第14話キャンプは楽しい!

 皆さんこんばんは、夏目漱一郎です。

毎日夜9時から公開しています『Hit Parade~奇跡のライブステージ~』ですが、ついに700PVを超えました。現在リアルタイムで読んで下さっている読者様は6名様ですが、始めの方を読んで下さっている読者様も何人かいらっしゃるんですよね。一話を短く分割したかいあってか、今回は離脱率が低くて僕もほっとしている所です。今夜は第34話、残りはあと9話です。もうすぐクライマックス、面白さも倍増する事この上ないので、お時間がある方は是非とも読んでみて下さいませ。

       【Hit Parade~奇跡のライブステージ~】

       https://kakuyomu.jp/works/16817330669181021663

 さて、作品の宣伝はこれだけです。今日は、僕が中学生の頃に行ったキャンプの話をしようと思います。キャンプといっても、種類はいろいろあると思います。学校だったりボーイスカウトなんかの大人数でやるものもあれば、大人になって設備の整った施設にミニバンやSUVなんかで出掛けるちょっとリッチな『グランピング』なんてのもありますが、当時車なんて持っている訳もない中学生の僕と友達はメンバー四人で、地元の山に自転車で登りその山の中腹にある湖のほとりにテントを張って、その中で夜を過ごそうというものでした。中学生の僕らからしてみれば、得にキャンプがしたかった訳ではなくて気心の知れた友達で集まって、夜中まで遊べるというのが最大の目的でした。

 今のようにスマホなんて無い時代です。四人だけで山に登ってしまえば普段はうるさい親なんていない完全に僕ら達だけの世界です。今となっては時効なので白状しますと、キャンプ自体の楽しみより、だれも来ない山の中腹のテントで四人集まって誰にも気兼ねなく酒盛りしたり喫煙したり出来るのが、僕達の楽しみでした。そんなキャンプの準備の為に友達のNの家で荷物をまとめていると、その様子を見ていたNのお父さんが僕達に話しかけてきたのです。

「なんだ、お前達、キャンプやるのか?…いったいどこでやるんだ?」

「○○山の中腹の湖のところだよ。あそこなら自転車で行けるから」

すると、それを聞いたNのお父さんはホントかウソか知りませんが、こんな話を始めたのでした。

「あの湖の下にはダムがあって、昔あのダムを造る工事でんだよな。だから、あの湖にはんだけど、お前達、よくそんなところでキャンプなんてやるな…」         



 「なあ、さっきの話って本当かな?」

自転車を引いて山を登りながら、Nはしきりにその事を気にしていました。

「さあ…そんな話は聞いた事ないけど、昔だったらそういう事故もあったかもしれないな」

本当の事を言うと僕ともう一人の友達Hは、Nのお父さんが嘘をついていた事を知っていました。なぜなら、その話をする時にNのお父さんはしきりに僕とHに向かって目くばせをしていたからです。Nは見かけによらずお化けのようなものを異常に怖がるビビりだったのです。そして、それをよく知っているNのお父さんが彼を怖がらせる為についた嘘でした。そしてもう一つ。僕達四人の他に、もう一人Oという友達が一緒にキャンプをやりたいと言ってきたのですが、Oの家というのは親がものすごく厳しいのです。

「キャンプやりたいはいいけどさ、お前のとこ親がうるさいから泊まったりとか出来ないんじゃないの?」

キャンプに来たせいでOが親に叱られるような事があったら可哀想だと思い、Oに確認を取るとOはから自分も仲間に入れてくれと言うのです。そこまで言われてしまうと僕達も嫌だとは言えない訳で、Oにはくれぐれも親には見つからないように出てくるようにと念を押しました。 


 そして、キャンプ当日。山の中腹の湖の畔に自転車を止め、四人でテントを建てると、もう夕方くらいになっていました。みんなお腹が空いてきたので、火を起こして(もちろんライターで)お湯を沸かし、スーパーで買ったカップラーメンを食べました。なんとも情緒のないキャンプですが、僕達はそれでも満足でした。人里離れた湖の畔のテントの中で、僕達は時間が経つのも忘れてずっとたわいもない談笑をしていたのです。


 「あれ?なんかないか?」

突然、四人の中の一人、Hがそんな事を言い始めました。

「変な音?…そんな音聴こえるかな…」

そう言われて、テントの中で耳を澄ませてみると、確かに小さな音で『カラカラ……カラカラ……』と、なにか規則的な物音が聴こえるのです。

「なんだこれ……でもこの辺民家とか何も無いよな」

いったい何の音だろうと、僕はテントの入り口から顔を出したのです。


 「うわ…外が真っ暗になってるぞ。今って何時なんだいったい…」

そういえば、四人の誰も時計を持っていない事に気が付きました。当時はスマホも携帯電話も無いし、まだ中学生で自分の腕時計なんて持っていませんから、今が何時なのか僕達にはさっぱり見当もつきませんでした。そして、例の『カラカラ……』という音はさっきよりも大きくなっているような気がしました。

「おい、なんの音だかわからないけど…みたいだぞ、あれ」

真っ暗な中で、段々と近付いてくる謎の『カラカラ……』音。僕はその時、Nのお父さんがしていた話を思い出したのです。


 「そういえばこの場所って、ってNのお父さんが言ってたよな」

「バカっ!なんで今そういう事言うんだよっ!」

この四人の中でも、Nはとりわけ怖がりで幽霊関係が苦手な男です。しかもテントの中にはランタンが一つ、外は真っ暗闇となれば、Nの精神状態はかなりギリギリだったに違いありません。心なしかNは真っ蒼な顔をしているように見えました。


 「うわああああああああああああ~~~~~~~~っ!!」

ついにNが限界を迎えました。今まで懸命にその恐怖と闘っていたNですが、そのあまりに非日常的な環境と脳裏に浮かぶ昼間の父親の幽霊話。そして、じわじわと迫りくる謎のカラカラ音……その複合的な恐怖の連鎖が、彼には耐えられなかったのでしょう。Nは靴も履かずにテントを飛び出し、大声を上げながら足元に転がっている小石を拾っては、めくらめっぽうに投げ始めたのです!

「来るならかかってこいってんだよコノヤロウ~~~~っ!!」

「イテッ!」


……イテッ?


「おい、今、って言ったぞ?」

「えっ?……」

「誰だよ、今石投げたの!」

カラカラ……の正体は、親が寝静まってから、自転車を引いて山を登ってきたOの自転車の音でした。昔の自転車のライトはバッテリー式では無く『ダイナモ』という物を使っていて、ある程度のスピードが出ていないと発電が出来なくてライトが点かない構造でした。だからOは真っ暗な中、一人で山を登ってきたのでしょう。そのうえ着いたと思ったらのですから、可哀想な男です。



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