第8話 『か』
『か』
『蛙のつらに水』
御公家さんの多い京都だけあって御上品な言葉使いですが、一般的には「かえるの面に小便」である。
あんまり効き目が無い、効果が無いダイエットサプリメントのような意味としてとらえてよろしいかと思われる。
両生類の蛙は水を掛けられても平気である。では小便ではどうか。
生憎と実験データーが皆無でコメントはひかえさせていただきまして、ご想像にお任せいたします。
余談だけど、アマガエルのヌルヌル素肌の粘液は毒だから、素手で触ったらよく洗いましょう。
何を言われてもまったく動じない、極めてしぶとい人生をエンジョイしている方を指してこう言う事もシバシバある。
言葉の暴力になんか負けるな。カエルを見習いたまえ。いじめられっこ君。
「シカト」という言葉をご存知か。
極道・博徒の隠語で、花札の鹿は十点。
その鹿君は何をどうしようがまったく動じる事無く、こちらを向いてはくれない。
ソッポを向いて人の話なんか聞こうとしない。聞いていない。
このような状態を「鹿」+「十点はトオ」イコール「シカト」と言う。
昔の人は言いました「人の噂も七十五日」「シカト」きめていればそのうちに敵もアキラメルって。
最近のイジメッコ、インケンだからなー。
とにかく強く生き抜こう。
『かったいのかさ怨み』
「かったい」も「かさ」も死語だね。これから説明しなければならないのが、このコトワザのやっかいな所かな。「かったい」についてはここでは書かないほうがいいかな。
「かさ」は梅毒の事。と言う訳で、勝手に調べてくれ。
当時はどちらも死の宣告を受けたも同然。不治の病だった。
かったいに掛かった人がかさに掛かった人を「恨む」のではなくて、うらやましがるとした方が判り易いかね。「隣の芝は綺麗に見える」と似通っているが、こちらは命掛かってますから、かなり深刻。
正月の「お子チャ魔」向けのカルタの文句とは思えないシュールな響きである。
下を見たら底が無い。上を見たら観測不能。世の中、適当な所でいい加減いい塩梅に生きて行くのが無難な幸せって物なんでしょうかね。
『陰うらの豆もはじけ時』
日陰に育った豆でもその内ハジケル時が来るから、焦らず一生懸命やっていれば何時かは実りが有るものだと言う意味だったら、どうって事ないんだけれど。
本当にこれって、おこちゃま用だったの? 極めつけだな。
かなり際どい内容でして。
江戸時代、豆は女性の隠語。深く追求するな。男性は芋。これ何となく分かるよね。
「陰うらのそら豆もはじける時ははじける」が素になっている。
当時の大人にはすぐに分かる内容。
子供に意味を聞かれたら、無言でゲンコツの一つも浴びせていたんだろうな。きっと。
当時の庶民は裏通りに住んでいるのが一般的で、裏町長屋で育った一般ピーポー・スーパーボンビーお嬢さんを「陰裏の豆」と言った。
略して「陰豆」としないように、くれぐれもお願いいたします。
そんなお嬢さん達でも年頃になれば、まあ、それなりに綺麗になるものである。そんな意味なんですよ。これって。
くれぐれも勘違いの無いよう。
『よ』
『よしのずいから天井のぞく』
「よし」とは素は「アシ」なんですが、悪しに通じるというので縁起をかついで「よし」にした。
「人間は考える葦である」だから駄目だったんだなきっと。「人間は考えるヨシである」としとけばよかったのに。
川原に群生する芦を刈って売り歩くのは、元手無し体力勝負の健康だけが売り物。
江戸話の中で転落した人生を送っている人の商売、代表格である。
「働けどはたらけどなお、わがくらし楽にならざり」といった状況を表現しているのであるが、やはりこれも子共には理解し難い。
何となく人生ゲーム的要素タップリてのが、江戸のカルタ。
同じ様に元手要らずの商売に「しじみ売り」なんてのが有ったが、今では漁業権を買わないとシジミ取りも密漁である。
現代で言えば「空き缶拾い」なんかが代表的な元手要らずだが、近年のアルミ値上がりで道に空き缶が転がって無い。
それだけ日本の景気が悪いという事で、喜ぶべき現象なのか悲しむべきか複雑である。
『よこ槌で庭掃く』
急な来客などで、あわててトンでもない事をしでかしている様を言う。
よこ槌は丸太に柄を付けた槌と言っても分かんないね。
藁をたたいて柔らかくして、呪いの藁人形などを作りやすくする為の道具である。
木槌と擂り粉木棒を合わせたような物。
これで藁を叩いて藁人形を作るより、直接こいつで嫌な相手を打っ飛ばした方が早いので、武器としても使われていた。
近所が火事の時に固定電話の電話線をブッちぎって、必死の形相で消防署に電話している奴がいた。パニックになると人は何をするか分からない。
私に限ってなんて事は言い切れない。
あまりにも落ち着き過ぎて、津波前の引き潮で出来た遠浅海岸で魚取りしているのも困りものだが。非常時で有るからこそ冷静な判断が必要である。
災害に驚いても、慌てないように心掛けたいものだ。
とにもかくにも、起ってしまった災難は仕方ない。
キチンと支払ってくれる保険会社に入っていればと、早めにあきらめて身の安全が第一で避難行動するに限る。
国も含めて、キチンと支払ってくれる保険会社が有ればの話だが。
『夜目遠目傘の内』
現代ならば完全に「セクハラ」である。
夜の薄暗い時、遠くでハッキリ見えない時、傘に隠れて良く見えない時は誰でも綺麗に見えるって。失礼にも程って物が有るでしょうに。
「馬子にも衣装」と若干似通った部分があるが、これは職業差別が絡んでいることわざ。
夜目の利く猫科などの夜行性生物には通用しない。
遠目の利くマサイ族にも通用しない。
透視能力のあるスーパーマンには絶対通用しない。
現代社会においては、まったく通用しないコトワザである。
完全に死語といっていい。
間違っても使わないように。
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