むことだ」

「……了解したわ」


 おっと、何やら悪巧みですか。そうはさせませんよ。

 今度はシールドすら貫く高威力のライトブレードで斬りかかります。

 ドクロの顔を両断してやりました。


「…………からっぽ?」

 中身がありません。遠隔操作……ということでしょうか。

 ですが、バラバラにしてしまえば、ひとまず動けないはずです。


「ひ、ひぃいいいいいいいいいい!!」

「同胞殺しがぁああああああ!!」

 残ったガスマスク二人が、私にアサルトライフルを向けました。

「シアンくん!」


 ……が、一人が何発か銃撃されて倒れます。中尉がバナナを構えていました。

 そのままもう一人を、中尉が直々に肉弾戦で抑え込みます。

 バリツというやつでしょうか。軍の教育プログラムにもありました。

 なかなかやりますね。


 ―――ですが、そんな展開をよそに巻き起こる轟音と爆風。

 緑&黒髪の子が、飛行機の壁をぶち抜いたようです。

 そんなことをすれば、外とのとんでもない気圧差で色々大変な事になるでしょうが、そこは魔法少女。風穴にも緑の魔法陣が貼り付けられています。

 彼女はそこから飛び出していきました。


 シールドは防御する対象を選ぶことができるので、それ以外はすり抜けることも可能なのです。コーヒーメーカーのフィルターみたいですね。

 もちろん飛び出した後は、彼女にとって不要の長物ですので消えてしまいます。

 代わりに私が蒼い魔法陣を展開しておきました。


「シアンくん! 飛びたまえ! さっきの子はこの機ごと落とすつもりだ!」

「言われなくとも!」


 風穴が空いた飛行機の壁。

 いくら出入り口になっている部位とは言え、決して脆弱な威力ではないでしょう。

 そんな風穴を開けられる魔法少女ならば、数秒でエンジン部を破壊できるはずです。


「シアン・ウェルテクス――行きます!」


 そう言って、飛行機から飛び出すと、外は雲の海。

 突然襲われた時に発動するよう設定していたシールドが発生しています。

 そういえば何かを忘れて……。おっと、さっさと装備を展開しましょう。


「構築魔法、展開」


 シールドドレス構築完了。

 海よりも蒼いこのコートが私の戦闘衣装です。

 これで寒さやら高速飛行の衝撃やら諸々を95%以上防ぐことが出来ます。

 シールドのちょっとした応用ですね。腰部ホバー構築完了。翼のようなホバーです。

 別にこれがなくても飛べますが、速度がけっこう異なってきます。


 リリカルマジカルアンチマテリアルライフル――構成完了。

 リリカルでマジカルなアンチマテリアルライフルです。こう呼ぶのは私一人しかいません。

 そもそも構築する人も少ないです。可愛いのに……。

 ホバーから魔力を噴出し、飛翔魔法を起動させる。


 よし、一年ぶりなのに感覚はさほど変わりありません。

 目の前には――さきほどの緑&黒髪の子。どうやら私を待っていたようです。


「思い出したよ。アンタさぁ……。蒼天の魔女でしょ?」

 おやおや通信魔法。どうやら本当に私と話したいみたいですね。


「ほう、私の二つ名を知ってるってことは。知り合いですか?」

 蒼天の魔女。第二次魔法少女大戦ワルプスギスで呼ばれるようになった二つ名です。

 理由は知りませんけどね。


「スカしてんねぇ! エーラ・ヴィヴァーチェ! アンタの部隊にいた女さ!」

「申し訳ありません。戦時中はかなりボケーッと生きていたので……。なにか思い出深いエピソードでもあったりしませんか?」

「この右半身! 敵に吹き飛ばされて墜落した時にアンタがアタシを回収したッッ!」

「ああ……」


 まぁまぁ覚えがあります。かなり痛ましい怪我だったので。

 髪色で気づけよという話ですが、魔法少女は彼女みたいなド派手な髪色ばかりだったので、逆に記憶に残りませんでしたね。

 しかしそうなると、彼女にとって私は恩人なのでは……。


「無事、社会復帰できたようで何よりです」

「ほざくなッッ! アンタがもうちょっと上手く立ち回ってりゃ、アタシはこんな怪我せずに済んだんだッッ!」

「自分の実力不足で喚かれても困ります。そもそも指揮をとったのは私ではありませんし……、文句なら軍部か敵に言うべきでは?」

「だから魔女宗マレフィキウムなんてやってるのさッッ!」

「社会復帰は失敗したようですね」

「ふざけんなッッ! アタシが社会だッッ!」

「では私の敵です」


 エーラが右手にガトリング砲を構築しました。

 ちょっとまずいですね。あれから飛行機を守れということですか。

 案の定、ガトリングを飛行機に向けて発砲し出しました。

 次々と撃ち出される緑色の光弾。すかさず飛行機に対して、シールドを展開します。

 広がる魔法陣。撃たれた場所から弾ける青色の閃光。

 私のシールドが光弾を防いでいる証拠です。


「ハッハァ! いくら蒼天の魔女様でもそんなデカブツ守護りながらヤレんのかよ!?」

「心外ですね。出来ないと思ってたんですか?」

「無理だろッッ! 部下も守れない雑魚じゃなァ!」

「…………あなたが帝国の戦乙女ヴァルキリー部隊と一緒なわけないでしょ」


 帝国――。北方にある大国です。

 そこの魔法少女達。中でも精鋭が戦乙女ヴァルキリー部隊。

 あれと戦った時は私でも死ぬかと思いましたね。


 さてと。ムカついたので、とりあえずライフルで一発。

 ライフルから放たれるのは弾ではなく、銃口から長々と続く極太ビームです。

 それを数本撃ち出しましたが、見事に避けられました。

 まぁ牽制にはなったんじゃないでしょうか。


 ……少し距離を詰めますか。飛翔にはやや自信があります。

 向こうも私の狙いに勘付いたのか飛行機をガトリングで撃ちながら、飛行機の上へと飛んでいきます。

 ぐるぐると飛行機周辺を旋回して、私に撃たせないつもりでしょう。

 ふむ、どうするか……。いや、良いことを思いつきました。


 私は飛行機に接触し、その上を走り出しました。

 当然旋回するのならば、コーナーが短い者が勝ちますからね。

 加えて飛翔のための魔力を前進に向けられます。


「どこ走ってやがるッッ!?」

「飛行機の上ですが?」


 そのままライフルをエーラに向けて射撃。しかしなかなか当たりません。

 射撃下手なのかな、私……。それともやはり一年のブランクがあるのか。


 エーラもガトリングを私に向けて発砲してきます。

 おかげでシールドで防ぐ箇所が減る分、飛行機を狙われるより防御が楽になりました。

 さて――一足先に飛行機から飛び降りますか。


 そのまま、同じように飛び出してきたエーラを下方から狙い撃ちにしました。

 これはエーラも予想外だったようで、緑色の閃光が弾き飛びました。

 エーラのシールドがビームを弾いた証拠です。


「アンタ……、ふざけてるッッ!」

 そのままエーラがガトリングを向けてきました。しかし私はあえて急上昇。

 エーラに近づくためです。


「なんですって……!?」

「終わりです」


 ちょうどエーラと高低差が入れ替わった最中。

 手が届くほどの至近距離からビームを撃ち出しました。

「がぁああああああああ!!」


 どうやらシールドで防ぎきれなかったようですね。

 魔力弾はライトブレードと同じように、直撃すれば神経が酩酊します。……終わりです。

 そのまま落下していきましたし――、命はないでしょう。

 一応回収するべきか中尉確認しますか。通信魔法……、索敵、中尉……っと。

 おっと、魂の反応を見つけました。当然のことですが、機内にいるようです。


「中尉、魔女宗マレフィキウムエラトマ・ヴィヴァーチェを撃墜しました」

『うわっ!? ……って、なんだ。シエロくんか。彼女は死んだのか?』

「今から回収すれば生きてるでしょうが……」

『そうも言っていられない。先程のドクロマスクの男。中身がなかっただろう?』


「ええ、驚きました」

『魔法少女が動かしていたはずだ。そしてここは上空一万メートル前後の飛行機の中だ』

「つまり……?」


『外部から遠隔操作できるはずも、それにキミが気づかないはずもない。まだ機内に魔法少女 が潜伏している可能性が高いということさ』

「……確かにそうなりますね」

『そうなると僕だけでは対処できない。戻ってきてくれ』

「中尉なら何があっても助けろと命じるのかと」

『僕だって現実と夢想の区別ぐらい付いてるさ。キミ達と違って凡人だからね』


「…………まぁいいでしょう」

 いつ目覚めるかわからない魔法少女を拘束しながら、他の魔法少女を討伐するなんてこと……、中尉と二人きりでは土台無理なことです。中尉の判断は間違っていません。


「しかし中尉、何を隠しているんです? エラトマ・ヴィヴァーチェは前線から外されたと言っても魔法少女です。身分を証明する操縦者ドライバーもなしに飛行機に乗れるとは思えませんが」

『何かしらの手引きがあったって言いたいのかい?』

「そうなりますね。中尉の隠し事次第ですが」


『すまないが、その話はまた後でしよう。最優先事項は何だと思う?』

「中尉の身を守ることですか」

『人々を守ることだ』

「それが魔法少女の本質……ですか」


 たしかにこんなところで――。

 下手したら傍受されかねない通信魔法を使って話すことではありません。

 機内に戻るとしましょう。

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