第19話 『ふ』
『ふ』
『文をやるにも書く手は持たぬ』
「女郎衆は文をやるにも書く手は持たぬ、使えぬ指ならマブに届ける」が全文。
江戸時代、遊女は遊郭からは出られないかごの鳥であった。
マブとは真剣に惚れた相手。
使えぬ指とは小指………何故に使えないのが小指なのか、あまり使わない指とすれば合点がいく。
文は手紙。
遊女に字の書ける者は殆どいなかった。
マジ惚れした相手にラブラブ手紙を書こうにも字を知らないし絵文字も知らない。
こんなに胸キュンしているのに伝えられないのは、超辛い。
どうせ手紙の書けない指ならば【切って】あの人に届ける。
書けねえんじゃねえよ、字を知らないだけだろ。勉強しろよ、覚えろよ。間違ってるだろ方向が。
そんな意味から、実際に遊郭では相手に指を切って贈ったとの記録が残っている。
無茶するよね。
今では「オトシマエ」でしか指をつめるなどといった習慣は残っていない。
もらった相手の男性はどんな気分だったんだ。喜んだのか? 一歩間違えは嫌がらせである。
首を切ったり腹を切ったりが当たり前の時代。指の一本くらい、だったのか。
バレンタインの本命チョコは「つめた子指型チョコ」が宜しいのではないでしょうか。
きっと喜んでいただけると思うでありんす。
『武士は食わねど高楊枝』
武士と言えば江戸と思うが、考えてみれば江戸時代だ。武士は日本中至る所に居た。
当時下級武士の生活は非常に厳しかった。
武士の魂とまで言われる刀を売り払ってしまう武士、女房や娘を廓に売ってしまう武士もいた。
完全にドメスティクバイオレンスだよ。
そんな思いまでしていても、表面だけはしっかりと武士をする。見栄っ張りの極致である。
はっきり言ってしまえば「御馬鹿」
カード破産するほどの借金をして、ブランド物で身を固めるのと同じである。
どこかの国は、国民に莫大な借金をしているのに、やれ道路だ公共施設だと湯水のように金を使っている。
とある国では、自分が蒔いた種で世界中を経済危機に陥れたのに、反省の色も無く。生活態度の悪い兵隊に給料を払い、莫大な予算を軍備費に費やしている。
この様な所にも「武士は食わねど高楊枝」の精神が受け継がれている。
日本の偉大な精神文化の一つと言えよう。
問題は本来自分を指して「食わねど」だが、現代においては解釈に若干の違いが出てきている。
武士はしっかりと食っている。
食えていないのは平民である。
「平民に、食わせず武士は、高い飯」「平民に、食わす飯なら、どぶに捨て」 by御粗末・唐松・十四松。
今日も平民は御粗末な飯で肥え太っておりやす。
食えているだけまだましな方なんでございやしょうねー。
『こ』
『子は三界の首枷』
子供に一生を束縛される事。
似たものに「子はかすがい」がある。ちと意味合いが違うかな。
天下人もまた人の親。世襲制度は封建社会の基本ルールだった。
【一代で築き、二代が守る、三代は食いつぶす】とよく言われている。
財産を継承する子供に、親と同等の人徳・経営能力が存在しないからである。
江戸期に行われた世襲は、養子縁組で優秀な子供を他家からスカウトする事で成り立っていた。
たとえ実子であっても、御馬鹿はポイされていた。凄いですねー。
お家存続の為とはいえ我が子をポイする親の気持、辛かっただろうが、現代では率先して我が子を捨てる親もいる。時代は確実に変わっている。
秀吉君の場合は折角とった養子、秀次を自殺に追い込んで秀頼を世継ぎにした。やっちまったねー。
彼の世が終わった原因がここにある!
『親は無くとも子は育つ』付かず離れず干渉し過ぎない程度に距離を置いて、人生の良きアドバイザーとしての親でいてもらいたい。
『こころざしは松の葉』
元々「志は木の葉に包む」などと言われていた。
葉の種類はとなると笹の葉・松の葉・椎の葉等々。要は何でもいい。
しかし、松の葉に何をどうやって包むのか?
木の葉に包めてしまう程に小さな贈り物でも、心がこもっていれば立派な贈りものになる。
確かにー、木の葉に包んであっても、億単位の小切手ならばねー。
贈っても貰ってもいけないのが賄賂という奴。
献金とか寄付とか、なんだらかんだらと名目が変わってしまえば問題なし。これが現代日本の法律である。
今の日本では、まったく通用しない言葉となってしまっている様な気がする。
『これにこりよ道才坊』
「撮棒に打たれて懲りよ」とあるのが基本形。
撮棒が才坊に置き換えられ「ドウ」いう語気の強まる時に冠する語が道に置き換えられ「道才坊」なる人物の名になっている。
日本語で良く現れる語呂合わせの一つである。
撮棒と言うのは木または鉄で作った棒の事。
本来戦いで敵を叩き殺す為に使う武器。
これでたたかれて懲りよと言っている。
あくまでも叩かれても生きている事を前提とした御言葉だ。
このカルタは博打では一番点の良い札らしく、後に作られる博打専用のいろはかるたは「道才かるた」と言う。
一説では、これに懲りよとお互いに戒めあって博打をしていたという説もある。
だったら最初からやるなよ。
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