『清楚系?』美少女が告白されてる現場を目撃した俺は、謎の『ボーイッシュ』美少女と放課後デートをすることになった
とりあえず 鳴
出会い
第1話 特等席を告白に使われた時の対応
『春と言えば?』
と、聞かれてなんと答える?
出会いの季節? それとも別れ? はたまた新しい環境での新生活とか?
そういう期待に胸を膨らませる人も確かにいるのだろう。
でも実際は『変わらない普通の季節』と俺、
高校生になり、環境は確かに変わったが、変わったのは環境だけ。
俺の心境は何一つとして変わらなかった。
入学して早一ヶ月。周りではグループが作られている時期だ。
休み時間になる度に集まって特に意味の無い話をして、チャイムが鳴れば自分の席に慌ててと戻る。
それの何が楽しいのか、観察してればわかるのかと一ヶ月観察してみたけど、結局わからなかった。
だから俺は今日も『ぼっち』を続ける。
中学時代も貫いたぼっち生活。
特に誇りたいとかはないけど、結局高校生になっても俺は俺だったのだと少し安心もする。
過度な期待は身を滅ぼすと知っているから。
そうして俺は教室で『とある人』の話をうるさくしている男子たちから逃げるように『いつもの場所』に向かう。
「教室ってなんであんな疲れんだよ……」
俺は別に何もしていない。
だけどただ居るだけで異様に疲れるのはなぜなのだろうか。
教室には謎の魔力があると俺は思う。
「昼休みだけが俺の救いだよ」
普通の休み時間にどこかへ行くくらいなら教室でボーッとしてる方がマシだ。
いつも同じ話が聞こえてきて疲れるけど、わざわざ短い休み時間に廊下を歩く方がめんどくさい。
だから昼休みは疲れる教室から出られるから好きだ。
「ぼっち拗らせすぎか? まぁ母さんを心配させるだけだからいいんだけど」
とても親不孝なのは自覚しているが、母さんの方も「まあ舞翔の魅力に気づいてくれる人がいつか見つかるよ」と、意味のわからないことを楽しそうに言ってるからそこまで気にしてないのだろうけど。
「仕方ない。今日は俺がご飯当番か」
こうしていつも勝手に罪悪感を感じるのもいけない。
母さんが喜ぶからいいけど、俺は決して悪くないのだから。
「そう、世界が悪い。なんて……?」
教室では根暗をやってる俺だけど、一人の時は結構喋る。
そして人の気配を感じれば口は閉じる。
「好きです! 付き合ってください!!」
(うわぁ……)
俺の特等席になっている体育館裏の何もない場所。
あるのはたまに何かの罰で刈り取られているであろう雑草たち。
俺はここで体育館に上がる為の階段に座ってぼっち飯をしている。
その場所でまさかの『ガチ告白』が行われていた。
(少し待たなきゃか……)
せっかく一人になれる場所なのに、先に人が居て気分が落ちる。
ここなら誰も来ないと思っていたのに、これでは次の場所を探さなければいけなくなるかもしれない。
だけど考えてみたら、告白なんて人に見られたくないのだから、
(はよ終われよ)
早く一人の時間を満喫したいから、告白をさっさと終えて帰って欲しい。
普通なら俺の方が気を使って帰るべきなのだろうけど、俺にそんな気遣いができる良心はないし、何よりめんどくさい。
だから早く返事をして帰って欲しいのだけど、告白された女子(告白の声が男だったから)は黙ってしまっている。
(沈黙はお断りって察しろ)
ガチで告白してるのなら
まあ受けるにしろ断るにしろ俺には関係ないからほんとに早くして欲しい。
「あの、
(森谷……あぁ)
どこかで聞いたことがあると思ったら、同じクラスに森谷
毎日嫌でも話を耳にしてしまう女子。
金髪碧眼だけどれっきとした日本人のようで、祖父だか祖母だか、親だったかが外国人だそうだ。
容姿端麗、文武両道、まるでラノベのヒロインみたいな女子。
そんな森谷さんが今現在告白されてるようだ。
(教室のもこれか)
教室を出る時にも森谷さんの話は耳に入ってきた。
おそらくこの告白が成功するかどうかの話でもしてたのだろう。
くだらない。
「え、えっと、私好きな人がいて……」
森谷さんが弱々しく、だけど透き通るような綺麗な声で答える。
「誰? 俺はそいつよりも森谷さんを幸せにするよ?」
(何様だよ)
思わず突っ込んでしまった。
諦めたくないのもわかるけど、今のは明らかに「好きな人がいるからあなたとは付き合えない」と断られている。
そして好きな人が嘘でも、断っているのに変わりない。
「そ、その、私、あなたのこともよく知らないですし」
「そんなのこれから知ってけばいいよ」
(よくねぇだろ)
またも思わず突っ込んでしまった。
諦めたくないのも以下略。
今知らないのにこれから上手くいくなんてわかるわけがない。
自分勝手にも程がある。
(なんかめんどくさくなってきた)
このまま行くと森谷さんが押し負けるか、最悪昼休みが丸々潰れる。
前者は森谷さんの自己責任だからいいとしても、後者は許されない。
俺の『一人空間』を邪魔されるわけにはいかない。
都合がいいことに、俺は空気を読まないことができる男だ。
「は?」
おそらく同級生であろう男子生徒が驚いたような顔をしている。
そうだろう、だって俺がなんの躊躇いもなく二人の横を通っていつもの階段に腰を下ろしたのだから。
「いただきます」
手を合わせてお弁当箱を開く。
「いやいやいや、なんだよお前」
「……」
なぜか男子生徒が俺の方に視線を向けてくる。
俺の背後には何もないので無視して箸を持つ。
「無視してんじゃ──」
「うるさい」
「っ!」
俺の大切な時間をこれ以上邪魔されたくなかったので、少しだけキレてしまった。
ちょっと睨んでしまったけど、なぜか男子生徒は固まっている。
「あぁ……潔く諦めろ。本当に好きなら好かれる努力をしてから再度チャレンジすればいいだろ」
される方は嫌だろうけど、今はどんなことをしても告白が本当の意味で成功するとは思わない。
それなら少しでも森谷さんに好かれる努力をしてから、再度告白する方が合理的だ。
「まぁこれが本当の告白ならだけど」
「……」
男子生徒は黙って一度森谷さんに視線を向け「ごめん」と言って帰って行った。
「なんか告白した側がフってるみたい」
正直どうでもいいので、俺は意識をお弁当に移す。
おそらく教室では俺が邪魔をしたからフラれたみたいな感じで話されるだろうけど、今更クラスの奴からの見方が変わったところでどうでもいい。
今までが『根暗ぼっち』だったのが『人の恋路を邪魔する奴』になるぐらいだ。
無関心からいじめの対象に格上げされたわけだけど、その時はその時なので今は考えても仕方ない。
「めんどくさい、ほんとにめんどくさい……」
教室に戻ったらめんどくさいことになるのはわかってる。
だけどそれよりも……
「じー」
「今の現状の方がめんどくさいんだよなぁ……」
教室に戻る前に、一つのめんどくさい用事を済ませなければいけなくなったのであった。
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