獄樂情怒

ヤトミ

第1話 判決




____獄殿山。それは生者を死に招く山である。こんな言い伝えが この山には昔からある。

誰も近づきはしない。だが今現在。その山に登っている。理由は単純。自殺だ。もう仕方が無かった。迫害や決まりばかりの現代社会に縛られるならば いっそ死んでしまった方がいい。そう悟ったのだ。

 

「あと少し...」

 

残り5メートル。この山さえ登れば楽になれる。そう信じて前を進もうとする。だがしかし。突然足元がすくわれ 体が宙に浮く。そしてそのまま一直線に下まで落ちていき 川の中へと沈んだ。だがこれで良いのだ。縛りから解放されたのだ。ようやく死へ近づけた。

______筈だった。川の流れが耳を劈き 体の中まで入ってくる。

 

「っ...」


目を覚ましてしまった。だが明らかに感触が違う。下が冷たいのだ。すると1匹の白狐が現れた。その狐は着いて来いと言わんばかりにこちらに視線を送り やがて歩き出し始める。

辺りは黒く包まれて何も見えない。立ち上がり狐の後を追うように足を進めた。10分程歩くと赤い光が射し込む場所に出る。

 

「ここは...」

 

目の前には大きな扉があった。白狐はその扉に向かって吠えると 姿を消した。それと同時に 扉が開く。その先は凄惨な物だった。頭蓋骨や白骨死体が 所狭しと並べられている。奥には何やら巨大な椅子があった。その時。


『罪人よ。』


と何処からか声が聞こえた。声の先を捜すと目の前に黒いモヤが渦巻き それがやがて人の形を成していく。

 

『お前の罪を答えろ。』

 

その姿を見て絶句した。目の前にはあの閻魔大王と思しき姿が君臨していたのだ。

 

「お前の罪を答えろ。」

 

目の前にはあの閻魔大王と思しき姿が君臨しているのだ。そして辺りは一瞬にして 先程までの景色から変わり絵巻で見たような地獄へと変化した。

 

「自殺...です。」

『何故自殺を選んだ。」


「自分が弱さを..社会のせいにして逃げたんです。」

閻魔『本当にそれだけか?』

「それだけです。」


すると閻魔大王は深く息を吸い


閻魔『...判決を下す。骸炉よ!彼を等活地獄へ送りたまえ!』

骸炉『了解しました。』

  「っ!」


その瞬間。頭が骸骨になった者が取り押さえた。

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