crown taker
九JACK
中二病じゃないんです、本当に
第1話「高校生になっても中二病やってんのかよ!」
私立
黒輝山はマイナーな私立校だけど、ランクはAの難関校。マイナーとはいえ、受ける人は受けるわけで。定員は二百人。しかし志望者は二百五十人くらいになっている上、合格基準点が高いため次々と落とされ、結果残るのは百五十人ほど。二次募集には懲りずにやってくる人のうち二十人くらいが受かって百七十人。
二百五十人が受けて百七十人受かる。つまり八十人は落ちるのだ。酷いときは二次合格なしなんてこともある。
定員割れも辞さないAランク難関校。その一次合格百五十人にしがみついて俺はここに入学した。
そうまでして来る理由? それは──俺の知り合いがあまりこの学校にいないからだ。
それはさておき。
俺は今、ものすごくピンチです。
殺し屋に追われています。
その途中に、この学校では数少ない知り合いにばったり会ってしまったんです。
「おう、
疾走する俺に並走しながら問いかけてきたのは
「……命懸けのな」
厄介なやつに会ってしまった、と溜め息をこらえながらむすっとして応じた。
「ご苦労なこって。はあっ、お前ってば高校生になっても中二病やってんのかよ!」
「中二じゃない!」
これだからこいつは嫌だ。
俺は中二病だと勘違いされている。
小学生の頃からわけあって殺し屋等々から逃げ回るのは日常茶飯事だった。つまり、常に命を狙われているのだが、こいつはそれを中二の設定だと勘違いしているのだ。
「急いでるからそこどいて」
「えー? お前が本当に追われてるかどうか確かめたいからもう少しいろよー?」
冗談じゃない。追いつかれたら殺されるってのに。
……仕方ない。
「佐竹、どけ」
俺は佐竹を見て命じた。すると佐竹はそれまでのウザさ満点の絡みが嘘であったかのようにすんなり避けた。
これは俺の持つ超能力。自分では見えないが、おそらく今の俺の目は普段の黒い色から色素が抜けて白っぽくなっているはずだ。これは能力使用時の副作用みたいなものだ。
俺の能力は目で見たものを操る能力。そのテの人には[
佐竹に時間をとられたせいか、敵の気配を近くに感じる。能力を発動して気配を捉える──超能力を使う過程で使用対象との波長を合わせる同調能力である──捉えた波長は案の定、近くにはっきりある。しかし、目視はできない。
「[
透明人間──これは周囲の空気と同調することに長け、それに合わせて自分の姿をも周囲と同化させる能力。すごく簡単に言うと、[空気]になるのだ。ただ、そこにいないわけではないし、透明人間の方はこっちが見えている。同調して気配は捉えているが、姿形を見ているわけではないので、反撃しようにも不利なのだ。
なんとかして足止めしないと……
「おい、お前」
「へっ、誰っ!?」
いつの間にか少女が並走していた。顔に見覚えがあるから、多分クラスメイトだ。
「こんなところで何をしている?」
「ん、ジョギング」
とはいえ知らない人なのでごまかした。
「ほう、感心だな。今時二キロもジョギングする高校生とは。咲原
「なんで俺の名前知ってんの!?」
「クラスメイトなのだから、当たり前だろう?」
ごめん、ぼくはあなたをしりません。
「なんで走ってんの!?」
「お前を追っているからだ」
「殺し屋!? ストーカー!?」
「だからクラスメイトだと言っておろう。……にしても、殺し屋とは酷い上に随分と物騒な言いがかりをつけるものだ」
少女の一言にはっとするが、あまり余裕がないので、軽く謝るくらいしかできない。
「それについてはごめん! でも事情を説明するわけにもいかないからとりあえず離r」
「お前、crown takerか!」
「……はい?」
食い気味に放たれたその一言に首を捻る。何を言い出すんだろう、この人? クラウンテイカー? [王冠を戴く者]? ……さっぱりだ。ただ、ネーミングから察するに、この人も超能力絡み……?
「さしずめ能力を恐れられて殺し屋にでも追われているのだろう?」
「え……なんでそれを知って」
言い当てられて唖然とする。少女は変わらず並走しながら言い放った。
「安心しろ。私が守る」
「えっ」
少女は唐突に立ち止まった。
殺し屋の気配も立ち止まった。と思いきや、ずっこけた。少女が足かけをしたのだ。それと同時に殺し屋の能力が解ける。見事なこけっぷりに俺は思わず口笛を吹いた。
殺し屋は立ち上がろうとしたが、そのときには既に少女に締め上げられていた。
「勝負ありだ[
「……貴様、何者だ?」
事も無げに成人男性である自分を締め上げる女子高生を睨み付け、殺し屋が問う。問われた少女は私か? と小首を傾げた。栗色のポニーテールが、夕日の中に揺らめいた。
少女は高らかに告げた。
「私は[
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