第1章 転生

第3話 生き返った先は川の中。

俺が転生したのは川の中だった。

覚醒して驚き慌てて水面に向かって泳いで、

やっとの思いで水面に顔を出し、神に悪態あくたいをついた。


「せめて川辺に転生させろよ!クソったれが!これじゃ直ぐに、お前の身許みもとに召されて仕舞うだろうが!今度逢ったら覚えていろよ!」


そう叫びながら川岸に向かって、必死に泳いだ。

岸辺に辿り着くと全身水浸しなので生活魔法を授かった事を思い出し、「クリーン」と唱えると水浸しのままだった。


「全く、使えない」


太陽で洗濯物が乾くイメージで「ドライ」を唱えると全身の水気が飛んだ。 表皮の水気も飛んで、手を見ると皺々しわしわになっていた。


「あっちで魔法訓練してから転生すれば良かった」


そんな独り言をブツブツ言いながら帰り道を探すが見覚えのあるものは見当たらない。

仕方が無いので、川沿いに上流方面を歩く。

この体の元持ち主はサミュエル 10歳

今年に職業を授かる予定。 がもう何の職業かは創造神が言ってしまったので解っている。職業は錬金術師。頑張って覚えよう。


歩きながら、前世の事を思い出してしまう。


「俺の何が悪かったっていうんだ。

杉本とは人生の半分を共にしていたんだぞ、そりゃ、言い合いの喧嘩もしたさ。

でも、嫁を寝取るほどの仕打ちを受ける様な事はしてないはず。

汚物にはそんな思考は無いか。本能のママに肉体をむさぼっていたんだろう」


前世の事を、思い出すと泣けてきたが、生まれ変わったのだから切り替えよう。


「クッキーとミャア来てくるかな。自分勝手に死んだ主人に愛想尽あいそつかしてないかなぁ。

ゴメンな。馬鹿な飼い主たちで」


残してきたペットに本当に申し訳ない気持ちになる。

そういえば汚物2人は生きているのだろうか? 手をつないでいたからそこを狙っていたから手先が命の職業だから、生きていても手が動かせなくなっていれば、俺の復讐としては御の字だ。


そんな前世の事を考え、独り言をブツブツ言いながら歩く。

そろそろ夕暮れに近づいた頃、見覚えのある岸辺に着いた。ここから川に投げ込まれた場所だ。そして、家路に向かって歩き出した。

直ぐに、村のさくが見えて来て、入口に俺を川に投げ入れた張本人の騎士爵家

長男コンラウス18歳、

次男フォリウス16歳、

3男ディルウス13歳

と手下になっている村人ジムとクリアスが、待ち構えていた。長男が、俺に向かって、


「サミュエル。お前死んでなかったのか?

流れの速いところに投げ入れたつもりだったが残念だ。非常に残念だ」


と、言いながらこちらに向かって歩き出し、俺の前に来ると、腹に蹴りを入れて来た。

俺は咄嗟とっさに身体強化を掛けるが、向こうも身体強化でりを入れてきた為、後ろに吹っ飛んだ。


「兄さん、物理攻撃はだめだよ。父さんに叱られるよ」


「コンラウス兄さん、そうだよ。庶子しょしとはいえマルティーニ騎士爵家の名簿に載っているのだから、殺害は不味まずいよ。殺すなら解らない様にしないと」


「おっと、そうだったな。その為に、川に投げ入れたのに生き残りやがって、

怒りで蹴り込んでしまったじゃないか」


そう言って、俺に近づき脇腹を殴りつけた。

俺は身体強化でダメージは無いが痛いフリをしてかがみ込んだ。


「いいか!今度屋敷に面を見せたら今度こそ殺すからな。来るのは訓練場だけだ!分かったか!」


「……。」


俺が良くわからず返事を返さないと。


「解ったかと言っているんだ。返事をしろ」


と言って太腿ふとももに蹴りを入れて来た。

俺が倒れて、「分かりました。」

と返事をすると、俺の頭につばを「ぺっ」と吐き掛けて屋敷の方角に戻って行った。

俺は、クリーンを掛けてつば土埃つちぼこりを落として、家に向かった。

俺が住んでいるのは屋敷の北側にあるあばら家で元は庭師の住居だったが、賃金ちんぎんが払えなくて解雇したまま空家になっていた。

そこに、俺が生まれた時に母さんと俺を住まわしている。

そしてたまに、騎士爵がやって来て母さんと夜の情事に明け暮れる。

その時はこの体の元持ち主は外でたたんで居たようだ。 しかも今、母さんは妊娠中と云う。こんな家庭環境で育てられるのだろうか。


「ただいま。母さん体調どう?」


そう聞いた理由は、もうすぐ産み月だからだ。 いつ生まれても可笑しくない。

そんな訳で、正妻の子供達は正妻の機嫌が毎日悪く子供達にきつく当たるのが面白くないので、俺に八つ当たりしているという寸法だ。

そして父ブラニウスは家庭をかえりみないダメ親父だ。仕事は出来るようだが、何も期待できない。


「お帰りなさい。もうすぐ生まれそうで食事の用意何も出来てないの。ごめんなさい」


「良いよ。どうせ正妻が用意させなかっただろうし、トーマスさんは、来てないの」


トーマスとはここに住んでいた庭師だ。

母さんに惚れていて、何かと食料を思って来てもらっている。

実は、腹の中の子供はどっちの子供かわからない。 俺はどっちでも構わないが、騎士爵様は構うだろうなぁ。

家にはパンとミルクがあったのでそれと胡桃のような木の実はいつも拾い集めてストックしているのでそれを出し、干し肉も保管しているのでそれらを夕食として頂いた。

夕食を食べ終わり、本来は、一つのベットに母さんと一緒に寝るのだが、妊婦と一緒に寝れないので干しわらで寝床になるように形を整えて横になりそのまま眠った。




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