第19話 Gもしくは・・・・
「どうしましょう。」
「城の正面に降りればいいわ。衛兵が飛んでくるでしょうから、話が早いと思うの。」
「承知いたしました。」
城の正面にある広場に降りると、兵士が3名駆け寄ってきた。
チェーンメイルなので、そこまで動きは遅くない。
「何用だ!」
「ティアランド王国ヒーズル領主の娘リサ・フォン・ジェラルドと申します。ダラス軍事大臣にお会いしたくお邪魔しました。」
「し、失礼した。確認してきますので、少しお待ちを。」
一人は駆け足で城の中に入っていき、2名が残っている。
「侯爵家ご令嬢であるお嬢様を、こんなところに立たせたまま待たせるのですね。」
「で、では、こちらへ。」
兵士に案内されて、城の一階にあった10人ほどで使える会議室に入った。
「こちらでお待ちください。」
兵士は、そういって会議室から出ていき、扉が閉められた。
10分ほど待たされた後で、ドアがノックされ黒髪でやせ型の男が入ってきた。
年齢は40才弱といったところか。
「お待たせいたしました。軍事大臣補佐官のドノア・ファ・ダラスと申します。大臣はお忙しいので、わたくしがお話を伺います。」
「お忙しいところ突然押しかけてしまい、申し訳ございません。」
私が名乗ってから、促されて着席し、要件を切り出した。
もちろん、ミーシャは立ったまま後ろに控えている。
「ダラス軍事大臣とセレスティアのコットン領事との間で交わされた飛行艇の売買契約ですが、領事の所有物でもない飛行艇が勝手に売却されてしまったことが判明いたしました。」
「ですが、それはそちらの国内の問題であって、わが国には関係ないと思いますが。」
「ご指摘の通りでございます。コットン領事については、現在取り調べを行っているところですが、問題となるのはこの契約書に記載されている飛行艇の”権利”を譲渡するという部分で、実は飛行艇の一部は賃貸契約になっております。」
「そ、それは聞いておりませんが……。」
「こちらが、元となる契約書で、他者に譲渡もしくは貸し出された場合や盗難にあった場合、貸主であるリサ・フォン・ジェラルドはこれを回収できることになっております。」
「リサ……まさか、あなたが権利者だと。」
「さようでございます。飛行艇は私が制作したものですから、いかなる場合であっても、この部分が変わることはありません。」
「いや、しかし、我々は飛行艇を買い取ったのであって……。」
「そもそもが、コットン氏による盗難品の売却ですから、我が国としては成立しない売買契約です。契約の取り消しに応じていただけると助かります。」
「応じられないといったら?」
「私の所有部分だけ、強制的に回収させていただきます。」
「所有部分とは?」
「単なる部品ですよ。魔法石とミスリル銀と魔法式。外観的にはほとんど変わりません。」
「ふざけるな!それがなくなったら、意味がないだろ!」
「んー、どうしてもというのであれば、魔法式は消去して魔法石とミスリル銀はお譲りしても結構ですわ。」
「魔法式がなければ、役にたたんだろうが!小娘が言いたい放題ぬかしおって!」
「あらあら、本性が見えてしまいますわよ。」
「ふん、お前を拘束……いや、このまま帰しても問題ないぞ。どっちにしても飛行艇に触らせなければいいだけのことだ。」
「金貨300万枚を返却して、飛行艇を持ち帰るのが一番穏便にすむんですけどね。」
「それには及ばん。まあ、俺の気が変わらんうちに帰るんだな。さすがに小娘とメイド風情に本気になってしまっては笑いものになるからな。」
「そうそう、私は飛行艇に触らなくても、強制的に停止させられるんですよ。」
「なに!」
「我が国が竜人の襲撃を受けたときに、竜人がやったのと同じ方法です。今のところ、私しかできませんけどね。」
「だから何だというんだね。」
「飛空艇を強制着陸させて、所有物を回収することができるということですよ。」
「クククッ、やっぱりガキだな。そんな手の内をあかしたら、帰れなくなると分からないんだからな。」
「あっ、変な考えはやめた方がいいですよ。私、これでも国王と宰相を祖父に持つ重要人物ですから。」
「だから何だと?」
「それでも、メイドと二人でここに来ていることを考えれば、分かると思いますけど。」
「……まさか……。」
「まあ、遺恨を残すのも嫌なので、ティアランド王国からの強制契約解除ということにしますよ。」
私は金貨300万枚を会議室に出した。
木箱に詰めてあるので散らばることはない。
「金貨300万枚は返却いたします。飛行艇はここにないみたいなので、追いかけて回収させていただきます。」
そう告げて私はイスから降りた。
「我が国と全面戦争になるぞ。」
「最悪、それでもいいと了解はとってありますから大丈夫ですよ。その場合、私が全面的に介入しますけどね。」
「介入だと……。」
「はい。今国内で展開している飛行艇は20機くらいですけど、全部合わせれば30機超えますからね。」
「グウッ。」
「こちらに来ている機体と違って、軍用のものと個人所有のものには魔法武器を搭載してありますからね。」
「魔法武器だと……。」
「はい!例えば、1トンの氷塊を連続で投下する機能や、10倍の重力をかけて押しつぶす機能です。まだ、実戦で使ったことはないので、みんな喜びますよ。」
「おい!二人を拘束……グエッ!」
補佐官が言いかけた瞬間に、ミーシャが重力魔法を発動した。
補佐官と衛兵が床に縫い付けられている。
「これで、3倍の重力です。10倍にすれば、城も押しつぶせると思うんですけどね。試してみたいので、全面戦争でもいいですよ。」
「お嬢さま、顔が魔王になっていますよ。」
重力魔法を解除し、強力なプレッシャーの下で補佐官に返金確認証を提示してサインしてもらいました。
プレッシャーはかけましたが、自発的なサインです。
「では、飛行艇は勝手に探して回収していきますのでご承知おきください。」
「……。」
補佐官はそれ以上言葉を発しなかった。
城を出て飛行艇の行方をサーチしようとする私たちを複数の矢と魔法が襲った。
並んで仕掛けてくる後ろで何か叫んでいるのは、先ほどの補佐官だった。
シールドに弾かれる矢と炎と氷。
「お嬢さま、よろしいでしょうか。」
「存分に。」
いきなり、そのエリアにいた30名ほどの兵士が倒れこみ、矢と魔法がおさまる。
倒れ方から、重力のレベルは5だろう。
倒れたはずの兵士から、単発で魔法が飛んでくる。
大した精神力である。
すると、倒れた兵士の外側から攻撃が飛んでくるようになった。
城の窓やバルコニーにも兵士が展開し、攻撃される。
「上は私がやるわ。」
「はい。」
ミーシャの方は一旦魔法を解除して、範囲を広げて制圧してる。
負けじと私もバルコニーに圧力をかけた。
その瞬間、バルコニーがガラガラと音をたてて崩れ落ちた。
「どうして!たかが5Gよ。」
5Gとは重力のレベルです。前に初代が試した時には、7Gくらいで多くの人が失神したらしいです。
「これは欠陥建築ね。耐震がまるでできていないわ。」
その間にも兵士は増え、私たちはとり囲まれてしまった。
「ふふふっ、もう逃げられないぞ。諦めて投降……グフッ」
「解除すると起き上がってくる、まるでGよね。」
「どういたしましょう。」
「決まっているわ、実験よ。」
「実験?」
「そう、とりあえずの6G。どうかしら。」
【あとがき】
多分、後付けだったんでしょうね。バルコニー。
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