第14話

 現場で様子を見ていたかったが、自分にもしもの事があってはと、ドルフは隊員に安全な場所にと、エアル達がいるシェルターに来ていた。


「ドルフさん!」


 ドルフの姿を見てエアルが抱きついてきた。エアルはいつもいい匂いがするし、こう何というか安心ができて絶対に守らなければと思う。ドルフはいつも以上にエアルを強く抱きしめた。


「大丈夫だエアル」


 言葉で返ってこない代わりに、エアルのドルフを抱きしめる腕に力が入り、彼女の背中をあやすようにトントンと叩いた。


「ドルフ教授」

「室井さん。大丈夫だったか?」

「私はね。でもエアルがかなり動揺してて、見ていられなかったわ」


 そうか……思わず頬が緩んだのは、純粋に自分を心配してくれる事が、その存在が嬉しかったからだ。


「ドルフさん、それでリリーは」


 腕の中から見上げて来るエアルの瞳は、相変わらず綺麗で引き込まれそうになるが、その中に不安の色があるのは心苦しいものだった。


「問題ない。エアルは何も心配するな」


 リリーが捕獲できた後の事を考えて、ドルフは一つ気がかりだった。

 今、真っすぐ自分に向けられいるエアルの気持ちは離れてしまうかもしれない。軽蔑をされるかもしれない。でも元々はエアルがいた世界で対峙して、リリーは死んだと思っていたなら、あまり神経質になる必要もないのではと。


 それでも今後、従事しようとしようとしている事は、非人道的な事。ドルフはこの事をエアルに伝えるか伝えないかを、決めかねていた。


 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 リリー捕獲の連絡が入ったのは、ドルフがエアルたちと合流して三〇分後だった。



「エアル。少しいいか?」

「なんでしょうか?」


 一緒にいた室井はドルフの考えを察したのか、目が合った瞬間、小さく頷いて場を外してくれた。


「エアルは、俺の事が好きか?」

「え?! な、あ、当たり前です!」


 顔を赤くしながら当たり前、か。こんな嬉しい事はないな。でも、とドルフは続けた。


「それは俺が非道な事をする人間でも、同じ事が言えるか?」


 綺麗なアースアイがドルフの全てを見通すように、じっと視線が合っている。

 怖い、と感じる人もいるだろう。現に、エアルさんってたまに、全てを見通されているような感じがして怖いという話しが耳に入って来た事もある。それはこの神秘的な目と神の使いのような人間離れした容姿もあるだろう。


 でもドルフには怖いというよりも、是非に見てくれと思ってしまうのは、惚れた弱みというやつだ。まさか自分がここま思える女性ひとの出会えるとはな、とドルフは弱々しい笑みを浮かべた。


「私はそれでも、ドルフさんを愛する事は止めないと思います。きっとドルフさんがそうすなら、人々のためを思っての事でしょう。それでドルフさんが業を背負うなら、私も一緒に背負いたいのです。貴方が貴方自身を責めて苦しまないように」


 ああ、何てことだ! エアルは自分がどんなことをしようとしているのか、どうやら想像はできているらしい。それでも気持ちは変わらない、一緒に背負ってくれるという。ドルフはエアルを抱き寄せ、しっかり、強く腕の中に閉じ込めた。


 もういつ流したことがあるかも覚えてない涙が、零れそうになっていた。


「エアルありがとう。愛している」

「はい。私もです」


 そして初めて二人はキスをした。


 ~~~~~~~~~~~~~~~~~


 捕獲されたリリーは麻酔銃が刺さり、意識無くなったところを捕縛された。カプセルの中で眠っているリリーはエアルとは正反対で、髪も何もかもが黒かった。


 目覚めないように、常に適量の麻酔とケースの中ではガスが充満している。


「ドルフ教授。どうされんですか?」


 質問をしてきたのはドルフを初期の頃から支えてくれている助手の城野しろのだった。


「君は、先日実験したシールドがどうやって起動したか、分かっているか?」


 城野は気まずそうに視線を反らし「まあ……はい」と答えた。


「国を守るほどのシールドを造るにはが必要なんだ。君は嫌なら」

「俺は教授に付いています!」


 彼の勢いと付いてきてくれる嬉しさ、そして自分と同じように堕ちてくれる喜びがあったが、ドルフは表情を崩さず握手を求めた。


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 一日置きに投稿予定です。

 すごく慣れないジャンルで、ファンタジー系を書いた事がないですが、

 よろしくお願いいたします。


 第6回ドラゴンノベルス小説コンテスト《中編》に応募しています。


 ☆やご声援のほどよろしくお願いいたします。

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