KAC2024

となりわに

KAC20241「男の3分」

『童貞には三分以内にやらなければならないことがあった』


 俺の家系は16歳まで童貞だと男から女に性転換する。

 そんなトンチキ呪いの期限を目前に、俺は焦っていた。


「僕寝てた?……ってなにコレ!?」


 素っ頓狂な声で、親友は俺が着せた女子制服に驚いている。


 彼(彼女)には童貞卒業のため、TS薬で女になってもらった。童貞の俺に女友達はいない。


「一生のお願い! エッッさせて!」


 もう刻限ギリギリなんだよ。


「は!? 説明しろよ! でもなんだろ……身体があつい」


 彼女の紅潮した頬を見れば、仕込んだ媚薬の威力は一目瞭然だ。


「かくかくしかじかで……とにかく! 俺は童貞卒業式に移らせていただくッ──!」


 俺、大人になります。

 いざ──いきりたて!

 

 俺は余った媚薬の瓶に手を伸ばす──が、逃げるように滑り落ち、それは中身を盛大にぶちまけた。


 そこへ──


『ぶもぉおおおお!!』 ドゴォン!


 玄関を見ると、媚薬に誘われた興奮するバッファローの群れが!


「ムードぶち壊しだちくしょうっ」


 咄嗟に瓶と媚薬をこぼしたカーペットを投げつける。


『ぶもぉおおお!!』


 アパートの階下まで飛んだそいつを追って、全てを破壊しながら突き進むバッファローの群れ。


 そしてあっという間に姿を消した……


 崩れた男の夢、俺の最期のエクスカリバー。



「あぁっ……ぁ」


 変化、始まりやがった……

 声帯から出る声が高く、全身は柔らかくなっていく。蹲れば伸びた髪が垂れた。


「……君の話、本当だったんだ?」


 もう彼女を前に、我ここにとイレクションしていたモノは存在を感じない。……膨らんだ胸が擦れピリピリと痛む。


「なぁ……俺はどう見える?」


「かわいい女の子」


 どうやら俺は女になっちまったらしい。


「……遅かった」


「結局君も女の子になっちゃったけど……」


「ま、まて」


「一生のお願い、聞いてあげないとね。ハッピーバースデー親友♪」


 自制心の全てを破壊し突き進んでくる親友を前に、闘牛の静め方を考えている俺がいた……

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