第14話 フォルゼ
外に出ると、そこは見覚えのない街だった。
しかし、遠くに王都と同じ城壁があるので、どこかの区画なのだろう。
このまま歩いていけば元の場所に戻れると思う。
「走りますよ!」
ただ、呑気に当たりを見渡せる余裕なんてないからお嬢様の手を引き走り出そうとした。
が、
「走れない……」
苦痛に顔を歪め、脚を抑えた。
どうやらさっきの蹴りのせいで脚を骨折したのかも。
仕方がないから背負う。
「逃げます。絶対に声を出さないでくださいね」
「分かったわ」
お嬢様は思ったよりも重くなかった。
後ろから怒声が聞こえてこなくなるまで走る。
▽
「そろそろ大丈夫でしょう」
気づけば城壁まで辿り付いていた。
近くには門番の人がいたから、今の居場所を聞いてみると。
「ケッ、魔族に教えるわけがないだろ。帰れ」
と嫌そうな顔をしてあっちいけと言われた。
まあ分かっていた。
ここはお嬢様の出番だろう。
彼女に耳打ちすると、私の意図が分かったのかコクリと頷き、門番に同じ様に聞いた。
今度はにこにことした態度で現在の居場所を教えてくれた。
うん、酷い。
種族だけでこんなに差別するなんて。
ただ今はそんな事を気にする場合ではない。
ちなみにここはリフィー地区という場所らしい。
ご主人様と周ったデーレン地区の真反対の場所だ。
しかし、このまま引き返せばあの男たちに捕まる。
ならばこのまま壁伝いにデーレン地区を目指した方がいいと思う。
それをお嬢様に伝えると、
「確かにそれが良いわね」
そんな事を背中の上に乗っかりながら言った。
再び走り出す。
と、その時ふと思った。
「ねえ、あなたの名前はなんと言うのでしょうか?」
「……フォルゼ」
なるほど、お嬢様の名前はフォルゼというのか。
Fの発音は基本的に貴族の名前に用いられる。
だから、貴族らしい名前だ。
「あなたの名前は?」
「私の名前ですか?アレシアです」
「……良い名前ね」
「それはありがとうございます」
珍しい。
フォルゼが直接褒めるなんて。
嫌な奴だと思っていたけど……ちょっと印象が変わったかもしれない。
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【あとがき】
突然書きたい物が出来てしまったので、新作を上げました。
暗殺者であったとある男が、貴族のお嬢様に転生する物語。
貴族の作法?そんな物よりも血湧き肉躍る殺戮をしたいです!みたいなストーリーです。
闇の暗殺者はお嬢様にTSしたようです
https://kakuyomu.jp/works/16818093076338170501
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