Digital16.狂戦士の反撃

 俺は白夜の肩を担ぎながら心配する。


「大丈夫か!? 応急薬を飲むんだ!」

「あ、アア……」


 白夜は苦しそうに答えて、俺から応急薬を受け取って飲み干す。

 これで何とか白夜の傷はある程度回復しただろう。

 俺は白夜の肩を抱えながら、片手剣をティラニカル・ブラック・フォックスに向けながら威嚇する。

 ティラニカル・ブラック・フォックスが隙を狙っている時に、白夜は声をかすれながら言う。


「お、おい……俺は見捨ててもいい、だから……早く俺を見捨てて他の奴と一緒に逃げろ……!」


 白夜が言う言葉に俺は否定する。


「何言っているんだよ! お前には元部員の皆と仲直りしたいだろ?」


 俺はさっき聞いた白夜の過去の事を言う。すると白夜は鳩が豆鉄砲を食ったような表情になって驚き、その事について聞く。


「お、おい! その話どこから聞いて――!」


 白夜は自身の事について聞こうとするが、ティラニカル・ブラック・フォックスはその隙を突いて突進してくる。

 俺は白夜を抱えながら急いで回避する。先ほどいた場所の地面にクレーターが出来ていた。

 ティラニカル・ブラック・フォックスは振り向いたと同時に、爪に炎をまとわせて切り裂いてくる。

 俺はスパルタルクスを召喚して、反撃の構えをとる。そして炎の爪が盾に触れたと同時に打ち消して、ティラニカル・ブラック・フォックスに向けて豪斬を放つ。

 だがティラニカル・ブラック・フォックスは豪斬を華麗に回避して、口から火球を吐き出す。

 俺は白夜を背負いながら火球を避ける。火球は地面に触れて爆発して、周りが黒焦げになる。

 これじゃあ、全然戦いにならないぞ。どうやって対処するか考えていると、アスモデウスは白夜の様子を見て嘲笑う。


「アッハッハッハ! かつての姿とはかなり落ちたな! 元総合格闘部の連中も、俺に逆らった顧問もどうしようもないクズなんだよ!」


 白夜はその言葉を聞いて怒髪天を貫いて叫ぶ。


「ふざけんな、このごみクズ野郎! 俺や皆が努力してきたのに、お前のせいでこんな事になったんだぞ! 皆の居場所を奪い、挙句の果てに悪びれもないなんてふざけんじゃねぇよ!」


 白夜は大粒の涙を流しながら叫ぶ。それは大切な場所を奪われた憎しみと悲しみが混ざり合っていた。

 しかしアスモデウスは白夜の叫びを聞いても、悪びれもせずに言う。


「で、それがどうしたんだと言うんだ? たかが部活が一つ無くなっただけだろ?」

「……ハァァ?」


 俺はアスモデウスが言った事を分からずに言う。

 白夜は歯を食いしばり、憎しみのまなざしを向けて叫ぶ。


「マジでザッケンナよ! ここまで腐ってんなら俺の命をかけてでも――!」

「いい加減にしろ!」


 俺は白夜が言い終わる前に勢いよく頬に平手打ちをする。

 イザナと通信で見ているイズナさんはあ然としており、アルフォンスは少し笑っていて、ティラニカル・ブラック・フォックスとアスモデウスは何をしているのか分からずにいる。

 白夜は平手打ちされた頬をさすりながら聞く。


「な、何するんだよ! いきなりビンタするなんて……」

「何するのこっちのセリフだ! 自分の命を捨てるなんて俺は認めないぞ!」


 俺は白夜の過去を聞いて分かる。

 こいつはずっと認められなかった。父親ですら馬鹿にされ続け、母親が常にいたぶられている。

 その父親に復讐するために格闘技を必死に独学で学び、復讐する事ができたが母親は精神病院に入れられ、親戚一同引き取るのを否定されて自分は必要以上に重く感じた。

 しかしうちの学校に入ってから、ようやく自分を必要としているところを見つけて幸せに生きると決めていた。

 しかしバスケ部の顧問が代わりになったことで最悪になってしまい。

 その事について聞いたら反省の無い言葉を聞き、頭がは真っ白になった結果で総合格闘部と選手としても生命線を奪われてしまった。

 大事なもの失った事で不良になって、自分自身を信じなくなってしまった。

 無意識にアルターエゴが召喚するのは、自分自身の嫌悪と後悔によって起きたんだ。

 白夜は俺が言う言葉を信じれずに聞く。


「ほ、本当か? 俺は本当に生きて良いのか?」


 白夜の質問に俺は答える。


「本当だ、むしろ俺達を信頼しろ! 大神白夜!」


 俺の叫びを聞いて白夜は涙を拭いて、勢いよく立ち上がる。すると立ち上がった時に血を吐き出す。

 しかし血を吐き出そうが、白夜は気合で立ち上がって叫ぶ。


「アア、俺はもう迷わねぇ。俺はココで誓う、今度こそ大事な場所を仲間と共に守り抜く!」


 白夜の叫び声と同時に蒼い炎に包まれ、その蒼い炎が散ると背後に猛獣の戦士が立っていた。

 その姿は獣の頭蓋骨を被り、背中にクマの毛皮を羽織り、右手には赤い槍を持っていた。

 頭蓋骨の戦士は自身の名前を叫ぶ。


『俺の名はオーディンに異能を授けらた戦士ベルセルク、全ての敵をぶっ殺してやるよ!』


 白夜は自分のアルターエゴを見て笑みを浮かべて言う。


「これなら……この力なら! あいつにリベンジする事だ出来るぜ! 覚悟しろよ、クソエロ教師!」


 白夜はそう叫ぶとベルセルクに命令する。


「ベルセルク、ここにいる心の影シャドウを倒し尽くせ!」

『オウヨ、オラッ!』


 ベルセルクはそう言って赤い槍を投げ飛ばし、赤い槍はさび鉄のブレードを倒しまくる。

 イズナさんは先ほどの攻撃を言う。


『さっき白夜君が選んだスキルは風牙、単体しか攻撃できないけどそのまま真っ直ぐ貫くスキルだ』


 イズナさんはまださび鉄のブレードを貫く状況を少し見て、冷や汗を流している。

 ティラニカル・ブラック・フォックスはこの状況を危惧して前に出る。


『この死にぞこないがぁぁ! 王に逆らった報いを受けろ!』


 ティラニカル・ブラック・フォックスはそう叫んで、口から炎のブレスを吐き出す。

 炎のブレスが俺達に襲い掛かろうとする。だがアルフォンスはヨハンネスで、イザナはラハムのアクリルで炎のブレスを消滅させる。

 アルフォンスは少し安心するように呟く。


「ふぅ、これで炎のブレスは大丈夫そうだね」

「って、誰だこのおっさん!?」


 白夜はアルフォンスに指しながら驚く。

 あ~、初めて会った時はリスに近い何かに見えていたけど、アルターエゴを召喚する事ができたから本来の姿を見て驚いているんだろうな。

 アルフォンスは白夜が言った事に泥きながら言う。


「お、おっさん!? 僕はお兄さんと呼びなよ!」

「あ~実はこの人さっきのリス擬きなんだよ」


 イザナがアルフォンスの事を話すが、白夜は頭が混乱している。

 その様子を見たティラニカル・ブラック・フォックスは青筋を立てながら叫ぶ。


『この場で放しあうとは……! ふざけるのも大概にしろー!』


 ティラニカル・ブラック・フォックスはそう叫びながら、俺達に向かって走って来る。

 しかし白夜とアルフォンスがゼインを放ち、四肢を津抜かせて動けなくさせる。


『グゥゥゥ!』


 しかしティラニカル・ブラック・フォックスは残った尻尾でアーク属性の狐火を放とうとする。

 しかしイザナがイゾウに変えて、アーク属性の狐火を放つ前に五月雨斬りを放って残った尻尾を切り落とす。

 切り落とされた痛みでティラニカル・ブラック・フォックスは叫び声を上げる。


『グァァァァ!? な、何故だ! なぜレベルのがあると言うのに、こんな弱者に追い詰められいるんだァァァ!?』


 ティラニカル・ブラック・フォックスはこの状況を理解できず、イザナは俺に向いて叫ぶ。


「止めを刺せ、クロード!」

「もちろんだ!」


 俺はそう答えて一気にティラニカル・ブラック・フォックスに接近する。

 しかしさび鉄のブレードはそれを止めようとする、だが他の仲間達が全力で止めに入る。

 俺はその思いを感謝しつつ射程距離に入ると、ティラニカル・ブラック・フォックスは慌てて命乞いをする。


『ま、待て! 貴様を見逃す。さらに王に許すと話し合う! だから――』


 ティラニカル・ブラック・フォックスは慌てて命乞いをするが、俺もう決めている。

 お前を倒して……アスモデウスも倒す!

 だからお前の答えなんて――。


「その答えは聞かねぇんだよー!」


 俺は叫びながら豪斬を放つ。そしてスパルタルクスが持つ剣がティラニカル・ブラック・フォックスの首に入り、そのままはね飛ばす。


『ギャァァァ!?』


 ティラニカル・ブラック・フォックスは断末魔を上げながら、はね飛ばされた頭と共に消滅する。

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