ラッパー異世界転生(仮)

@deathketu

第1話 1

転生者は金になる。


異世界から転がり込む「ついで」と言わんばかりに、特異で、かつ有用な能力を付与されてくる場合もあるし、異世界から知識、経験というカタチで外の概念を持ち込んでくる場合もある。


或いは、その両方。


いずれにせよ、

君達は値千金の……例えば貴族だとかにとっては、喉から手が出るほどの価値がある。

もっと言えば、君達の存在は、他の命の価値を相対的に著しく、下落させうるモノだ。


……気分を害したのならすまない。

なにも、君達が悪いといっているわけではないんだ。もっとも、自らの意思で力と知恵を濫用し、この世界を蹂躙、もしくは暗躍しようという転生者が過去いなかったわけではないが、それは別の話で、君達の存在はその内心によらず、野放しにすればこの世界をドラスティックに変え過ぎるし、それを利用しようという悪意ある者たちにとってあまりに魅力的過ぎる。


……すまない。冗長過ぎた。

話を急ごう。

私達は【点描】転生者の保護収容或いは処分、そしてそれを通じ、世界の平穏を維持することを目的とした、連邦直属の武力組織だ。

今、君は、連邦条約、転生者管理法に基づいて身柄を拘束されている。

これは転生者を"保護"する為の措置であり君の生命を脅かすものではないことを保証する。


しかしながら、少々、いや、正直なトコロ異例づくめの"ケース"であり、結論を言うと、

君にはこの世界における「人権」が適用されていない。


便宜上、暫定的に、転生者として扱っているに過ぎず、君のような存在はいま現在、定義されていないんだよ。


肉体を伴った転生と違い、

元の世界で死に、魂だけが転生するパターンがある。

君の場合はこちらに近いのだが、


厄介極まりないことにその肉体は、

【点描】のもっとも危惧するところである、異世界概念の濫用によって"造られている"

禁忌を何重にも犯し錬成培養された空の入れ物。虚の人体だ。

異世界から漂流してきたファンタジーに準え、ホムンクルスとでも呼称しようか。

ホムンクルスを器とした転生者は前例がない。だから、今現在の君は、現行法の範囲内では、宙ぶらりんの存在として扱うほかない。

君はおそらく、転生者を量産する闇ビジネスの実験台として召喚された、この世界で最初の被害者だ。

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