お花見と甘やかし王子

マクスウェルの仔猫

第1話 花見と場所取りと男女二人。

「げ。高倉……さん」

「あれ、吉野さんも花見の場所取りですか?」

「何でここにいるのっ? ……あ、こんにちは」


 完全に予想外。

 まさかコイツが来るなんて。


「げ、とか取ってつけたような挨拶とか、扱いヒドくないですか? ……どうもこんにちは」

「勤め先がライバルなんだから常識でしょ?」

「いや、グループ会社でしょう……」


 お互い去年入社の同期で同い年。

 同じ職種ならライバルじゃないかっ!


 苦笑いすんな!

 周りのOLや学生女子達が立ち止まって顔赤くしてるだろ!


 イケメンだからって!

 ちょっと、イヤかなり、私より業績がいいからって調子に乗るな!


 あ!


「こうしちゃいられない! 場所取りはスピードが命!」

「引き止めちゃいましたね、すみません」

「ほら、早く!」

「え、俺?! うわあ!」


 全く、もう。

 仕事ができる割にはどんくさいのね。


「ほらほら歩く歩く! いっちに、いっちに!」

「腕、引っ張んないで下さーい」


 腕掴んじゃった。

 ま、いいか。



 よっし、ベストポジションいてた空いてた、セーフ。


 桜並木から少し離れてるから見映みばえ的には少し落ちるけど、女子が多いから複数のお手洗いから近いこの辺りがいい。


 それに、この場所の桜だ。


 下見に来た時に、ひっそりとしっかりと、周りの桜から離れたところで咲いている姿に一目ぼれをした。


 どーだ。

 ドヤ顔したる。


「いいですね、ここ。見事に咲いた桜に、そう遠くない場所で出店もいくつか下準備をしている。うち、女子が多いからお手洗いが近いのも助かるなあ。さすが吉野さん……」

「そんなことはいいから、早く自分達のシート敷きなさいよ!」

「は、はーい!」


 全く、もう。

 面と向かって褒められたら、恥ずかしいじゃないか。 

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