島
砂糖 雪
プロローグ
目覚めたとき、まず初めに感じたものは安堵感だった。仮初であったとしても、あの際限のない地獄から解き放たれたことが、救いと言えるのは確かだったから。けれど、それはあくまで相対的なもので、所詮はその場凌ぎでしかないということはすぐにわかったし、今の私にとって本当に必要な、救いと成り得るものが何なのかを考えたときに、その答えは火を見るよりも明らかなことだった。今では不思議と気持ちが平静を取り戻しているのを感じる。盲目であれば人が幸せになるとは考えないけれど、盲目を望む気持ちまでは変えられない。自身の弱さに自覚的になろうが、無自覚であろうが、私という人間が脆く打ち砕かれやすい性質だということは変わらないのだから。
せめて決別をするには、産まれ育ったこの土地が良いと考えて、私は数年ぶりに帰郷をした。久しぶりの故郷はどこへ行っても、全てが変わらないままだった。それ故に、失われたものの大きさを私は再び自覚することになったのだけれど、悲しみよりも愛おしさが勝っているのは、心が軽くなったからだろうか。こんな書置きをここに残していくことにきっと意味はないのだろうけれど、そんなことに意味を見出すのも無意味なことに思える。
そろそろ陽も傾いてきたので、出かけることにしようと思う。この愛すべき小さな島の中でも最も美しいあの場所で、最後にそこに鳥達がいてくれたら良いなと、それだけを今は願っている。
-イリア・カサヴェテス
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