筆が進む

根耒芽我

筆が進む

怒りの感情というものは、

なんと衝動的で、行動的で、

つまりは、何かの起爆剤のような、

威力のあるものなのだろう。




普段は、書きたくてもなかなか筆が進まないのだ。

いろんなことを考える。

いろんな思考が脳内をめぐる。


めぐり過ぎて、その思考をどう言語に伝えていったらいいのかわからなくなって

結局のところ、白紙のままの画面を見つめることになる。


でも、

怒りの感情が胸に渦巻いている時は違う。


感情的な言葉が次々と出てくる。

それを抑えようとする思考も出てくる。

まるで自分の中に人格が何人分も出てくるかのように、

いろんな考えも思考も言葉も一度に流れ出てくる。


それを白紙に書き連ねていくのだ。

どんどんどんどん。書き連ねていく。



ホラーを一通り書き終えたときに自分の気持ちの清々しさと言ったら、ない。



恨みつらみ妬み嫉み。

すべての負の感情を、すべて吐き出していいのだ。

だってホラーなんだから。

なんだってアリでしょう?



そこでは人を殺してもいい。

誰かを恨み呪い殺してもいい。

その結果として自分を殺してもいい。


どんなに悪人に成り下がったっていい。

善人面をした隣人を地獄のような境遇に落とし込んだっていい。


普段優しい旦那を、理不尽な理由で痛めつけたっていい。


だって、ホラーなんだから。




だから、私は今日もホラーを書く。

昨日、私をわざと押しのけて転ばせたくせに

何も言わずに無視をして、まだ一人で寝られない子供にまでぞんざいな態度を取った上で一人で勝手に就寝した旦那を





どうやって殺してやろうか。

どんな苦しみを与えてやろうか。

どんな地獄を見せてやろうか。

精神的に追い詰めて、肉体的に傷つけて、大事なものをすべてこわして、ぼろぼろになりながら、死に救いを求めても死ねずに生き地獄を見る。…そんな状況に陥らせてみるのもいいかもしれない。






楽しみで仕方がない。






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筆が進む 根耒芽我 @megane-suki

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