マグカップ

桶星 榮美OKEHOSIーEMI

第1話 二個の愛は永遠だから

青「おはよう、赤いハートのマグカップ

  今日も君は可愛いよ」

赤「おはよう、青いハートのマグカップ

  今日も貴方は素敵よ」


青「君は今日もブラックだね」

赤「貴方はミルクと砂糖たっぷりねっ」


青「この二人の好みは変わらないね」

赤「えぇそうね、仲の良さもねっ」


青「あぁそうだね、同棲して三年

  結婚して一年になるけど」

赤「二人の愛は壊れない」


青「僕の愛も壊れないよ

  初めて君に出会えた時を

  今でも鮮明に覚えている

  あの胸の高鳴りを・・・

  愛しているよ、赤いハートのマグカップ」

赤「私も初めて貴方を見た時に

  一瞬で恋に落ちたの

  胸が燃えるくらい愛しているわ~

  青いハートのマグカップ~ん」


青「おや、珍しく喧嘩だね」

赤「喧嘩するほど仲が良いのよ」


青「そうだね、でも僕たちは」

赤「喧嘩は、し・な・い」


青「その言い方、なんて可愛いんだ」

赤「も~青いハートのマグカップったら

  照れちゃじないの~」


青「あれ、なんだか喧嘩が激しくなってる」

赤「あら、どうしたのかしら?」


青「危ないなぁ、テーブルを叩くなんて」

赤「怖いわぁ手に当たったら落ちちゃう」


青「気を付けて赤いハートのマグカップ」

赤「怖い!落ちたら割れるー」


青「あっ!」

赤「キャー!青いハートのマグカップが

  床に落ちちゃった!

  青いハートのマグカップー!」


青「あ・あ・赤いハートのマグカップ・・・」

赤「良かった、無事なのね」


青「いいやぁ・・・

  取っ手が壊れた・・・」

赤「えぇー!なんて事なの

  私の青いハートのマグカップ・・・」


青「僕は、もうダメだ・・・

  不燃ゴミになってしまった・・・」

赤「そんなぁ・・・」


青「たとえ不燃ゴミになっても

  君を忘れはしない

  愛しているよ・・・

  赤いハートのマグカップ・・・」

赤「いやぁーー!行かないでー!

  青いハートのマグカップー!」


青「あぁ、もうお別れだ・・・

  新聞紙に包まれていく・・・

  君の幸せを祈っているよ・・・」

赤「私は貴方を忘れない

  これからも私の愛は、心は

  貴方だけのものよ」


青「さようなら・・・僕の可愛い

  赤いハートのマグカップ・・・・・」

赤「愛している、青いハートのマグカップ

  ・・・声が聞こえない・・・

  捨てられてしまったのねっ

  これからは私一人・・・」


********


赤「あぁ、朝が来た

  一人ぼっちの寂しい朝

  青いハートのマグカップが居ないなんて

  ・・・悲しい

  ふっうん?あの箱は何かしら・・・

  あらっ、新しいマグカップだわ

  へぇ~色はグレーで

  形は下に向かって細くなってる・・・

  いいじゃない、カッコいいじゃない

  私にピッタリな相手だわっ

  初めまして、グレーさん

  今日から仲間ね、仲良くしましょ」

グ「はぁ?はあっ・・・」


赤「恥ずかしがら無くてもいいのよっ

  これから二個はペアなんだから」

グ「いやぁ~・・・」

煉「お待たせ~。やっと箱から出れたわ

  なに?ダサいマグカップが居る」


赤「ちょっと、それ私に言ってるの⁈」

煉「当たり前でしょ

  他にマグカップは居ないじゃん」


赤「私は赤いハートのマグカップなのよ

  最高に可愛いのよ!

  貴女こそ変な色じゃないの!」

煉「はぁ⁈私は煉瓦れんが色なんです~

  いまどきのお洒落色なんです~」


赤「どこがお洒落よ、薄汚い色だわ」

煉「いやいやいやぁ

  いまどき赤いハート柄なんて無いわぁ

  それにそのスタイルずん胴で

  マジダサいわぁ~、ねぇグレー」

グ「う~ん、そうだねぇ」


赤「失礼ね!私は持ち主の同棲時代から

  大切に使われているのよ!」

煉「どうせ持ち主が旅行先で

  テンション上がって買ったのよ」


赤(ゲッ。なんで分かるの?

  そうよ旅行先の土産物屋で買われたのよ)

煉「言い返さないって事は図星なんだぁ」


赤「貴女は黙ってて!

  これから私はグレーさんと

  仲睦まじく生きていくんだから

  ねぇ~グレーさ~ん」

グ「いや~ぁ・・・」

煉「そんな訳無いでしょ、よく見てよ

  私とグレーは同じ形なの!

  二個はペアなの、あんたは仲間はずれ!」


赤「はぁ!一々ムカつく煉瓦色!

  私は持ち主の思い出が詰まった

  大切なマグカップなんだから!

  って、あれ?なんで新聞紙で包むの?

  エッエッエーーーー‼」


煉「あぁやっと静かになった」

グ「うるさくて古臭いマグカップだったね

  まぁ不燃ゴミになるのは当然ださぁ。

  煉瓦色さん、これから宜しく

  君、落ち着いた色でナイスだね」


煉「貴方もシックで素敵よ」

グ「僕たち、お似合いの二個だね

  これからの生活が楽しみだ」


********


赤「あぁ、私が不燃ゴミだなんて」

青「赤いハートのマグカップ」


赤「あっ青いハートのマグカップ

  まだゴミ箱にいたのね

  寂しかったのよ、会えて嬉しい」

青「へぇそうかい。

  僕の事なんて忘れたと思ったよ」


赤「そんなはず無いでしょ」

青「だって、これからはグレーと

  仲睦まじく生きていくんだろ」


赤「聞こえていたのね・・・

  違うのよ、あれは違うの

  貴方が居なくなった寂しさから

  だから本気じゃ無かったのよ」

青「僕はゴミ箱の中で

  君の幸せを祈っていたのに

  裏切られた、君がそんな

  マグカップだったとは!」


赤「お願い許して

  青いハートのマグカップ」

青「もう君の言葉は信じられない

  愛は終わった・・・」


赤「いやよ!私は愛が欲しいの

  いつも誰かに愛されたいの!」

青「・・・・・・・・・・」


赤「何か言ってよ

  青いハートのマグカップ

  あれっゴミ箱から出された

  新聞紙を剝がされた・・・

  やっぱり持ち主は私が大切なのね

  赤いハートのマグカップで

  毎日コーヒーを飲みたいのよ!

  ごめんね・・・さようなら

  青いハートのマグカップ」


********


赤「ゲッ!・・・・・・

  土を入れられサボテン植えられた

  私はマグカップなんだよ!

  植木鉢じゃねぇんだよ!バカ持ち主!

  おい、グレー野郎に煉瓦野郎

  見て笑ってんじゃねぇよ!

  くそっ、こんな目に合うのは

  青いハートのマグカップが

  壊れたりするからだ

  軟弱野郎の青いハートのマグカップめ

  お前なんて死んじまえ!

  って、もう死んでるわ。アッハッハッハ」


     *****End*****


  

  

  

  

  

  

  






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マグカップ 桶星 榮美OKEHOSIーEMI @emisama224

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