13話 こうしてわたくしは悪女と呼ばれるようになったの。
『ブロアは僕の愛するロザンナに手を出すつもりなのか?』
ーーまた訳のわからないことを言い出したわ。
『さっきから何を言ってるんですの?話が通じませんわね、わたくしはサイロにまで手を出すなと言ってるのです。殿下がわたくしの悪い噂を流そうと殿下の仕事をわたくしに回そうと、ワインをわざとかけたと言われようと、言い返すつもりはありませんでした。
もちろんわたくしの身に危険が及ぶのは困るのでその時は対処するつもりでおりました。
でも今回の身に覚えのない事件の犯人にさせられるのは黙って見過ごすわけにはいきませんわ。それに婚約破棄は良いとしても、側妃になれと?
そんなの嫌ですわ。わたくし王太子妃にならずに済むと思い、最近とても機嫌良く過ごしていたのです。いつ婚約解消してもらえるのか楽しみに待っておりました。なのに、側妃?
絶対に!嫌ですわ』
『はっ?君は王太子妃になりたいんじゃないのか?だからいつも僕の仕事まで頑張って仕事をしてみんなからの評価をあげようとしているんだろう?』
『何を馬鹿なことを仰るのですか?貴方が真面目に仕事をしないからわたくしに官僚や文官達が仕事を持ってくるのです。おかげでゆっくり眠ることもできないし執務室から外に出る暇もありませんでしたわ』
ーーこの人、わかってて都合の良いように受け取ってるのかしら?それとも馬鹿なの?
『馬鹿?』殿下がその言葉にまた腹を立て始めた。
『殿下………わたくしの有責で喜んで婚約破棄いたしますわ。貴方の流した噂通りのままで否定もしませんわ。ですから、側妃の話は“なし”でお願いいたしますわ』
『側妃になってもらわなければロザンナとの結婚を認めてもらえない!ロザンナのお腹には僕の子供がいるんだ!』
『そんなこと知りませんわ。わたくしがこなしていた執務の量なら、殿下の能力だと毎日数時間の睡眠で残りはずっと執務をこなせばなんとかなりますわ』
『僕に仕事をしろと?愛するロザンナと過ごす時間がなくなったらどうするんだ?ふざけるな!君が側妃になればいいだけのことだろう?サイロを処刑するぞ!』
『嫌ですわ。それなら殿下が無理やりわたくしに仕事を押し付け自分が仕事をしているかのようにしていたこと。わたくしに罪を着せて婚約破棄しようとしたことなど、全て国民に向けてバラします』
『脅すのか?王太子である僕を?君は悪女として名が通っているんだ、誰も信じるわけがない』
『はああーー』わたくしは大きな溜息をついた。
『今この時点で、影は話を聞いています。影は嘘はつきません。わたくしの身の潔白は影が証言してくれますわ。
そして殿下がサボってきたこと、婚約者がいる身でありながら浮気して子供を孕らせたこと、わたくしに罪を着せようとしたこと、全て証言してくれます。それでよろしいのですか?』
『………婚約破棄は君の有責でいいんだな?』
『わたくしは悪女らしいので、それで』
ーーお父様にはどう思われるかしら?屋敷を追い出される?それとも軟禁されるのかしら?
わたくしは殿下の婚約破棄を受け入れた。
それからは殿下とは挨拶以外で話すことはなかった。
なのにわたくしに話しかけてくるなんて……それも何事もなかったかのように話しかけてきた。
噂ではわたくしとの婚約破棄の後、かなり苦労されたと聞いた。
それは官僚や文官の人達も。
わたくしに大量の仕事をさせていたのに、それをこなす人がいなくなれば歪みが出てくるものだもの。
陛下はそのことを知らなかった(わたくしが隠して執務をしていたから)のでかなりお怒りだったそうだ。
殿下や官僚、文官達に監視役をつけて部屋から出さずにずっと仕事ができるようになるまで眠る時間も減らし家にも帰さなかったと聞いている。
3年も経てば殿下も執務をこなせるようになったみたいね、わたくしに話しかける時間の余裕もあるのだもの。
陛下は殿下を廃嫡せずそのまま再教育された。再教育はかなり厳しいものだったと聞く。殿下はこの国の国王となるだけの力をつけたのかしら?
ま、死んでいくわたくしにはもうどうでもいいこと。
さっさとお父様にお会いして、いい思い出なんてない王城を後にしよう。
そう思いながらお父様のところへ向かった。
お父様とも婚約破棄からさらに仲は悪化したのだけど。
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