第48話 だから殴るなってゆったじゃん!!!!

「な、な、何の用だ……?」


ガチ怯えの顧問。


身長190cm超え、坊主頭の巨漢。彫りが深くて顔が怖い。が、まあ、俺の方がデカいし重い。強いのは俺の方ってこと。


「入部届だよ、先生」


ピラっと、二枚の紙切れ。俺の分と栞マネージャーの分だな。


「は、はぁ?!前に誘った時に断っただろうが?!!」


「オリチャー発動だ。女の好感度稼ぎのために、適当な部活でブイブイ言わせちゃおうぜ!みたいな……」


或いは、プイプイ言うかもしれんが。モルモットの車!


「ふ、ふざけるな!お前が壊した三年生の……」


「おっ、そりゃ丁度いいな!壊れた奴より強い奴が出てきたんだからよ!」


俺は、顧問の先生の肩に手を置く。みしり、と。顧問の肩から骨が軋む音。


「ひ、ひぃいっ!!!」


「受け取ってくれるよなあ?後ついでに、レギュラーにもしてくれちゃうよなあ?!!!」


「わ、分かった!分かったから手を離せ!か、肩が痛いぃっ!!!」




そんな訳で華麗に入部。


とりあえず、ボクシングのルールを習う。


前にここの部長をぶん殴った時も、実はボクシングのルールを知らなかったんだよね。


でも少なくとも、格闘技はどれもこれも、相手が立たなくなるまでボコれば勝ちなんでしょ?それくらいは俺でも分かるぞ。


「……なるほど、つまり、裏拳とか肘とかなしに、パンチだけで相手を死なない程度に殴ればいいんだな!」


「そ、そうだ。こ、殺すのはダメだ!ダメだからなっ?!本当にダメだからなっ!!!」


「大丈夫、俺はちゃんと精神コマンドに『てかげん』があるタイプのユニットだ」


俺も天パだし、実質リアル系パイロットみたいなところはある。肉体性能はスーパー系だが。


でも天パはフェンシングも強いからね。オモシロオールバックロリコンマザコンおじさんを投げ飛ばしたりもするし。フィジカルもなければ、今日日パイロットは務まらん。


「うっし!じゃあ練習するか!顧問、五人くらい貸してくれ。同時に相手する」


「ボクシングってそう言うのじゃねえんだよバカ!!!!」


あっそう。


「でも、五人くらいに囲んでもらえないと、練習にならないと思うんだが……」


「あー……、分かった!じゃあ、俺とミット打ちの練習をしよう!俺を壊さないように、良いか、壊さないように手加減をするんだぞ?!良いか!分かったな?!!!」


「分かった、分かった……」


俺は、グローブを受け取る。


「よ、よし!じゃあ、ミットを出したところに打ち込むんだぞ?」


あーはいはい、分かる分かる。


こんな感じだろ?


「……うわあ」


「気持ち悪っ」


「どうなってんだあれ……?」


騒めく部員共を余所に、俺はとりあえず、顧問がミットを出すところに、パンチを「置いた」。


こんなん別に難しい話じゃない。


相手の目線や、肩の動きに足運び。


そういうのをよく見れば、何処でどう動くかを予想するのなんて簡単だ。ポーションで強化される前から、このくらいはできたぞ?


……というか、相手の動きを読んで殴るとか、護身術の範囲では?これができないと、海外で刃物を持ったヤク中に襲われた時とかどうすんのよ?


そんなことを考えつつも、ミットを出される前に動き、ミットが止まったそのほぼ同タイミングでミットにパンチを入れる。


そうやって、二、三分。


顧問は言った……。


「……もう、やめないか?教えることが本気で無いんだが」


まあ、うん。


そうですね。




そんな訳で、厄介払いに、近所にあるボクシングジムに連行された。


もうマジで、学生レベルでは相手にできる奴がいないから、プロの人が在籍しているジムで揉んでもらえ!とのこと。


確かに、俺も夜にプロの(風俗嬢の)人に揉んで(意味深)もらった経験は多い。


いや……、まあ、瑠衣も含めて全員に手を出しているんだが、やっぱり気持ち良さで言うとプロの方が……。


やはりプロは良いよね!ってことで、ジムに行く。


「こちら、ヘビー級、日本人初のチャンピオンこと、大神義人(おおがみよしと)さんです!大神さん、チャンピオンおめでとうございます!」


「ありがとうございます!皆さんの応援のおかげです!」


んー?


なんか知らんが、テレビ局が来てるな。


「イェーイ!」


なので、映り込んでピースする。


「「「「何だこいつ……?」」」」


いや顰蹙エグ。


「いいだろ別に、目立ちたかったんだよ」


そう言いながら俺は、適当に荷物を置いた。あっ、女子マネ(栞ちゃん)の方で持っててくれるの?うん、ありがとね、よろしく頼むわ。


さて……、と。


「えーっと、道場破りってできる?」


とりあえず、目の前の兄ちゃんに聞いてみた。なんか、チャンピオン?らしい。


「ど、道場破り?……ははは!若いな、君」


ふむ?


「その見た目だ、相当鍛え込んでいるし、学生レベルは超えたと判断されたんだろう?だから、ジムに来て、大きな世界を見てこいって先生に言われた、と」


おお、察しがいいな。


「だがね、君。世界は広い。僕もチャンピオンになるまで、何度も大きな壁にぶつかってきた……。才能だけでやっていける世界じゃないんだよ」


なるほどなー。


「……だが、よし、そうだな。じゃあ、俺とスパー(練習試合)しようか!ヘビー級で世界と戦えるのは俺くらいしかいないしな。君もそうなって欲しいから、指導するよ!」


「マジ?助かるわ」


「おおっ、良いな!撮影OKですか?」


「大神選手の練習風景だぞ!」


「視聴率が稼げるな!」


テレビも撮影したいらしい。


「ええ、どうぞ!……さあ、やろうか!」


チャンピオンである大神選手は、若きプロ候補たる青年(俺)に、指導をする為。


グローブをつけて、リングに上がった……。




「栞〜、帰りに飯食いに行かねえか?ラーメンで良い?この近くに美味い店あるらしくてよお」


「え、ええ……、良いですけど、その……」


「え?なんだって?サイレンうるさくて聞こえねえわ……。おい!救急車の人!もうちょっと音量下げれないんすかね?!!!」


「……あの人、チャンピオンだったらしいんですけど、大丈夫なんでしょうか?」


「あー?まあ、顎が砕けただけだから、死にはしないんじゃないの?知らんけど……」

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