第19話 秋谷という男

「なるほど。ファミリーに入ってお前直々に調査をするのか?」

 俺の問いに対し秋谷は何度か頷く。

「まあ、そんなところですね。取り敢えず私がファミリーに入って様子を伺います。まあ、そうですね。他にも色々と調べたい事もありますので」

「........なあ、そもそも俺はお前を信用して良いのか?」

「なぁに、心配なさらないでください。余計な事はしませんよ。別に貴方の恋仲を邪魔する訳でもないですから」

 秋谷は深みを持たせた表情で目を細める。俺は余計な事を言われたので恐らく不屈そうな表情をしていたであろう。

「恋仲だと?」

「あれれ、無自覚なんですか?てっきり二人は付き合ってるのかと」

「何のことだ」

「なるほど、鈍感と......じゃあ私が狙っちゃいましょうか」

 秋谷はキメ顔でコチラを見つめた。お互いしばらく黙り緊迫した空気がこの場に広がったのだ。先に耐えかねた秋谷がにやけながら釈明する。腹が立つ野郎だ。

「ははは、冗談ですよ。そんなことをしたら、貴方にボコボコにされてしまいます。それに、私の好みは高身長の巨乳なので。」

 さらっと好みを暴露しやがった。なかなか高望みだな。何故なら秋谷の身長は150cm程なのだから。やはり人間、足りないモノを補おうとする性質があるから、高身長女子の方が好きなんだろうな。ただ、条件だけを考えると身近にコイツの理想郷がいたのだ。

「ほーん。なら、ちょうどいいな。」

「ん?どう言う事でしょうか」

「えっとだな、お前が今入ろうとしているブラッドファミリーにちょうどいい条件のやつがいるだが。」

 俺がそう告げると間抜けな事に秋谷は食いついた。

「誰ですか!?そんな方が貴方の身近にいるなんて、羨ましい限りです」

「そうだな、名前は大塚って、奴なんだけどな。まあ、今度ついでに紹介してやるよ」

 俺は単なるジョークで言ったつもりだったが、馬鹿と天才は紙一重とも言うし、案外お似合いなのかもしれない。実際、大塚も頭の出来以外は割とスペックは悪くないけど、身長は178cmで、一応巨乳ではあるしな。ただ大塚の好みは知らないけどな。

「流石は、助手さんですね。ふふ、私の見込みは間違ってなかった!!」

 コーヒーの缶をゴミ箱にポイッと投げ、すぐさま俺の手を取りブンブンと振り回す。天才ではあるが、アホだコイツ。こんな事でルンルンになるなんて、ただの一般的な高校男子と変わらないじゃないか。いつもは済ました顔で天才ムーブをかましていても、現実では意外とムッツリスケベだったのか。俺はギャップとやらに果たして入るのだろうか?

「ふふふ。では、次は拠点で会いましょう」

 秋谷は話を終えると満足そうにスタスタと先に教室に戻っていった。結局、変なやつに目をつけられる事になってしまったのではないだろうか。アイツはセカイ改変能力の調査がなんとかだと言っていたが、実は普通にブラッドファミリーに加入したかっただけでは無いのか?俺はかつてアイツがあんなに笑顔なところは見た事がなかった。

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