第3話 は、嵌められた……!!
「———頼む頼む頼む頼む頼む……どうかレイシアちゃんと同じクラスでお願いしますお願いします……!」
「ヤミ様怖いよ!? っていうかボクと同じクラスなことは願わないの!?」
手を胸の前で組んで祈りを捧げる俺に、イリスが衝撃を受けたように叫ぶ。
俺はそんなイリスを半目で見ると……再び祈りを捧げながら応えた。
「そんなの二の次に決まってんだろ。何たってアルテマに俺とレイシアちゃんとお前を同じクラスにする様にお願いしたからな」
「なのに祈ってるの!? アルテマ様に頼んだなら絶対大丈夫だよ!?」
「甘えたこと抜かしてんじゃねぇ! この世にな……絶対なんてないんだよ!」
俺の迫真の咆哮に、イリスがドン引きした様子で一歩後退る。
「ヤミ様……因みに同じクラスになってどうするの?」
「反対側の席でレイシアちゃんとイケメン君のイチャイチャを眺める」
「気持ち悪いよヤミ様……!! ドン引きだよ……!?」
「五月蝿い! 何人たりとも俺の野望を邪魔することなど出来ん!!」
この野望のために俺は自分の人生の10年を費やしたんだぞ……!
原作知識と数多のオタク知識を使って強くなったのも、組織を作ったのも全てレイシアちゃんのイチャイチャを遠目から眺めるためなんだ……!!
因みに、この学園が成績順にクラス分けされるのは2年からだ。
そのため1年のクラス分けは本当に運が全て。
「あ、クラス表映し出されたよ」
「何!? 俺は何組だ!?」
イリスの言葉に俺は前方の投影機から映し出された半透明のボードに目を凝らす。
恐らく過去一の動体視力を使っているだろうが……あ、俺の名前あった。
そしてそのクラスは……。
「———き、キタァアアアアアアアア!!」
しっかりとレイシアちゃんと同じ1年A組であった。
俺はあまりの嬉しさに、周りの目など1ミリたりとも気にすることなく全力で歓喜の雄叫びを上げる。
突然周りとは格の違う喜び表現を繰り出した俺を、周りの同級生達が『あ、コイツやばい奴だ。絶対関わらないでおこ』と言う目で見ていたが……そんなのどうでもいい。
キタキタキタキタ……!!
流石アルテマ……やる時はちゃんとやる子!!
くくっ……レイシアちゃんと同じクラスならどんな好奇な視線を向けられようと、何ならぼっちでも文句はない……!!
「や、ヤミ様……一応ボクも同じクラスなんだけど……」
「おう、そうか。これでぼっちも脱却だな」
「扱いの差が酷すぎるよっっ!!」
イリスも叫んだことにより、イリスが俺と同じ部類に仲間入りしたことは……まぁ言うまでもない。
「———嬉しそうだね、ヤミ様」
「あぁ……最高だった……思い残すことはあるけど、満足です」
帰りの馬車にて、俺は素敵な時間の余韻に浸っていた。
あの後クラス別の教室に移動し、自己紹介や学園の説明などがあったのだが……レイシアちゃんの自己紹介はまさに、素晴らしいの一言。
流石に本人がいる手前、余計に目立つことは避けたかったので控えめの拍手にしたが、心の中では成長した娘を見守る父親のような気持ちで感動していた。
因みに俺の自己紹介の時にレイシアちゃんと目が合ったのだが……優しく微笑んでくれた際は、感動のあまり心の中で泣いた。
「いやぁ、これからの学園生活が楽しみだな……ん?」
俺はふと窓に目を向けたのだが……丁度自宅を通り過ぎたことに違和感を覚える。
しかしイリスは素知らぬ顔で何やら連絡を取っていた。
え……何で家を通り過ぎたんだ……?
誘拐??
「なぁ、家、通り過ぎたんだけど……」
「そうだね」
「いやそうだねじゃなくてだな……あ、まさか……」
「そのまさかだよ、ヤミ様。今丁度転移魔術使っ———たよ」
イリスの言葉の途中で急に景色が変わり、先程いた街の風景は消え、鬱蒼と茂る森の中へと転移していた。
そしてこの場所を俺は良く知っている。
……くそっ……折角最近は集まりがないと喜んでいたのに……。
は、嵌められた……!!
俺がそのことに気付いたときにはもう手遅れ。
馬車は停車し、俺の腕をイリスがガッシリと掴んで死んでも逃さないという気迫が籠もった笑顔を浮かべていた。
「い、イリス……? その手と顔は……」
「……逃さないよ、ヤミ様?」
「いや……」
「———良くやった、イリス」
この馬車では聞こえるはずのない声が俺の耳に届き、反射的に声の主の方へと目を向ける。
すると俺の視界に、馬車の扉を開けて俺の方をジッと見つめているアルテマの姿が入ってきた。
「……や、やぁ、アルテマ……さっき振りだな……。それとお願いなんだけど、イリスを何とかしてくれないか?」
「……ん、無理。イリスに頼んだのは私。何処かのサボり魔を逃さないために」
サボり魔って……まさか俺のことか?
随分と不名誉なあだ名を付けてくれるじゃないか。
「ん、毎月ある組織の集会に3ヶ月連続出席しなかったヤミはサボり魔」
「おっとそれには理由があったんだ。毎回その日になるとお腹が痛くなってな」
これは結構ガチの実話である。
詳しく言えば、集会に行ったら毎回精神的に物凄くストレスを負うので、いつの間にか身体が拒否反応を起こしてその日になるととんでもない腹痛に襲われるのだ。
しかしどうやら俺の話は嘘と断定されたらしく、如何にも厨二病が好きそうなデザインの黒い仮面と黒装束が手渡される。
俺の黒歴史の1つである。
いやぁ……まさかこんな衣装が採用されるなんてな……。
もう厨二病を過ぎた俺には羞恥心しかないぜ。
「なぁ……これって本当に付けないといけないのか?」
「?? ヤミが考案した。それに、ヤミの素顔は幹部しか見れない掟だから付けないといけない」
「あぁ、厨二病とは何と恐ろしい病なんだ」
俺はそう嘆きながら、もう逃げられないので大人しく仮面を付けて黒装束に身を包み馬車から降りる。
目の前には一見何の変哲も無い森があるが……それは全て幻覚で、結界を潜れば超巨大な建造物———オーバーライトの本拠地が姿を表す。
更に入口に向かう道の両側に組織の構成員と思わしき者達が綺麗に整列していた。
……相変わらずデケェ……どんだけ金かかったんだろ……てかまた増えてないか?
これがサボってた弊害か……仕方ない、覚悟決めるか。
「はぁ……———よし、行くぞ。アルテマ、イリス」
「「
俺は黒歴史の宝庫へと、重い重い一歩を踏み出した。
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ここまで読んで下さり、ありがとうございます!!
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