Digital6.迷宮探索

 ピピピピ! ピピピ!


「う~ん、うるさいなぁ……」


 俺は鳴り続ける目覚まし時計を止めて、時間を確認する。ッテ約束の時間、登校を合わせてあと15分ぐらいじゃん!

 俺は急いでパジャマから私服に着替えて、リュックサックを背負うと食堂に向かって早く降りる。

 食堂に着いたら扉を開けて、早朝の部活に備えて菓子パンとおにぎりが販売していた。

 俺は菓子パン二つとジュース一本を取って、代金は商品の横にある箱に入れて学校に向かって走りながら菓子パンを食べる。

 他の人から見ればパンを食べながら急いでいるなんて、恋愛漫画みたいな状況だな。

 そう思いながら学校に向かって走る。

 しばらく走って何とか約束の時間に間に合った。

 校門に入ると校庭の中心に扉みたいなものが置いていた。

 何だ、あれ?

 俺は何の扉だろうと思いながら近づく、すると脳内に謎の声が聞こえる。


『オイ、そこお前。俺の声が聞こえているだろ?』


 何だ? いきなりテレパシーが聞こえるなんて、一体誰なんだろう?

 俺は謎の声が聞こえるのか分からずに首を傾げ、謎の声はそのまま話す。


『俺の正体はいずれ分かる。今は急がなくてはいけないんじゃないか?』


 急がなくてはいけない……アッ! そう言えば待ち合わせの時間そろそろじゃないか!

 謎の声の事は後にして、急いで特殊野外活動部に向かった。

 少し走って何とか間に合い、俺は息を切らしながら小屋に入る。


「た、たった今着ました……!」

「アッハハ、ここまで走ってきたのは凄いね……」


 イズナさんは少し頬を掻き、イザナは探索前のストレッチをして、切嗣先生は機械を操作して、心理之迷宮アルファポリスの内部を調査していた。

 イズナさんは探索前に少し説明する。


「昨日話した通り、心の影シャドウは謎の迷宮心理之迷宮アルファポリスしか発生せず、対抗できる手段は〈アルターエゴ〉と言ったけど、通常の攻撃にもダメージを与えることはできるんだ」

「へぇ~」


 心の影シャドウはアルターエゴを持たなくても、道具や武器を使えば何とか倒す事ができるんだな。

 鳥の心の影シャドウは根暗なスウォローと呼ばれ、眩しい物に弱い心の影シャドウ、懐中電灯や魔法で言う光輝属性に良く効く。

 今まで探索してきたのはイザナだけで、今回から俺も探索する事になる。

 リュックサックに入っているのは絆創膏や包帯、それから飲み物と菓子パンを数個入れてある。

 後はイズナさんが渡した鉄の片手剣を腰に、ピストルの予備マガジン三個をリュックサックの横に納める。

 探索の準備を終えて、校庭に向かう。

 校庭に着くと中心から突如、扉みたいなものが開く。

 俺とイザナは扉の前に立ち、イザナが扉を開けると一気に眩しくなり、俺はとっさに目を瞑る。

 眩しさの中で何かに掴まれて、俺とイザナは引きずり込まれてしまった。

 少しして眩しさが収まり、ゆっくりと目を開けるとそこはRPGで見たダンジョンにいた。


「おぉ……!」


 俺は現実離れした雰囲気に驚きつつも、あまりの凄さに心を奪われ、もっとこの景色を見たいが沈黙のマーヤーたちがやって来た。

 俺は腰から鉄の片手剣を抜刀し、イザナは日本刀を抜刀して構える。

 扉に入る前に渡された通信機からイズナさんが説明する。


『一度戦った事はあるけど、そいつの弱点は未定、だから今の武器と魔法を駆使て戦うんだ』

「「了解、召喚!」」


 俺とイザナはそう答えて、沈黙のマーヤーたちに向かってアルターエゴを召喚する。

 俺は反逆の闘士スパルタルクスだが、イザナのアルターエゴは流浪の侍だった。

 その姿は細身の巨人で、両手にはさびた日本刀を持ち、頭部には綻びた藁の笠をかぶり、一枚の着物を着ていて、まるで流浪の辻斬りかと思わせる風貌を醸し出していた。

 イザナは背後にいるアルターエゴに命令する。


「イゾウ、沈黙のマーヤーたちを吹き飛ばせ!」

『そうか、なら暴れちゃるぜ!』


 イゾウはそう叫んで刀身から突風を撃ちだし、沈黙のマーヤーはその突風を食らって吹き飛ばされる。

 俺も追撃するようにスパルタルクスに命令する。


「スパルタルクス、沈黙のマーヤーたちに追撃をかけろ!」

『承知した、ハッ!』


 スパルタルクスはそう叫んで電撃を放って、沈黙のマーヤーたちを黒焦げにして消滅する。

 俺は戦闘が終了すると片手剣を納刀し、イザナはさっき沈黙のマーヤーたちがいた場所に歩む。その場所に着くと何かを拾い始める。

 俺も物を拾うのを手伝い、落ちた物が亡くなったのを確認して、拾ったものをイザナに聞く。


「これはなんだ? 一目見ればただの残滓だけど?」

「これ? これは心のシャドウが落とす素材で、これらは後で説明するから探索を再開するよ」

「分かった」


 俺は頷いて答える。にしても素材ってやっぱりなんというか、そこら辺はゲームっぽいな。

 そう思いながら俺とイザナは再び探索を続ける。





▲▽▲▽▲▽





 しばらく歩いていると、イザナは何かに気付いて壁の方に向く。

 そこは石レンガ出来ているが、そこには何もないが、一体何があるのだろうかと思いながら見る。

 するとイザナはレンガの一部を押す。するとそこから消滅して、一つの部屋が出来た。

 俺は今起きた事に驚いていると、イザナが部屋を指しながら説明する。


「この心理之迷宮アルファポリスは安全地帯があって、俺達はセーフルームと呼んで良く休憩とか使っているんだ」

「な、なるほど」


 俺は少しぎこちなさそうに答え、部屋の中に入る。

 少し周りを観ると、部屋の中は二畳くらいの机と数個のいすが置かれ、俺はそこに座って休憩する。

 一応今まで戦ってきた戦利品を確認するか。そう思いながらリュックサックを開いて素材を取り出して、机の上において確認する。

 ●沈黙の砂鉄……沈黙のマーヤーから取れる素材。入手量30グラム

 ●沈黙ジェル……沈黙のマーヤーから取れる素材。入手量12グラム

 ●根暗な翼……根暗なスウォローから取れる素材。入手量12枚

 ●鳥の赤骨……根暗なスウォローから取れる素材。入手量六本

 ここまで集まって中々良い成果だな。そう思いながら素材をリュックサックに納め、イザナに相談する。


「なぁ? 一応セーフルームに入ったけど、このまま下層に進むか?」

「う~ん、そうしたいけど……俺とクロード君しか居ないじゃん」

「アッ……」


 俺はイザナの事を聞いて納得する。

 確かに探索しているのは俺とイザナだけだし、イズナさんと切嗣先生はアルターエゴを召喚すること出来るが、先生は心理之迷宮の調査で、イズナさんはその補佐に忙しいから探索を手伝うのは難しいだろうな。

 そう思っているとイザナは懐から謎の瓶を取り出す。俺は祖の瓶について聞く。


「それなんだ? 一見すればただの瓶だけど……」

「これ? これは……ハッ!」


 イザナは叫びながら瓶を地面に叩きつける。すると一気にあたりが眩しくなって思わず目を瞑った。

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