幕間 “騎士団長の独白”

 魔につらなる者は全て殺す。

 それが私の流儀だ。


 魔物まもの魔人マジン人魔ジンマ魔帝まてい

 全てを殺しつくすまで、私は死ぬことができない。


 いつからだろう、魔物がこれほど憎くなったのは。

 母親が魔物に喰い殺された時か?

 師が魔帝に刺殺された時か?

 それとも部下が皆殺しにされた時だったか。

 それとも妻と子が――


 理由なんてどうでもいいか。

 魔物は絶対に殺す。それが正義の道だ。


 王都の親衛隊に配属され、すぐに奴らの存在を知った。

 魔物“魔喰まぐらい”。魔物を喰らい、その能力を身に着ける


 許せる存在では無かった。

 魔物の癖に人の皮を被り、人のように暮らしている。


 私が王国騎士団長に任命された際には必ず滅ぼす。そう誓った。

 王国に来て、暫く経った時、私は一匹の魔喰らいに遭った。


 誕生日を迎える娘のために、ぬいぐるみを買いに来た。そうのたまっていた。

 奴は〈粘弾液魔喰らいスライムイーター〉だった。粘弾液魔スライムの力をその身に宿していた。


 その時、私はふと、王から頂戴した錆びた剣を思い出した。


 〈万物を殺す剣クラウ・ソラス〉。

 錆びた剣の状態で斬り殺した魔物の情報を取り込み、その魔物を殺すのに最適な形を学習することができる。竜を殺せば竜殺しの形を、粘弾液魔スライムを殺せば粘弾液魔スライムに特効のある形状を学び、形を変えることができる。


 だがこの剣には明確な弱点があった。それはスライムやメタルコンダクターのように錆びた剣ではどうやっても殺せない高防御力・物理無効の属性を持った魔物だ。


 だけどもし、“魔喰らい”を通してそれらの魔物の情報を取り込めたら……。

 “魔喰らい”は常に魔物の能力を使っているわけじゃない。〈粘弾液魔喰らいスライムイーター〉とは言え、常に液状化しているわけじゃないのだ。生身の時、魔物の力を使っていない時ならば錆びた剣でも殺せる。


 その考えが巡った瞬間、私は秘密裏に奴を拉致し、自宅に監禁した。


 そして拷問の限りを尽くし、魔喰らいの情報を全て吐かせた後、錆びた剣でとどめを刺した。


――〈万物を殺す剣クラウ・ソラス〉は粘弾液魔スライム殺しの形を得た。


 魔喰らいを通せばどんな魔物の情報も取り込める。

 奴らは利用できる。奴らは糧になる。


 もう少し泳がせ、数が増えたところで皆殺しにしてやる。


 年月は積み重なり、私は騎士団長となった。

 そして私は魔喰らいの里の管理を始めた。珍しい種類の軟体・鋼体魔物を奴らの村の周辺に放ち、喰わせる。それを繰り返して適合者を増やしていく。


 頃合いだ。

 騎士団への資金を渋る屑共が居る。奴らを暗殺し、その罪を魔喰らいに文字通り喰わせてやろう。


 そしてこの剣で、情報を喰いつくす。

 魔喰らい、お前らは餌だ。


 私が魔物を滅ぼすための餌だ。


 聞くところによると、奴らは自分達を人間だとのたまっていたらしい。


――愚かなり。


 この剣で例の〈粘弾液魔喰らいスライムイーター〉の情報を吸収した瞬間に結論は出ている。

 お前らは正真正銘、魔物なのだよ。


 皆殺しにしてやろう。

 サーウルス=ロッソの名に懸けて。





 ――――――――――

【あとがき】

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