もしかして、ヒトじゃない!?

メダカ人

実家編

第1話 覚醒

 今日も私の一日はあの窓に中の彼に向かってさえずることから始まる。



 別に彼とそのような約束したわけではないが、なんとなくだが朝になると私がさえずり彼がそれを聞いて目を覚ます。という生活が私が子供のころからもう30年ほど続いている。



 昔は、ただ彼の睡眠の邪魔をしようと騒がしくしたのが始まりだった。最初は彼もふざけたように怒ったが、毎日毎日こういったことをする間柄になってから彼がおいしいものをくれたりそのお返しに私も彼に食べ物をあげたり(彼はミミズは食べなかったようだが)、そんないい関係、鳥と人間である私たちだが友人とも言えたかもしれない。



 だがそんな友人ともお別れだろう。私は私の種族にしては長生きしたほうなのだましてや森で暮らしている私たちが寿命で死ねるなんて、そんな幸運はそうあることじゃない・・・




 ボトッ




 今日は、いつもより長く寝てしまった。なぜならいつも聞こえる鳥のさえずりが聞こえなかったからだ。あの鳥はもう30年も俺のために、一緒にいてくれた、せめて埋葬でもしてやらないと・・・



 外で友の亡骸を見つけ。土に埋めてやる。ちょうどいい立派な石を埋めたところに建てる。あいつに名前はあるのかはわからなかったので【友】とだけ掘っておいた。



 もう、この屋敷で暮らし始めて50年ほどだ。50年暮らしていて50歳だ。俺はこの屋敷とこの付近から出たことがない。別に出られない理由があるとか出たくない理由があるとかじゃない。ただまだ出ていないだけだ。まだって、そんなこと言ってる間に死ぬぞとか言う人もいるかもしれないが、そこまで急ぐ必要もないのだ。





~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~




「・・・・知らない天井だ。」



 ゴホン、ゴホン、まあ、今のセリフはちょっと言ってみたかっただけだし、つい言っちゃっただけだし忘れてほしいが、それにしてもここはどこなんだろう?



 ベッドは無駄に大きいし、部屋も広い、天井にはシャンデリアがついていて、壁にもいかにも貴族といったような模様が入っている。



 だが・・・状況から察するに、知らない天井、鏡を見たときに移る自分の顔(俺はこんな赤髪イケメンに見覚えはない)、うすぼんやりとだが前世の記憶らしきものも持っている、つまり異世界に転生してしまった。いわゆる異世界転生という奴だろう。



 前世の記憶といっても本当にぼんやりとだ。この記憶を使ってチートをしたりはできなさそうだし、前世の名前やら人間関係を覚えているわけではない。



 もし先ほどの目が覚めた瞬間を俺が生まれた時と定義するなら俺が今流暢に考えられているのは、転生したことによる恩恵なのかもしれない。転生者じゃなきゃ大きい赤ちゃんみたいになっていたのかもしれない。



 しかし、見た感じ部屋の内装などの様子から、俺の前世の生活様式とかけ離れている。言葉は通じるのか、文字は読めるのかなどが心配だ。



 それにしても、なんだろうか転生ならば今世の俺のご両親とか、かわいくて巨乳の幼なじみとかきれいな姉とか、転生の前にめっちゃきれいな女神様と会うとか、そういうイベントはないのか?



 このままここで考えていると文句ばかりが出てくる気がしたので、とりあえず部屋から出ることにしたどうやらここは二階のようだ。まずは二階から探検しよう。やっぱりこういう歴史ありそうな屋敷を探検しようとかは、男心がくすぐられる。



 二階は俺が寝ていたような寝室が四つに、執務室とでもいうのだろうか書斎の大きいバージョンとでも言おうか、本がたくさんあり、机も置いてあるこれまた男心をくすぐられる部屋だった。



 また、執務室には屋上へつながる隠し階段なるものを見つけた。その先には天井裏がありなにやら高そうな置物やら武器やらが置いてあった。これまた(以下略)。




 一階に降りてきた。一回は応接室とキッチン、トイレ、お風呂、大人数で食事を食べるダイニングスペースといっていいのかそういった部屋があった。



 おそらく屋敷の部屋は全部見たが、人は見当たらなかったつまり俺の家族となる人はいないようだ。外には人がいるのだろうか・・。急に不安になり、玄関へ向かい外へと向かう。



 玄関から外に出ると、窓から見て外が木に覆われていることはわかってはいたが、森の奥は見えず木々の隙間から見える景色は真っ暗である。一歩、森へと近づいてみると木々が風でゆれ、ざわめきどこか不気味に感じそれ以上近付かせるのをためらわせた。



「ま、まあ、一旦室内なかにはいるか・・」



 俺は振り返って屋敷のほうを見る。屋敷は赤い屋根をした西洋風な建物である。周りの暗い森の景色とは打って変わって、明るく安心感を与えてくれる。



 俺は建物に入ると書斎のほうに足を向ける。俺の素性などにかかわるものや、今いる場所についてが何かわかるものがあるかもと、思ったからだ。書斎に入ると向かって左右の壁は一面本に覆われており、正面の窓際には机がこちらに向かれて置かれているといった感じだ。



 それから書斎の本棚の本の背表紙へと端から順に目を通していく。



「うーんと、歴史・・宗教・・地理・・図鑑・・錬金術・・魔法・・、魔法!?やっぱり異世界転生といえば定番の魔法があるのか!」



 よしよしこの魔法の本はあと片っ端から読むとしよう♪っと、それはそうとして俺の素性が分かるものはなさそうだなー。と、書斎の机に腰掛ける。書斎の机には引き出しがついていて、その中に何かあると直感した。そこには古そうな赤い表紙の日記帳のようなものが置いてあった。表紙に文字が書いてあるが、掠れすぎてほとんど読めない。



「・・の・・日・??」



 何かの日記とでも書いてあるのだろうか。

 


★★★★★★★★★★★★

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