第27話 模擬戦と改めて従魔登録

「ニックさん、副ギルド長様が寝技も使わずストレートに奪いに来ました。これどうすれば良いですかね」


「ギルドでの揉め事は模擬戦で解決するのがルールだ。サミュエル、お前はルールに従って副ギルド長が欲しがっている獣魔をベットする、副ギルドは何をベットするんだ?」


「なんでそんな話しになるんだ。まあいい。

素直に、獣魔を手放せば良いだけの話なのに。それなりの代金は用意する気はあったのだがな。模擬戦への私のベットは代金で用意した金貨1枚だ。受けるか」


「受けましょう。ルールは、魔法ありの殺し無し相手が降参するまで、でどうですか」


「私は構わん」


「では、審判は私がしよう」


入口からこちらに向かって言葉を発したのは、2mを超える大身の赤髪茶眼のプロレスラーの様な男性だった。


「「ギルドマスター」」


ニックさんと副ギルド長の声が揃った。


「わしが、代官屋敷にいっちょる間に面白い事になっとるじゃないか。小僧、お前等級幾つだ」


「E級です」


ギルドマスターは俺を見て、


「ニック、お主の言っておった小僧はこいつか」


「はい、面白い事になりますよ」


「よしよし。じゃあ付いて来い。始めるぞ」


そう言って、ギルドマスターの後に、ゾロゾロと酒場にいた仕事に溢れた連中もついて来た。


左側の買い取り受付の脇にある通路を抜けると屋内練習場に出た。床は土だが前世の体育館のような造り、壇上は無い。

ニックさんが、


「どうだ、胴元やりたい奴いるか?」


〈ニック、焼きが回ったかE級と元とはいえB級の対戦で胴元やる奴いる訳ねぇだろ〉


〈がっはっはっ〉〈プッ、うふっ、うふっ〉

〈ひゃはっはっ〉〈ぶほっ、ゲホッ〉

〈クスクスクス〉


「そうか、それなら俺が、E級に全ノリしてやる、受けるか」


〈うおぉっし。B級に銀貨1枚〉

〈〈〈〈〈〈うおぉ〉〉〉〉〉〉

〈俺はB級に銀貨5枚だ〉

〈俺、副ギルド長に銀貨3枚〉


そんな、賭け事の金額が飛び交う中、ギルド


「お~い、お前ら、そんなんじゃあ、ニックが可愛そうじゃろが、俺もE級に全ノリしちゃるわ」


〈〈〈〈〈〈〈うぉ〜〉〉〉〉〉〉〉


「おらおら、木片配るぞ、斜めのキズがB級札だ。無地はE級札な。銀貨1枚からだぞ」


普段からやっている様で手際が良い。


俺は、訓練場にあった、刃引きされたショートソード。副ギルド長は刃引きされたロングソードを選択した。その間も身体強化と魔力循環を怠らない。


「それじゃあ、賭けも終わった様じゃ、始めっとするか、ルールは魔法ありのどちらかが戦闘不能か降参で終了。ベットは従魔対金貨1枚。互いに異論はないな」


「「ありません」」


「よし、では始め!」


合図と同時に副ギルド長は前に出て接近する。

俺はその場に立ち止まり様子を見る。


中段に構えた副ギルド長が間合いに入ると真っ向切りで剣を振り下ろす。

俺は左に躱して左袈裟斬りで攻撃するが横薙ぎで剣を弾かれてしまう。

弾かれた勢いも合わせて後ろに飛び、距離を置くと、隙かさず副ギルド長が距離を詰めて突きを放ってくる。

それを身体を捻り右に避けて前進して至近距離に接近しショートソードを左片手で持ち、副ギルド長の剣と合わせ動かなくして、左脇腹に拳に魔力を込めて右フックを打ち込んだ。

副ギルド長は右に横跳びをして距離を取ろうとしたがそちらに行くと予想していたので、俺も至近距離のまま副ギルド長の動きに合わせて前進した、そして、同じ体勢のまま、同じ脇腹に再度、右フックを打ち込んだ。

そして、副ギルド長は剣を支えに屈み込んだ。

その首元に剣を当てると、


「それまで!E級サミュエルの勝利」


とギルドマスターの声が響いた。


〈〈〈〈〈〈〈〈〈〈うぉ〜〜〉〉〉〉〉〉〉〉〉


場内に歓声とも悲鳴とも解らない大音声が響き渡った。

俺は、ニックさんと一緒に居る皆んなも処に戻り、抱き合った。


「凄かった、動きが目で追えなかった」


「私もあんな風に、剣扱えるかな」


〘あるじ、はやかった〙


〘ご主人、凄かったにゃ。〙


「いや〜、サミュエル、ありがとう。へそくりが出来たわ」


「よお〜し、お前ら酒場に戻れ。一杯は俺の奢りだ」


ギルドマスターがニックさんから分け前を貰うと、そうみんなに声を掛けて移動を始めた。副ギルド長は女性スタッフにポーションを飲まして貰っていた。

酒場に着くとギルドマスターが、


「今回はこんな事になって、申し訳無かった。改めて、従魔登録を許可する。そして俺がお前の後見になろう。一緒に受付に行くぞ」


と言ってクッキーと、ミャアをサニーとナナシーから引き剥がして抱っこし、ギルドマスターと一緒に受付に行くと、ギルドマスターが、

「後見人登録用紙をくれるか」


「はい!……どうぞ」


と、用紙が出されそれに、ギルドマスターがサインをして、俺に渡して来た。


「これにサインして、従魔登録用紙と一緒に渡せ」


そう言って、酒場の方に戻って行った。


「従魔登録用紙はこちらです。2枚ご用意してますので、種族、名前と登録者名を1頭づつお願いします」


「はい」


従魔登録用紙を書いて、後見人登録用紙にサインして受付スタッフに渡した。


「後、登録に1頭銀貨2枚費用が掛かりますので銀貨4枚とギルドカードもお願いします」


肩掛けカバン経由でアイテムボックスからギルドカードと銀貨4枚をカウンターに置いた。


「お預かりします。」


受付スタッフは後の席で作業をして戻って来る。受付スタッフが、


「登録時と同じ様に珠に手をおいて魔力を流して下さい」



登録時と同じ様にカウンターに置いてある珠の後ろの凹みにカードを嵌め込む。

そして、珠に手を置き魔力を流す。


「はい、結構です本日よりサミュエルさんはD級冒険者となります。これはギルドマスターが後見人になった事で、何かしらの技術が認められていますので一つ等級が上がります。カードの裏側に後見人の名前と従魔の情報が記載されています。後は、登録時と同じです。等級とカードのお話は以上です。

そしてこちらは、従魔の証明となる首輪になります。外に出る時は忘れずはめて下さい。

本日はできます昇級おめでとうございます」


「ありがとうございます」


そう言って受付から酒場の方に移動した。

ニックさんは上機嫌にエールを飲み、サニーとナナシーは果実水、クッキーとミャアはサイコロステーキを食べていた。


「また食べているのか。クッキーこれはめるぞ」


〘あい〙


「ミャアもな」


〘はい〙


2頭とも前世で首輪をしていた為、違和感もなく受け入れた。

これで、漸く従魔登録が終わった。












  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る