隣のじいさん

@kudamonokozou

第1話 僕と祐介

私がまだ、子供の頃のお話です。私はもう、すっかりいい歳になっていますから、ずいぶん昔の話です。そのつもりでお聞きください。


-------------------------------------


僕は、いつの間にか祐介と友達になっていた。なぜかと言うと、クラスの他の友達は皆、放課後に塾や、お稽古ごとや、スポーツクラブがあったけれど、僕と祐介は何もなかったので、いつも一緒に遊んでいたからだ。


祐介の家は、お父さんと二人だけだ。以前は、お母さんと弟と妹がいたのだけれど、いつの間にかいなくなってしまった。ある日突然、いなくなった。


祐介のお父さんは、お酒をよく飲む。飲むと、わけもなく暴れるそうだ。それで、近所迷惑と言われることがある。だから祐介は、お酒も、祐介のお父さんも嫌っていた。


僕と祐介は、自転車で数十分行ったところの、緑地公園によく遊びに行く。

祐介は、池でウシガエルを捕まえたことがある。僕はその大きさにびっくりしたが、祐介はすぐ放してやった。

「こんなの捕まえても、どうしようもないから。」

と、祐介は言った。


そう言えば、祐介は昔はよくトンボや蝶を捕まえていたが、今は捕まえなくなっている。

「捕まえても、死なせるだけで可哀そうだ。」と、祐介は言った。

だから僕も、トンボや蝶を捕まえないようにしている。


また祐介は、ものすごく大きい二枚貝を見つけたことがある。

「こんなでっかいシジミ、見たことねえ。」

祐介は持って帰ろうとしたのだが、

「ああ、そりゃどぶ貝だ。臭くて食えたもんじゃねえ。やめとけ。」

と、管理人のおじさんにたしなめられた。

祐介と僕は、大笑いをしてどぶ貝を池に戻して帰った。

「あのおじさんも、食べてみたんじゃないかな。」

と、帰り道で祐介が言ったので、自転車を漕ぎながら二人でまた大笑いした。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る