第28話 新たな拠点

「うわああ!!どうしたんですか?これ!!」

 橋田はいつもに増してテンションが高い。そう、何を隠そうと前回の俺たちの活躍により、学校からブラッドファミリーの正式な部活への認定を受け、なんと部室を借りる事になったのだ。前々から交渉しようかと企んでは居たのだが、良い機会であった。これにより、この謎の活動【同好会】は学校公認の恐ろしいものになってしまっていたのだ。もしも、就職などで高校生活の事を聞かれることがあるならば、俺は恐らく良い風に言葉を変えるであろう。

「岡部さんに頼んでな。あんまり広くは無いけど、これで移動する暇が省けるだろう。」

「ハハッ、そういう事ですか。流石は我が助手。助手なりの身の振り方もわかってきたようですね。銅メダルをあげましょう」

 金メダルをくれよ。

「わぁ、凄いですね。この部屋は6畳ほどあるのでは無いでしょうか?」

「おお、凄いな。なるほどなー。.......ところで塚部。6畳って何畳だ?」

 嘘だろ。なぁ、頼むから嘘だと言ってくれ。大塚。

「シロネさん。大塚に難しい言葉を使わないでやってくれ。数字なんて出したらコイツの頭がパンクする。」

「あはは.......分かりました」

 シロネさんですら引き気味であった。大塚を見ていると、教養って大事なんだなとしみじみ思う。

「流石ですね。私が見込んだ甲斐がありました。」

 缶コーヒー片手にひょこっと現れたのは秋谷であった。因みに、面倒な申請手続きとやらは俺にはよくわからないので秋谷に頼んだ。沢山の書類と睨めっこし、だいぶ時間がかかっていたので凄くありがたいことだ。

 俺は家に帰ったけど。

「申請の代行、高くつきますよ。」

 秋谷はメガネをくいっとしながらニヤニヤしてそう言った。

「わかったよ、さすがにコーヒーぐらいは奢ってやるよ。」

「流石ですね。よろしくお願いしますよ」

 秋谷は満足そうに微笑み備品の席に座る。


「と、言うわけで。備品代と言って学校から1万円ほど予算をくれたので今日はそれを決めよう」

「ちょっと、待ってください」

 橋田は俺の言葉を遮り少々乱暴にイチャモンをつけてきた。

「助手の癖に勝手に話を進めないでください。ぷいぷいぷい。」

 我がリーダー様がお怒りだ。俺は発言権を橋田に譲った。

「わかったよ。進めてくれ」

「ふん、という訳で《第五十七回円卓会議》を開始します。」

 多分五十回分以上は詐称しているだろう。そんなに会議をした記憶などさらさら無い。

「皆皆が欲しいものを挙げよ!!」

 皆がひとまず悩んだ様子で沈黙する。しかし、この空間に耐えかねた橋田は名指しで要望を聞くことにしたようだ。

「じゃあまず、シロネ!!」

「えっ、私ですか?そうですねー。うーん。」

 いきなり当てられたものだからかなり悩んでいる様子だ。

「あっ、お茶とかコーヒーが飲めるように電気ポットは如何でしょう?」

「なるほど、いい案ですね。コーヒーが飲めるのは魅力的だと。」

「飲み放題か!?」

 なくなったら終わりだバカ。

「では、一つ目は電気ポットと言うわけで。まあ、大体二千円程度でしょう」

「では、秋谷くん。次の案をください!!」

「そうですねー。では、棚がいいと思います。最近図書室でたくさんの廃棄の本が出るそうなので、そこに保管しておきたいですね。」

「私は反対だ!!」

 大塚が珍しく手をあげて拒否する。

「活字なんて見たら、眠くなってしまう。」

「大塚さん、別に強制読書ってわけじゃ無いから大丈夫だよ」

 シロネさんはバカのために懇切丁寧に説明した。

「え、そうなのか?じゃあ決めても大丈夫だ。」

「わかりました。棚は3000円くらいですね。」

「じゃあ次は大塚!!」

「私の番か.....」

 ニヤニヤしていて何かを企んでいる気がする。変な要求するなよ。

「ふふふ、変なものは要求しない。甲冑とどっちにするか悩んだけどね。」

 ちょっとまて、甲冑ってなんだ。ねえ、甲冑買おうとしたの?

「そうだな、ずばり、ハンガーラックがいるとおもうのだ。」

「ちょっとまて、なぜにハンガーラックなのだ?」

「忘れたのか?塚部。前回の勉強会での罰ゲームを」

 そういえばあったな。罰ゲーム制度。あんときのコスプレの破壊力はずごかったな。恥じらうシロネさん、屈辱的なまなざしを向ける、橋田。いやはや、まるで楽園のような光景であったな。なるほど、やはりは一流のバカ。抑えるところはわかっている。

「さすが、わかってるな」

「だろ?」

 共鳴しあう俺たちをシロネさんと橋田さんは、まるで飛び回るハエを見るかの如く見つめていた。

「バカですね……まあ、いいですけど。予算は大体4000円ですね。」

「じゃあ、残りは1000円か。橋田は何が欲しいんだ?」

「私は、特に欲しいものがないので……」

「意外ですねー。」

 シロネさんは不思議そうにしえいた。

「しいて言うなら世界、ですな。ということで、この1000円の権利をあなたに譲ります。」

「そうだな、まだ考えてないな。」

「じゃあ、買い出しついでに買ってきてくださいね。」

「え、買い出し係は俺なのか。」

「ふ、安心してください。我はブラッドファミリー創設者であり、リーダー。普通にみんなで行きますよ。人数は多いほうがいいですからね」

 どうやら冗談だったようだ。

「なら、最初から素直にそう言ってくれ」

 と、言うわけで俺たちブラッドファミリーは備品の買い出しに奮闘する事になったのであった。ちなみに土曜日に近場のイオンに行くらしい。

 さてさて、大変な休日が来るまでに、残り千円のつかい道を後々考えていくことにしよう。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る