乙女ゲーの主人公(美少女)を陰から助けるために最強の組織を作ったんだが、部下に愛され過ぎてしんどい
あおぞら
第1章 原作主人公オタク
第1話 乙女ゲー世界の主人公推しの転生者
「———遂にこの日が来た……!!」
俺———ヤミ・シェイドは、目の前に広がる懐かしい光景に小さく歓喜の声を上げる。
そして俺が言う目の前の懐かしい光景とは……まさしく豪華絢爛を体現したかのような世にも美しい校舎のことだ。
本当に長かった……。
転生から苦節10年……遂に……遂に念願の推しに会える……!
そんな感じでテンション爆上がり中の俺だったが……その横で俺と同じ黒髪の少女———イリスが呆れたような視線を向けていた。
「ヤミ様さ……流石にテンション高すぎだよ! ボクまで周りの視線を集めてるじゃん!」
「う、五月蝿い! 俺は今、猛烈に感動しているんだからしょうがないだろ! だってあの『神秘育成学園』だぞ!? 絶対に手が届かないはずだったものが目の前にあるんだから興奮するに決まってるだろ!!」
そう、転生しなければ、絶対にこの場に足を踏み入れることは叶わなかった。
何故なら———。
———この世界が乙女ゲーの世界だからだ。
勿論、俺の転生先はゲームの背景モブとして名前も出ない子爵家の子息だった。
ただ、攻略キャラは大変なので俺としては寧ろこれで良かったと思っている。
何故俺が乙女ゲーをプレイしていたかというと、俺は前世も男だったが……好きな男性声優が出ているということで、その声優の声を訊くためにこの世界が舞台となった乙女ゲー———『神秘と5人のイケメン魔法士』をやったことが始まりだ。
正直言って俺のような男にとってはそこまで唆られる題名ではなかったが……唆られないのはあくまで題名だけ。
それ以外は男の俺でも楽しめる作りとなっており、無課金でも楽しめるスマホゲームというのも相まって普通にドハマリした。
ストーリーはさることながら、キャラのビジュアルに声優、ステータス機能や隠し攻略キャラとそれに付随する隠しストーリーなどのやりこみ要素。
またガチャは、そこらの課金させる気満々のガチャとは違い、良心的な程よい最高ランクのキャラの排出率に、オンラインで協力してイベントボスを倒す仕組みなどなど……乙女ゲーでありながらしっかりと男も楽しめる作りになっていた。
勿論乙女ゲーになくてはならない主人公であるレイシアと攻略キャラ達との恋愛イチャイチャ要素も沢山詰め込まれている。
俺的には物語中盤の———。
「———ヤミ様っ!」
「……っ、な、何だよ……てか、その、ヤミ様呼びはやめろってアルテマに言われてたろ」
「そんなことは今はどうでもいいよ! ほらヤミ様、あそこ見て!!」
俺がこの世界をゲームとしてプレイしていた頃のことを思い出して熱くなっていたところでイリスが俺の身体を揺らしてきたため思考が遮られる。
それで少し不機嫌になるも、やたら急かしてくるイリスに従って俺は指差す方向に目を向け———胸を押さえる。
「ぐはっ……」
「ヤミ様!?」
イリスが突然苦しみ出した俺を見て、驚いた様に叫ぶ。
しかし俺はジェスチャーで大丈夫なことを伝える。
「ふっ……心配するな……あまりの尊さに大ダメージを受けただけだ……」
「……はぁ、心配して損したよ」
そう言いながらも安堵の表情を浮かべている辺り、根の優しさが滲み出てる。
俺は良い仲間を持ったもんだと思いながらも、推し———この乙女ゲー世界の主人公であるレイシアから目が離せないでいた。
光を反射してキラキラと輝く金色の腰まである髪に、ぱっちりとした碧眼。
主人公に相応しい美しくも可愛らしい整った容姿。
そして———周りのモブ生徒達とは桁違いの溢れ出る魔力を内包していた。
うーん……実物で見るととんでもなく可愛くて綺麗だな。
それに平民とは思えぬ美しくもカッコいい所作……そこがまたいい!!
俺が念願の推しの姿に限界オタクと化していると、イリスがレイシアを懐疑的な目で眺めながら呟いた。
「それにしても……アレが本当にボク達の組織———『オーバーライト』が創られる理由になった人なの?」
「おい、レイシアちゃんをアレ呼ばわりするな」
俺がイリスを睨むと、彼女は慌てて手と頭ブンブンと振って弁明を始めた。
「……じょ、冗談ですよヤミ様〜〜ま、まさかヤミ様の推し様にそんな無礼な事言うわけ無いじゃないですか……へ、へへっ……へへへ…………それにしても……あの女、ヤミ様に贔屓されてズルいな……」
「…………ほら、もういいから行くぞ」
「はーい……」
キョロキョロと世界競泳並みに目を泳がせるイリスが最後突然虚空に視線を向けてボソッと恐ろしいことを零す。
俺は聞かなかったことにして、彼女を連れて学園に入った。
俺がこの世界に転生してからの目的はただ1つ。
それは———レイシアちゃんと攻略キャラのイチャイチャを見ること。
そのために俺は
「———アルテマ」
「———何でしょうか、
「2位から6位を学園の外で待機させて、お前は侵入してレイシアちゃんの近くで待機しろ」
「……私はヤミの隣が……」
「……いやレイシアちゃんの隣な」
「……チッ……
…………。
何か———幹部の皆んなの俺への執着が強すぎてしんどい。
—————————————————————————
どうもあおぞらです。
今作は推しのために最強の組織を作った少々頭のぶっ飛んだ主人公とそんな主人公をも困惑させる仲間達のお話です。
ここまで読んで下さり、ありがとうございます!!
モチベで執筆スピード変わるので、続きが読みたいと思って下さったら、是非☆☆☆とフォロー宜しくお願いします!
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