第10話 カゲなる銃口
迫りゆくカゲ、走る俺たち、燃ゆる太陽、全てが敵に見えた。
カゲとやらは俺たちをいつまでも追いかけてきて、俺達は商店街を疾走している。我を忘れる程には必死だったであろう。
「大塚!!どうすれば良い?」
「取り敢えず、港に行こう。港なら人気が居ないから港に行こう!!」
長い長い商店街。港まではおおよそ2km程度。俺たちは何よりも体力の限界を迎えていた。
ただおかしい。こんなカゲが迫っているのにも関わらず、周りの人々は反応がない。もしかして、俺たち以外見えてないのか?
「塚部!!」
「俺は璃だ!!」
「そんなことはどうでも良い。それよりも頼みたい事がある。」
大塚はいつにも増して深刻な顔立ちで告げる。
「なんだ?」
「私がカゲを食い止めておく。その間に、先に港に行っておいてくれ。そして、橋田とシロネを電話で集めてくれ!!『緊急事態』だと。」
大塚は自己犠牲の精神で俺にその作戦を伝える。
「ああ、分かった。また、会おう。」
「頼むよ!!」
俺は大塚の助言を素直に聞き、一人走り出した。ただただ、無我夢中に。
商店街を真っ直ぐ突き抜け、俺は無事に港に着く事ができた。港には幸いな事に一般人は居なかった。
そして、俺はいつのまにか入れられていた謎のグループLINEに招集の旨を送った。
「橋田、シロネさん、今すぐ港に来てくれ。」
すると、僅か15分足らずで2人を集める事ができた。
「どうした?我たちをわざわざ呼んで。」
「大塚に言われたんだ。『緊急事態』だと。」
「!?」
「!?」
橋田とシロネさんは分かりやすく驚いたリアクションをとった。
「本当ですか?」
「はい」
「.....」
橋田はこんな時もニヤリと笑い、宣言する。
「戦うしか無いようだな。」
「えっ!?」
「カゲの異常発生とやらだな?我たちの闇の力を使用する時が来たみたいだな」
やばい、この子。凄くやる気満々になっている。てっきり少しは怯むと思っていたんだがな。
「戦うって、あのカゲにどうやって。」
「その点は大丈夫だ。璃には武器が必要になるだろう?だから魔法で出しておくよ。」
そういう事を聞いたのでは無いんだが。
「どっちが良い?拳銃か、鎖帷子。」
二択になっているのか?
「圧倒的に拳銃だわ。誰が鎖帷子使うんだよ。武器ですらないしただの装備だよ」
「もしくは、トンファーでも可」
「今どきトンファーを扱える人も早々にいないと思うけどな」
「皆さん、もうお見えしたみたいです。」
カゲが既にそこまで迫ってきた。そして、平面化していた影は立体的になった。
「行きますよ、我が同志たちよ」
橋田がそう高らかに宣言すると立体化した影はまたもや右往左往しながら、迫ってくる。まるで虫のようだ。俺は構わず手に持っていた拳銃の引き金を引いていた。
大きな反動が来たのち、俺は思わず吹き飛ばされたように後ろに倒れる。俺は自分の腰の心配をしながらもまた立ち上がった。
そして一発の銃弾はカゲの中央にへと当たり、カゲは黒い何かを散らしていきながらその姿を消した。
「やるじゃ無いですか!!流石我が助手。」
なんだろう。俺はこの戦闘に楽しさを覚えかけていた。この高揚感。達成感。
そこからは無我夢中に俺は弾丸を放っていた。何度も、何度も、何度も。
そして、多数いたカゲ達は概ね討伐する事ができ、残るは一匹のみだ。
「コイツで、最後か。」
「ええ、終わらせましょうか」
そう言うとシロネさんの腕が変化した。それは、ニンゲンの腕から機械らしいメカニックな銃の腕にへと変わっていた。俺は我が目を疑った。
そして、シロネさんはその武器で弾をぶっ放す。
最後のカゲは木っ端微塵になり、俺たちは目標を達成した。
「やりましたね。ふっふっふっ、流石我が組織の絆ですね。」
そう言う橋田だったが、気を抜いていたのだろう。背後から少し大きめのカゲが迫っていた。
「危ない!!愛菜!!」
俺は全力で橋田の元へと走り、橋田を片手でコチラに引き寄せる。そして、俺は後ろに倒れながら銃弾を放った。
銃声が響く中、俺は天を見ていた。
「大丈夫ですか?お二人!!」
「ええ、なんとか......我が助手が居たおかげで。」
橋田は俺に無邪気な笑顔を見せた。その可愛い目に可愛い笑顔.....反則だぜ。
俺たちは互いにグッドサインを送り合った。
「おーい、お前たちー!!」
遠くから聞き馴染みの声が聞こえた。どうやらバカも帰ってきたらしい。
「凄いな、あんなたくさんの影をぶっ倒すなんて。」
「お前こそ、よく無事だったな」
「ああ、なんかよくわからないが上手く行った。」
よくわからないってなんだよ。あれか、キレると記憶が変えるタイプの恐ろしいやつなのか?
「皆さんが無事で良かったです」
「ああ、本当にな。」
俺たちは脅威が去ったことに対して安堵した。肩の力が抜けるってやつだ。ただやはり疑問は残る。
「それにしても、あのカゲ達はなんなんだ?」
「あれは、人の心の闇から生まれるカゲだ。強い闇を感じたものから発せられる、つまり怪異だ。」
今度は怪異とやらか。この世界は俺の知らないことだらけだな。ここ数十年生きていて初めて感じることばかり。
「では、本日の活動はここまでだ!!明日、放課後に緊急会議を行う。では、解散!!また明日!!」
「うん、また明日。」
「気をつけて帰ってくださいね。」
各々がそう宣告すると俺たちは現地で解散し、帰路に向かった。皆が手を振り合い今日の別れを告げる。
去り際、橋田の顔が少し暗かったような気がした。
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