Digital12.問題児の訳

「アルターエゴを使える魔法使い!?」


 俺はアルフォンスが言っている事に理解できず、何を言っているか分からずに叫んでしまう。

 アルフォンスが人間離れしている事に驚くが、白夜は治療を終えて俺に話しかける。


「なぁ、そのリスと喋っているけど大丈夫か? なんかヤバいもんでも使っているんじゃ……?」


 俺は白夜にこのリスとアルターエゴについて話す。

 百夜は俺達の話を聞いて首を傾げる。


「電子世界にアルターエゴ、それにに人の姿になれる魔法使い……そんな話聞いても信じられねぇよ」

「マァ、そうだよな~。俺も同じくそんな話は信じられなかったし」


 俺は白夜の言葉に同感する。いきなりこんな事を話しても理解するどころか、胡散臭い話になるはずだ。

 イザナは少し頬を掻きながら苦笑いをしながら言う。


「確かにリスがアルターエゴを使える魔法使いで、実は現実に似た電子世界にいるなんて信じられないよねぇ……」


 それに付いては本当に否定できないよな~。そう思っているとアルフォンスが会話に入る。


「少し会話に失礼するけど、そこのこげ茶君はアルターエゴを使えるかもしれないね」

「ハァァ!?」


 俺はアルフォンスが言っている事に理解できず、驚愕に叫んでしまう。

 アルターエゴを使えるかもしれないって……そんな可能性みたいに言われても、さっきの戦いで全然召喚する事ができなかったぞ。

 少しアルフォンスが言っている事に疑っていると、白夜が何か心当たりがあるように言う。


「そういや~、ここ最近変な夢を見るんだよ」

「変な夢?」


 イザナは白夜がいう心当たりに首を傾げながら聞く。

 どうやら白夜が言う変な夢は、自分の背後から何か幽霊みたいなものが出てくるらしい。

 白夜が言うには「その幽霊は何所か俺と同じ雰囲気を持っていた」と言っていた。

 自分と同じ雰囲気に似た幽霊か……それってまさにアルターエゴみたいなものだな。

 そう考えているとイズナさんが通信で会話に入る。


『えっと……ちょっといいかな?』

「おわ! 何もない所から映像が出てきた!?」


 白夜は通信に映るイズナさんに驚くが、イズナさんは少し苦笑しながら言う。


『アハハ……話を戻すけど君が見た幽霊は君の心の奥底、つまりアルターエゴが無意識に召喚している状態が近いんだ』

「ハァァ?」


 白夜は首を傾げながら答える。あ、多分これ分かって無い奴だ。

 俺の考えとは裏腹に、イズナさんはもう少し説明する。


『無意識の中、さらに夢を見ている時に召喚されるのは、アルターエゴを近いうちに意識の中で召喚する事を暗示しているんだ』

「へぇ……」


 白夜は詳しくわかってないが、取り敢えずすごいだろうと思いながら頷く。

 白夜の無意識召喚の話を終えると、イズナさんは俺達の方に向いて言う。


『次にイザナにクロード君、さっき会ったティラニカル・ブラック・フォックスは心理之迷宮アルファポリスから出ようとしている。急いで倒さないととんでもない事になる』

「何だって!?」


 俺とイザナがその言葉を聞いて理解する前に、白夜はその言葉を聞いて驚き、焦りながらセーフルームから飛び出す。

 俺は突然セーフルームから出た事に驚きつつも、ティラニカル・ブラック・フォックスの方に向かっている白夜を呼び止める。


「お、おい! お前はまだアルターエゴを召喚出来ないぞ!」


 しかし白夜は俺の呼びかけを無視して走り続ける。

 不味い、このままアイツの命は……!

 俺は最悪の未来が脳裏に過ぎり、急いで白夜に向かおうとするが、イズナさんは俺を呼び止める。


『待って! その前に彼の過去を話す』

「過去の話すって、こんな呑気に――」

『良いから話を聞け!』


 俺が焦って急がせると、イズナさんは今まで聞いた事無い怒号を聞いて身震いする。

 イザナもこんな兄を見て、驚きながら少し怯えていて、アルフォンスは少しあ然としている。

 イズナさんは切嗣先生になだめられて、落ち着くと少しずつ話す。


『ゴメン、ちょっと怒鳴り過ぎたよ……彼には少し悲しい過去があるんだ。その話を聞いて欲しい』

「わ、分かりました」


 俺は焦ったことを悪く思いながら白夜の過去を聞く。





▲▽▲▽▲▽





 白夜はティラニカル・ブラック・フォックスの方に向かっている中、自分の過去を思い出す。

 彼は幼いころ、父親に虐待された上に母親は子ども守るように謝り続ける。それが彼の幼い記憶でもあり、苦しみの思い出でもある。

 彼はそんな父親を恨み、いずれ復讐するために総合格闘を独学で学び、そして中学に入学したと同時に父親を叩き潰し、母親を自由にする事ができた。

 しかし母親は長年痛めつけられたことで精神崩壊してしまった。

 その後母親は精神病院に入院し、白夜は親戚一同が引き取りを拒否されてしまい、孤独に生きるようになった。

 独学で総合格闘を極め続け、中学三年でクレイドル学園の推薦を受け、ようやく自分の居場所を見つけて血反吐を吐く位に鍛え続けた。

 クレイドル学園に入学してから半年が経ち、いつも通りに朝練をしているとバスケ部の顧問が代わりに顧問をしてきた。

 最初は胡散臭がっていたが、部員の皆に優しくしていたため、彼も心を開いてかかわった。

 それが地獄の始まりとは知らずに。

 バスケ部の顧問が代わりになって一ヶ月が経つ。その間で虐待にパワハラ、女子にはセクハラを起こしまくって、そのことを本人に行ったが罪の意識を感じるどころか、そのことを飄々と答えた事で頭が真っ白になり、ハッと我にかえるとあばら骨と足の骨を折られていて、二度と格闘する事ができなくなった。

 さらに総合格闘部を無くし、他の部員が心無い言葉を浴びせられて他人とかかわる事を無くした。

 そして今は不良として暴れているが、今朝ぶつかった茶髪の先輩とその友人が変な扉に入ったことを知り、無意識で助けに向かった。

 なんとか黒い何かの怪物シャドウを蹴散らし、そしてようやく見つけたが黒い化け狐と戦うが、力の差が晴れていて苦戦を強いられた。

 そして色々なうわさを持つ学園一のアイドルの弟のに出会い、けがを治してくれた。

 さらに学園一のアイドルの八神イズナがあの化け狐が学園を襲うと聞き、急いで阻止しようとは知った。

 あの顧問を守るためじゃない、元総合格闘部の皆を守りたい、たとえ自分の命が途絶えようとも、彼を守り切って見せる。

 その様子を画面越しで見ているダグザは呟く。


「彼は仲間を守る。どんな事になろうが絶対に守り抜ける。彼の運命はどうなる事か……」

「新たなアルターエゴ使い運命は彼らにかかっております」


 マリアは深そうに言う。

 そして白夜はティラニカル・ブラック・フォックスの方に向かって走り続けた。

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