タマムシの時間

ファーブル昆虫記のタマムシの話。

タマムシは幼虫時代を腐った木の中で暮らす。

3年間腐った木のセルロースを食べて大きくなる。


孤独で暗く音も聞こえない。

ひたすら木を食べる3年間。

幼虫は目も見えず音も聞こえず、有るのはわずかな触覚だけらしい。

「なんという孤独」とファーブルは詠歎した。


最近の研究では外部の条件によっては60年間も木の中で暮らすことも有ると言う。

タマムシにとってその年月は外の世界の60年であっても自分の60年ではない。

蛹になって成虫になるのをちょっと遅らせただけ。

タマムシにとって、たった60年に何の違いがあろう。


時計や暦なんてものに縛られない時間がそこにはある。

羨ましいとは思わないがね。



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