第3話 悪夢

その夜、陽介は一つの悪夢にうなされた。彼は夢の中で実際にお化けになってしまい、周りから石を投げられる恐怖を味わっていた。彼が逃げようとするたびに、足が重く、動かない。声を上げようとしても、出てくるのはか細い吐息だけ。彼は自分が本当に世界から拒絶されていると感じ、絶望の淵に立たされた。


目が覚めたとき、陽介の枕は汗で濡れていた。彼は深く息を吸い、現実に戻ってきたことを感じながら、自分の部屋の安全を確認した。しかし、その悪夢はただの夢ではなく、彼の現実の恐れと不安が形を変えたものだった。彼は自分が孤立無援であり、常に他人の目を気にして生きていることに気づき、深く傷ついていた。


学校に向かう道すがら、陽介は自分が夢で感じた恐怖を振り払おうとしたが、うまくいかなかった。校門をくぐると、彼の心は再び重く沈んだ。しかし、その日はいつもと違っていた。彼は自分の中に新たな感情を感じ取っていた。それは恐怖や不安だけではなく、何かを変えたいという小さな希望の光だった。


授業中、陽介は教師の話に集中しようと努力したが、彼の心は悪夢の影響をまだ引きずっていた。ところが、突然、彼の目に飛び込んできたのは、窓の外で自由に飛び回る一羽の鳥だった。その鳥は何の束縛も受けず、ただ自分の意志で空を飛んでいる。その光景に心打たれた陽介は、ふと自分も変わることができるのではないかと思い始めた。


放課後、陽介は再び美術室に足を運んだ。今日は誰もいない美術室で、彼は自由に絵を描き始めた。彼は夢の中の自分を描いた。お化けではなく、力強く空を飛ぶ鳥として。彼の筆は確信に満ち、色は鮮やかで生き生きとしていた。この絵を通じて、彼は自分の恐怖を乗り越え、新たな自己像を模索していた。


絵が完成する頃、陽介は何かが自分の中で変わったことを感じた。彼はもう自分が「お化け」と呼ばれることに怯える必要はないと悟った。彼の中には新たな自信が芽生え、それは彼をこれまでとは違う道へと導いていく兆しとなった。

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