俺が花村と最初に出会ったのは、いったいいつのころだっただろう? とそんなことを実は思った。

 確か、……そう、桜だ。

 宮森実は、なぜか今日、ずっと、桜が気になっていた。校庭に咲く桜並木の桜吹雪の風景によく目を奪われていた。

 その理由にようやく思い至ることができた。

 俺が花村と初めて出会って、会話をしたときにも、こんな満開の桜の花びらが舞う、桜吹雪の中だった。

 あれは去年の春。

 中学一年生の、つまり実と咲が中学校に入学して間もないころの話だった。

 実は桜の舞う道の上を一人で歩いていた。

 すると、そんな桜吹雪の中に、足を止めて、舞い散る桜の風景を一人でぼんやりと眺めている同じ中学校の制服を着た一人の女子中学生の姿があった。

 それが花村咲だった。

 実はそんな咲の姿を見て、自分の心がときめくのを感じた。

 ただ一目見ただけだったのに、それだけ、当時から花村咲は、人目を引くような、美しい人だった。

 実は思わず足を止めて、そんな咲のいる風景を一人でぼんやりと眺めていた。

 すると少しして咲が自分を見ている実の存在に気がついて、ふと顔を動かして実を見た。

 二人の目と目が桜の舞う空間の中で、確かに交差した。(それが二人の初めての出会いだった)

 花村咲は宮森実を見つけると、ゆっくりとこちらに向かって歩いてきた。

 そして実の前までやってくると、にっこりと笑って、二人の周囲に咲く桜並木をその綺麗な細い指で指差して、「桜、綺麗だね」と実に言った。

 実は、そんな咲になんて言葉を返したのだろう? そんなことはもう忘れてしまっていた。

 実が覚えていたのは、そんな咲のいる風景と、桜と咲の言葉だけだった。

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