夢小咄
巌平みらな
はじめに/初夢の話
この作品群は私が実際夢で見たものである。
昔から登場人物が『私』ではない、映画のようなものをよく見ている。
その為、普遍的な日常であったり、ホラーであったり、もしくは禁断の恋愛であったりと様々である。文字通り、夢のアンソロジーだ。
そして長い夢は記憶していない為、どこかのワンシーンを切り抜いたような短編集となっている。
それを了承の上、読み進めてもらえるとありがたい。
さて、一つ目の夢の話は作者本人の初夢の話にしよう。
次からはなんの脈絡もなく、短編小説として夢の記録を書くのだから、最初くらいは私が私として登場する話をしておこうと思う。
私の初夢は基本的に悪夢なのだが、中学の3年間だけ連続した初夢を見ていた。
夢の中の私は一人で白いドーム状の空間にいる。椅子がなく、やけに明るいプラネタリウムのような場所だった。
そこには誰もいない。しかし、途中から誰かが笑顔で手を振りながらやってくる。
ドーム状の膜を突き破って誰かが侵入してくるのだ。
別段親しい特定の誰かではなかった気がするが、その夢の中では誰よりも大切な存在ように接していた。
そして目が覚めそうに意識が浮上しかけると、慌てたように自分が開けた穴からまた出ていくのだ。
その空間には、初夢以外で訪れたことはない。不思議なことに初夢のたびに訪れては、ここにずっといたんだという感覚がするだけだ。
ちょうど中学三年の初夢で、親しげに話す誰かに聞いたことがある。
「どうしてここには扉がないの?」
ずっと疑問だった。おおよそ明晰夢のような状態で、空間を歩き回っていたのだ。そこには物もなければ窓も扉もない。
ただ、半球場の白い空間があるだけだったのだ。
侵入してきた誰かは、笑顔で言った。
「出ちゃいけないからだよ。」
あの時、誰かを追ってあの裂けた場所に出ていたら。
そんなたらればを考えてみるが、あの日を境にあの空間は二度と出てこなかった。
夢小咄 巌平みらな @heiwanamira1
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