第四話 “竜の力”

「もうっ、世話の焼ける! ――“剛鉄乱塔立メタウ・トッレ”ッ!」


 足元からせり上がってくる剛鉄の塔。

 セレナは次々と剛鉄の塔、足場を作り出し、アドルは塔を飛び移っていく。


「まったくです。――“旋風付与ヴァトル・コンセダー”ッ!!」


 そして塔の高度がロック鳥の飛行高度にたどり着いたところでアドルの剣に風の加護が付いた。

 アドルはロック鳥に向けて飛び出し、剣を振り上げる。


(退くな、進め。弱いくせにビビってどうするっ!)


『ガアアアアアアアアアアアアアッ!!!!!』


 ロック鳥の顔がぐるんと回り、アドルの方を向いた。


「――あ」


 アドルに気づき、アドルに向けて翼を振るうロック鳥。

 死んだ。そう直感したアドルだったが、後ろからヌメリとした何かに掴まれ、最後の足場の剛鉄塔に引き戻された。


「アドルッ!」


 アドルを引っ張ったのはルースの液状になった伸びた腕、粘弾液魔(スライム)となった緑色の腕だった。


「もっかい!」


 ルースの言葉でアドルは再び飛び出し、攻撃の後で隙を見せた〈ロック鳥〉の瞳に向けて突きを繰り出す。


「くらい、やがれええええええええええぇぇぇぇっ!!!」


 アドルの突きがロック鳥の右眼を貫く。


『グ、キヤアアアアアアアアアアアッ!!!?』


 悲鳴を上げ、態勢を崩すロック鳥。

 アドルは突きを放ったあと自由落下するが落ちる途中でフィルメンの風がクッションを作りアドルを受け止めた。


「さっすが俺の大親友、後は任せな!!!」


 態勢を崩したロック鳥に竜のかぎ爪による16連撃が炸裂する。

 最後に思い切り拳を打ち付け、ヴァンスは巨鳥を叩き落した。


「締めだ! ――セレナ、窯を作れ!!!」

「命令するな!」


 ロック鳥が落下した瞬間、ロック鳥を囲むように剛鉄の壁が作られた。

 剛鉄の窯。それは熱を一時的に閉じ込め、爆発させるための物。

 剛鉄の窯に向け、ヴァンスは口元に火球を作る。


「〈業炎砲火ドラゴーネ・アニマ〉!!!」


 吐き出される炎のブレス。



『ギイイイイイィィィィアアアアアアアアアアアアアッ!!!!!』



 剛鉄で囲まれているためブレスの射線上から逃げられず、ロック鳥は全身に炎を浴びる。

 炎は剛鉄を薪に熱量を増し、ロック鳥を蒸し焼きにした。


「丸焼きだな」


 地面に降りたったヴァンスがアドルの背中を叩く。


「無茶するぜ、お前はよぉ!」

「あー、死ぬかと思った」


 アドルはルースに視線を送り、


「ありがとなルース、助かった」


 ルースはムスッと頬を膨らませ、小さな拳で柔らかいジャブをアドルの頬に当てる。


「もう、気を付けてよね! いつだって助けられるわけじゃないんだからぁ!」

「わ、悪い……」

「確かに、アドルはもう少し自重するべきね。ま、愚直な男は嫌いじゃないけど」

「二人共、アドル君を責めるのはそれぐらいにしてロック鳥の解体をはじめましょう」


 その後、フィルメンの風魔法で〈ロック鳥〉の羽を毟り、ヴァンスのかぎ爪で肉を切り取った後ルースとエレナが調理を始める。アドルは他の村の住民を呼び、余った〈ロック鳥〉の部位を預けた。この預けた部位は後に未覚醒者に食べさせることとなる。


「できたよ、アドル」

「お、おう」


 全員の協力の元ロック鳥の骨付き肉が完成する。

 ゴクリ、と息を呑む一同。妙な緊張感が辺りを包む。


 骨付き肉に魔椒ましょうと呼ばれるピリ辛の調味料をかけて、アドルはかぶりついた。


――結果、アドルの体に変化はなかった。



 ――――――――――

【あとがき】

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