三流のオリジナル

「茶碗の本質は、土で出来た周辺部ではなく中の空間そのものにある」

と、老子の言葉などを書いて箔を付けてみる。


老子なんてワシのような変人じゃないと知らないだろうから、さも自分の言葉のように言えば良かった。

ある著名な外国の建築家の言葉で「建物とは床・壁・天井のことを指すのではなく、床・壁・天井で構成された空間そのものである」というのは先の言葉のパクリらしい。

それがパクリだとしても百年近く前のヨーロッパ(どこの国の誰だったか失念)の建築家が知っていたのに驚く。

しかし、盗作であろうと引用であろうとその言葉自体の価値が下がるものではない。

三流のオリジナルより一流のコピーの方が心を打つ。


「世にオリジナルは無し」と偉大なる山本夏彦翁は喝破した。

本当の「オリジナル」はごく限られた天才・奇才にしかないと言う。

オリジナルな思考が出来ないと気づいたワシは深く頷く。

文化人マスコミはオリジナルでなければ価値が無いように言う。

オリジナルと言うだけで価値が有るような事を言う。

それを真に受けた教師が、オリジナルだけを求めよと言う。

世の中の殆どを占める凡才のオリジナルには価値はない。

他と違うという事自体にはまったく何の価値も無い。


模倣、真似をさげすむべきではない。

それは年数を経ればきっと「伝統」と呼ばれるようになるのだから。

続くということはそれだけの価値があるから続けられるのであろう。


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